第225話 流行り病?

雨季2日目の早朝に突然ウェンディさんが我が家にやって来て、ミリーさんが流行り病で倒れたと知らされた。



ウェンディさんによると毎年命を落とす人が多数出るという事なので、ニィナと共に全速力で商業ギルドのミリーさんが居る部屋の前までやって来た俺は、勢いそのままに扉を開ける



ガチャッ!


「ミリーさん、大丈夫ですか!」



ドアを開けるとソファに寝かされたミリーさんと、ミリーさんを看病している職員のお姉さんが居たのだが


こっ、この部屋、モワッとするぅー(泣)


ここでキノコ栽培でもする気か?ってくらい湿気がヤバイ!


そして、洗濯物と思われる物が部屋に取り付けたロープにかけられていて、部屋干し特有の匂いも酷い


もしかして、ミリーさんはここで生活してるんじゃないだろうな?


今はそんな事を考えている場合じゃないんだよ



「ニィナ、部屋の窓を全開にしてくれ!」


「雨が吹き込みますがよろしいのですか?」


「問題無い、雨よりこの部屋の空気の方が危険だ!」


「はっ!」



とにかくミリーさんをこの部屋から出さないと駄目だな、それくらいこの部屋の空気は濁っている


簡易ベッドを廊下に出してそこにミリーさんを寝かせるか



「ウェンディさんに職員さん、廊下にベッド出すんでそこにミリーさんを運ぶのを手伝って下さい!」


「「はい!!」」



ベッドに寝かせたミリーさんを見てみると、汗が凄いし顔も熱いし意識も朦朧としてるっぽい


俺の回復魔法は未だに病気には試してないけど有効だろうか?


その前に、出来れば回復魔法は我が家のみんな以外には知られたくないんだよな


回復魔法とトラブルのセットは異世界小説の大ヒット商品だもの


勿論どうしてもって時は遠慮無く回復魔法を使うけど、、、



あっ!


こんな時こそ宝の持ち腐れになってるユニークスキル『鑑定』の出番だよ


さっそく鑑定!


出た!


名前:ミリアリア・E・スリーピングフォレスト


状態異常:熱中症、脱水症、栄養不良(危険度43/100)



流行り病じゃ無いのか?!


とにかく今は危険な状態をなんとかしないと駄目だ。熱中症と脱水症なら対処法はある!スキルの「店」からスポーツドリンクをポチッとな



「ミリーさん!ペチペチペチペチ!意識を保って特製のドリンク飲んで下さい!意識がハッキリしてないと誤嚥(ごえん)しちゃうんですよ」



ミリーさんの頬をペチペチ叩いて意識をハッキリさせようとしてるけど、回復魔法を使うべきか、、、



「ん~、、、シン君?」


「そうです、ペチペチ!目は覚めましたか?ペチペチペチペチ!」


「シン君、顔がいたいよぉ~(泣)」


「はいはい、文句は後で聞きますから、特製のドリンク飲んで下さい」


「うん、、んぐ、、んぐ、、んぐ、、、」



よし!


次は魔法で氷を出してタオルで包んで、首と脇の下に入れる


とりあえずこれで様子見だな



「ウェンディさん、流行り病の原因や治療法って分かってるんですか?」


「基本的には身体を冷やして安静にする以外はありません。原因もハッキリとは分かってませんけど、毎年雨季から夏にかけて流行します。


特に貧困層に流行り病にかかる人が多いです。富裕層や貴族にもかかる人は居ますけど、比較的軽症で回復してます。ミリアリア様が過去に流行り病にかかった時も、多少気分が悪くなる程度で倒れる事は無かったんです。


シン殿ぉ~、ミリアリア様は助かりますよね(泣)」


「出来る事はしたのでしばらく様子を見てみましょう。」



ウェンディさんの話を聞いて確信したけど流行り病は熱中症だろう。今までミリーさんが倒れなかったのはたまたまだろうな


真夏の炎天下で熱中症になるイメージが強いけど、梅雨になったとたん湿気の多い室内に居る時に熱中症になる事がある


急な気温や湿度の変化に身体が対応出来ないのが原因らしい


しかし、鑑定で見たミリーさんの栄養不良はどういう事だ?貧困層ならともかくミリーさんは普通に食事は出来るだろうに



「ミリーさん、気分はどうですか?」


「うん、大分良くなった」


「それは良かった、鑑定で身体の状態を見たいんですけど構いませんか?」


「うん」



さっきは緊急だったからミリーさんに勝手に鑑定を使ったけど、鑑定って個人情報を盗み見してるようなものだから、人には使わないと決めたら全然使わなくなっちゃったんだよな


あらら?返事をしてくれたミリーさんはまだ身体がダルいのか目を閉じてしまった


とにかく鑑定っと



状態異常:熱中症、栄養不良(危険度22/100)


脱水症が無くなって危険度も下がったか、顔色も良いし体温も少し下がったからもう大丈夫かな


となると、確認しておかないといけない事がある



「ミリーさん起きてますか?」


ペチペチ


「ん?、、、シン君ほっぺがいたいよぉ~」


「はいはい、ミリーさん今日は何か食べましたか?」


「ううん。食べてない」


「そうですか、じゃあ昨日は何食べました?」


「昨日は芋を食べたよ」


「他には?」


「ううん、食べてない」


「じゃあ最近食べた物を教えて下さい」


「干し芋とスィートポテトを食べたけど、こんなの聞いてどうするの?」


「ミリーさん、アウトー!」


「え?」



完全なるアウトですよミリーさん!


結局芋しか食べてませんやん、そりゃあ栄養不良で熱中症にもなりますって


料理が発展してないこの国を見れば『栄養』の概念も無さそうやけども、ミリーさんの極端な偏食はレアケースとして


街の人達にもバランスの良い食事の大切さは周知していく必要はあるな



となるとウェンディさんも心配だけど、、、


ウェンディさんは最近我が家に来てパン作るついでにご飯食べて帰ってるし、たまに余った料理も持って帰ってたから、とりあえずは大丈夫かな


だからと言って熱中症にならない訳ではないから注意が必要だけど


なんにしてもインフルエンザとかじゃなくて良かったよ



「ウェンディさん、ミリーさんはもう大丈夫ですけど色々と心配なんで我が家に連れて帰ります。ウェンディさんはミリーさんの着替えとか私物を持って来て下さいね」


「本当ですかシン殿!ミリアリア様ぁ~良かったですぅ~(泣)」


「それじゃあミリーさん、俺がおぶって我が家に行きますから大人しくしてて下さいよ」


「え?、、あの、シン君、私仕事があるんだけど(汗)」



おぅふ、こんな状態で仕事なんて無理でしょうが!


そして確信する、ミリーさんに安易に回復魔法を使って元気にしたら、また同じ事を繰り返すと


という事でミリーさんの意見は無視して我が家に帰りまーす。






つづく。

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