第229話 恋ぞつもりて悩みとなりぬる

「うぉーーーー!!


終わった、終わりましたよシンさん!


さあ、一緒にアストレア様の元に参りましょう♪」



商業ギルドでミリーさんの仕事を代わりにしていたアルが、異常なまでの気合いとスピードで仕事を終わらせてくれたのは、とてもありがたく素直に感謝しているのだが



「待て待てー!なんでアルも一緒にアストレア様の所に行く事になっとんねん!」



貴族が関わる問題はアルと一緒の方が俺も助かるけど、アルに苦手意識を持っているメリルとニィナの機嫌が少し悪くなって、そのしわ寄せが全部俺に来るんだよ(泣)



「今更何を言っているのですか、流行り病の原因と対処法という、国の威信をかけて研究しても未だに解決されていない問題なのですよ。

アストレア様とじっくり話し合う必要があるに決まっているではないですか」



マジかー!


うすうす気付いてはいたけど、流行り病(熱中症)は思ってた以上に重要案件だった(汗)


しかし、この国には鑑定スキルを持った奴は、、、居ても結局原因と対処法は分からんか


俺の鑑定でも病名しか出なかったし、対処法も元世界の知識があったお陰だもんなぁ


こういうのは取り引きの手札として下手に持ってるより、無償公開してさっさと王国中に広めて価値を下げないと、利権争いで血が流れてもおかしくない


細かい事はアストレア様とアルに丸投げだけどな!



「それじゃあ、みんなでアストレア様の所に行きますか」



ザーーーーーーーーーーー!!



「・・・雨の勢いが凄いな」


「はい、雨季ですので」



雨季だから仕方ないとはいえ、雨の中行くの面倒だなぁ



「もう!おでん屋さんの時は雨でもはりきって出掛けてたんだから、雨なんて関係ないでしょ?早く行くよ!」


「わっ?!メリルさん待って!雨具出すからちょっとだけ待ってー(汗)」


「どうせ、雨だから行くの面倒とか思ってたんでしょ?おにいちゃんはほっとくとすぐに面倒くさがるんだから(怒)」



アハハハ、仰る通りで返す言葉も御座いません(汗)


それにしても危なかった


もう少しでメリルに背中を押されて、雨の中ビショビショに濡れながら行く所だったよ


メリルも含めてこの街の人達って街の中を移動するだけなら基本的に雨具を使わないんだよな


フランス人じゃないんだから


フランス人皆が傘とか雨具を使わないかは知らないけれど、元世界で俺が知り合ったフランス人は豪雨の時以外は傘を使わなくて


「日本人は濡れるの嫌いなんだね~♪」


って言われた事がある


まあこの街の人達は単純に雨具を買う金があるならパンを買うし、濡れても乾かせばいいだけだし、雨の日は基本外に出ないからな


そんな事より今は自分の為の雨具だよ、カッパでも良いんだけど今日は気分を変えて和傘で行こう♪


ただでさえ雨で憂鬱なんだから、せめて素敵柄の和傘を見ながら少しでもテンションを上げたい


バサッ、と


ギュッ!


ムニッ♪



「あのぅ、メリルさんにニィナさん、あまり近くに来られると歩き難いのですが」


「近くに行かないと濡れちゃうから」


「お嬢様の言う通りです。」



普通の傘より大きいとはいえ、そりゃあ1本の傘に3人入ればギュッと寄らないと濡れるよ


俺としては普通に1人1本のつもりだったんだけど、、、まあ両手に華で全力で嬉しいけども


今は快適な移動を優先したい



「シンさん、イチャイチャするのも良いですけど、早く行かないと日が暮れてしまいますよ♪」



ぐはぁ!!


なんてこった、あのアルにイジられてしまった


しかも、まったく言い返す余地が無い(悲)


でも、今は雨季だしそういう日もあるだろう


ニィナは俺の護衛としていつも一緒にいるから慣れてるけど、メリルとこうやって歩くのは初めてかな?


ニィナは分かり易く嬉しそうだけど、メリルの表情はちょっと分かり難い、でも機嫌は良さそうだ♪



俺はこの先もずっとメリルとニィナ、2人の笑顔を見ていたい


しかし、恋愛レベルが中2の俺ではいったいどうすれば、、、






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る