第259話 ベラドンナ・ステッツェン その3

「それじゃあ用件を聞かせて貰おうかベス」


「勿論だよ、その為にわざわざ来たんだからね。あんた娼婦を雇ってるだろ?」


「正確には『元娼婦』だけどな」


「そんな細かいこたぁいいんだよ、あんたの商会が『元』だろうと娼婦の女を雇ってる事が問題なんだから」


「元娼婦を雇う事の何処に問題があるんだ?」


「早い話が娼婦をやってりゃ池田屋商会に雇って貰えると勘違いしてる女が増えて困ってるんだよ」


「わざわざ娼婦を選んで雇った事は無いんだけどな、それよりどうしてベスが困るんだよ」


「ん?、、、いまいち話が噛み合って無い気がするね」



むむっ?


話が噛み合って無いとはいったいどういう



「お話中失礼します。ベラドンナ様、シンさん、よろしいでしょうか?」


「どうしたアル」


「お二人には少し説明が必要だと思いましたので、まずはシンさんから


そもそもベラドンナ・ステッツェン様という人物は、、、」



アルの説明してくれた、ベラドンナ・ステッツェンという人物について簡単に纏めると


1.かつては王都治癒士ギルドのギルドマスターだった。


2.とある事件の責任をとってギルドマスターを辞任 。


3.現在はベスと名乗り、キャラバンシティで娼館を経営している。


4.王都治癒士ギルドはベスの辞任後、神殿に吸収合併される。



なるほど、ベスも何かしら訳アリだとは思ってたけど色々あったんだな。


色んな所に影響力のある立場だったみたいだけど、まったく興味無いわぁ~


むしろ俺が気になるのは、よんー!!


4の所であかん方のテンプレの匂いをプンプンさせてる神殿が絡んで来とるがな(汗)


あかん方のテンプレなんて、ノーサンキューや!


少なくとも王国十二家の半分、六家以上を味方にするまでは俺は王都にも神殿にも近寄らん!


そもそも王都に行く予定は無いけどな(笑)



ベラドンナ・ステッツェンことベスは、治癒士として魔法に頼らない薬の研究をしていたのだけど


アルの考えではその事が原因で神殿が何かしらの圧力をかけて、治癒士ギルドから追い出したんじゃないか、という事らしい


それがどうしてキャラバンシティで娼館経営をしてるのか、どうして街の人達からの評判がすこぶる悪いのか、全く理由は分からんが


俺は他人に興味が無いから詮索する気も無い


そもそも、訳アリで謎が多い人物なんて異世界小説でありがちな話過ぎて驚きなんて皆無だし、神殿が絡む事に自分から首を突っ込むなんて馬鹿な事はしない



だがしかし


流行り病(熱中症)の予防薬(スポーツドリンク)作っちゃったからなぁ


既に目を付けられてそうだけど、キャラバンシティに居る限り、直接手を出して来たらフェンリルのリリーが護ってくれるだろうし、創造神様も助けてくれる、、、と思う。


間接的な事にはアストレア様や中立派の貴族、ドワーフにエルフと頼れる相手は沢山居る


いざという時に裏切られないように、今のうちに貸しを沢山作っておかなくっちゃな♪



「という訳で、シンさんはベラドンナ様の事をご存知ありません。」


「まったく、街1番の大商会の会長が何処の誰かも分からないで、スラム街に居た私に依頼をして来てたって事かい?呆れて言葉が出ないよ


あんたは自分の立場をてんで分かっちゃいないね!


そもそもあんたは、ペチャラクチャラ、ペチャラクチャラ、、、、、」



むむむ?


言葉が出ないって言ったわりには、めちゃめちゃしゃべりますやん


面倒だからほぼ聞き流しているけど(笑)



「ちゃんと聞いてるのかい(怒)」


「はっ、はい、すんません!まったく聞いてませんでした!」


「はぁ~、その潔さに良さに免じて今日のところは許してやるよ。今日はこんな事を言いに来たんじゃないからね」


「そうそう!池田屋商会に雇って貰えると勘違いしてる娼婦の女性が増えて困ってるんだよな」


「ああそうさ、だから真面目に娼婦をするようになんとかしておくれ」


「無茶言うなぁ、、、いっその事娼館経営を止めたらどうかな?今居る人達くらいならベスも含めて仕事の斡旋はするけど」


「ありがたい話だけど、娼館の無い街がどうなるか、ちゃんと考えての発言なんだろうね?」


「・・・荒れるか。欲求を溜め込んだ変態が増えるとそっちの犯罪が増えるのは必至だろうな


単純に娼婦の待遇を改善すれば良いんだろうけど、、、娼館って酒や食べ物は提供してないのか?」


「してないね。」



うーむ


待遇の改善には他に稼ぐ手段があれば良いんだけど何かないか、、、


閃いた♪



「ベス!良い案が浮かんだよ、娼館とは別に酒場をやろう!」



俺が提案したのは所謂キャバクラだ。


酒とつまみは池田屋商会が提供すれば良いし、普通のビールとワインですらドワーフ以外には売っておらず、街の人達からは幻の酒とか言われてるんだ。


会員制にでもして特別感を出して、スキルの「店」で売ってる安酒を高値で売りゃあ良い♪


綺麗なお姉さんと楽しくお喋りしながらお酒を飲める店、どうだ!



「くっくっくっ、良いじゃないか♪馬鹿な金持ちからたっぷり稼げそうなのが気に入ったよ(笑)


でもそれだけじゃあねぇ、仕事のモチベーションを上げる為にもうひと押し欲しいね」


「また無茶な注文を、、、


それじゃあ娼婦の皆さんには、お菓子を毎日1個無料で食べられるようにして、ついでにウチの商品を割り引き価格で販売しようじゃないか、これでどうよ!」


「相変わらず気前が良いね、でもそんなんであんたは儲かるのかい?」


「そこは儲かるように馬鹿な金持ちを沢山常連客にするしかない!儲けが出ないならこの件からは即手を引くから頑張ってくれよ♪」


「あははははは、こりゃあお互いの為にも頑張るしか無さそうだ。あんたとは良い関係でいられるように頑張るよ♪」


「期待してるよ」


『ガシッ!』



俺はベスと固い握手をして考える


どうやらまた1人愉快な仲間が増えたらしいと。






つづく。

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