第228話 面倒改めキモい男とおっさんとメリルとニィナ

「流行り病の原因と対処法が、まさかこんなにも単純な事だったとは・・・


ふっふっふっ、、ふわぁっはっはっはっはっ♪


うぉーーーーーーーーー!!」


「・・・」「・・・」




約束通り、流行り病(熱中症)の原因と対処法をアルに教えたら、商業ギルドの仕事を猛烈な勢いでこなしてくれてるのは良いのだが


笑いながらなのがとてもキモいです。


それを見てるメリルとニィナは遠い目をしているし、、、


まあアルが予想以上にはりきって仕事をしてくれているお陰で、俺達が手伝う必要が無くなったのはありがたい


アルの仕事が終わるまではミリーさんの私室の片付けでもしておこう。残ってる着替えや私物も持って帰らないといけないしな


職員さんの話ではミリーさんはこの部屋で生活してるって事だから、少しでも快適に暮らせるようにしておかないと


これからの事を考えると、冬にはインフルエンザ等のマジの流行り病がありそうだから怖い、貧困層とかあきらかに免疫力低そうだし、そういうのも含めてアストレア様と話し合う必要がある。


だから商業ギルドの職員さんにアストレア様と連絡が取れないか聞いたら、運良く数日前からキャラバンシティに来られているって言うじゃない♪


旧領主邸に泊まってるという事なので仕事が終わり次第訪ねてみよう。



しかし、アストレア様のフットワークの軽さは半端ないな、日頃からピスケス領とキャラバンシティを行き来してるけど、普通は馬車で2~3日かかるんだよ


馬車の1日の移動距離は15~20キロ程度、優秀な馬を使ったり途中で馬を交代させたりすれば移動距離は伸びるだろうけど、それでも時間はかかるし


アストレア様の立場を考えれば領地から出るだけでもかなりの危険が伴う。



キャラバンシティ周辺は比較的治安が良くて、最近は盗賊の目撃情報はほぼ無いとはいえ、金目当てで貴族の馬車を襲う馬鹿共は幾らでも湧いて来る


アストレア様の護衛がどんな人達なのかは知らんけど、盗賊程度に遅れをとるような三下じゃないだろう


とはいえ、徒歩より少し速いだけの馬車じゃ、襲って下さいと言ってるようなものだし


今、万が一にもアストレア様に何かあれば1番困るのはおそらく俺だ。


他派閥の貴族からの防波堤にもなっているアストレア様がもし居なくなれば、どうなるかなんてのは考えただけでも恐ろしい(汗)


だから万が一の時には、創造神様に頼んで全てを吹き飛ばして貰って、文字通り綺麗サッパリ解決しようという考えに至ったとしても仕方ないだろう。



とりあえずアストレア様には、電動アシスト付き自転車にリヤカーをくっ付けた、トゥクトゥク風自転車をプレゼントしよう♪


おまけで44マグナム弾も防ぐらしい透明の盾を設置しとけば防御面も心配ない


トゥクトゥク風自転車なら時速20キロ程度は簡単に出るから、ピスケス領なら運転手の体力次第で休憩無しのノンストップで行けるかもしれない


停車しない事と移動時間の短縮が襲われるリスクを1番下げられるからな



電動アシスト付き自転車をプレゼントすると色々と知られるリスクはあるけど、アストレア様を失う事に比べれば躊躇している場合ではない


それに、表向きは魔道具だと言い張れば、アストレア様なら空気を読んで追求はして来ないと思う


後々に真相を話す必要はあるかもだが



「ねぇおにいちゃん」


「どうしたのメリル」


「後でアストレア様に会いに行くなら私も一緒に行っちゃ駄目?」



商業ギルドのミリーさんの私室を掃除しつつ、除湿&消臭剤を設置しているとメリルから少し困ったお願いをされてしまった。


今年から池田屋商会の副会長になったメリルは色々と学ぶ為に、俺が仕事で誰かと会う時は出来るだけ付いて来るようになった


それ自体は問題無いし副会長としては必要な事だろう


問題なのはこちらからアストレア様に会いに行く事だ


忘れがちだけど、アストレア様は王国十二家のピスケス伯爵夫人、普通は会おうと思って会える人ではない


平民からすれば雲の上の存在だ、そのアストレア様にこちらから会いたいと言って会える立場に居るというのは凄い事なんだ


メリルは今までもアストレア様に会った事はあるけど、それはいずれも表向きの理由としては、アストレア様とは偶然居合わせただけ、という事になっている


こちらからアストレア様に会いたいと言って会う事が叶う立場だと周囲に知られるのはよろしくない


俺とアストレア様の仲が良いのは中立派の貴族を中心に知られているけれど


それは俺や池田屋商会にちょっかいを出せばアストレア様が黙って居ないぞ!というアピールの為に積極的に広めているからだ


だからこそ悪意を持ってちょっかいを出してくる馬鹿はいないんだけど


逆にアストレア様と繋がりを持ちたい貴族や、自称大商会の会長がやって来てアストレア様に取り次いで貰う為に、賄賂や色仕掛け、軽い脅し等々はよくある事だ。


俺はそういう馬鹿共から何を言われようが気にしないし、いざとなればチート能力とか創造神様に頼んで物理的に消えて貰うとか、様々な手札を持ってるから良い


だけどメリルは違う。



万が一にもメリルが優秀な副会長であると知られれば、馬鹿共がメリルに対して何をしてくるか分かったもんじゃない



今はまだメリルが池田屋商会の副会長だと知ってる奴がいないというか、メリルは俺の愛人だとか隠し子だとか言われていて、、、


ちょいと待ちなさいよ!


隠し子はさすがに年齢的におかしいやろ、そのおかしな勘違いのお陰でメリルにちょっかい出す奴がおらんのはええけども


そんな感じでメリルはお飾りの副会長だと思われている


そもそもメリルの年齢で今や王国中に名を知られる池田屋商会の副会長だと、信じてくれと言う方に無理がある


いずれはメリルも副会長としてお馬鹿さん達の相手をしなければいけないけど、それは今じゃない


少なくとも精神が充分に成長するまでは、俺の陰に隠れて目立たないよう平穏に暮らして欲しい。



「主様」


「ニィナ?」


「お嬢様は主様が考えているより強い心をお持ちです。なので心配は無用だと申し上げます。」



はぁ


ニィナが俺の手を握って真剣な表情をしたから何事かと思えば、俺の心を読める訳ではないだろうけど、全てお見通しという事か


そもそも俺は個人の自主性を大事にする方針だったのを忘れてたぜ


どうなるか分からん未来より、大事なのは今だ!



「メリル、一緒にアストレア様の所に行こう、何があっても俺が守るからな!」


「ん?、、、とりあえず、おにいちゃんありがとう。よく分からないけど部屋の片付けが先だからね」


「あっ、はい、そうですね、片付け頑張ります。」






つづく。


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