第202話 今日も我が家は騒がしくて平和です。

朝、目が覚めると


俺は新たな朝の日課として無線機のスイッチを入れる


アンテナは既に我が家の屋上に設置済みなんだけど当然ながら何も音はしない、いずれゴレさんから連絡が来ると信じて待ってるだけだ


創造神様の話ではそもそもゴレさんに通信機能は無いみたいなんだよな、ゴレさんも俺に無線機の周波数を教えといて、アップデートで通信機能の実装待ちだったとは


楽しみが増えたから良いけどな♪





しばらく無線機の前に座ってぼーっとしてから



「今日から朝晩2回、無線機のスイッチ入れて連絡待ってます。朝の通信終わり」



まだゴレさんには聞こえてないと思うけど、しばらくこんな感じで連絡を待ってみようと思う。




さて、部屋の中を見渡すといつもの光景が広がっていて安心するんだけど


ただなぁ、ケイトが腹を出して寝るのだけはなんとかならんもんか、今は若いからいいのかもしれんけど


冬になる前にお藤さんに腹巻きでも作って貰おうかな




「みんな朝だぞ起きろ~」


「ん~、ごしゅじんしゃま、おはようごじゃるまる、、、」


「スミレおはよう、ほらおいで」


「うん」


「おにいちゃん、おはよう」


「おはようメリル」


「ご主人様おはようございます。」「主様、おはようございます。」「んにゃ?」


「カスミ、ニィナ、ケイトおはよう」



今日はみんなの目覚めも良さそうだ


俺はいつものように眠そうなスミレを抱っこして1階に降りていく




「シンさんにスミレちゃんおはよう」


「「シン殿、スーちゃんおはようございま~す♪」」


「お藤さん、コニー、フラニーおはよう」



今日もコニーとフラニーは元気だなぁ、ちなみに2人はスミレの事をスーちゃんと呼んでいる


スンスン、この匂いは♪


おっ?抱っこしてたスミレも匂いに気づいて起きたか、床におろしてあげるとオーブンの前に行って鼻をクンクンさせている♪




「コニー、フラニーパン焼いてくれてるのか、嬉しいけどそんなに早起きしなくていいんだぞ」


「みんなに焼きたてのパンを食べて欲しいので全然大丈夫です!」



「シン殿ぉおはよございま~す、あなたのウェンディですよぉ♪」


「ウッ、ウェンディさん?!何故こんな早朝に我が家に?」


「そんなのシン殿に会いに来たに決まってるじゃないですかぁ、それとコニーとフラニーに魔法の使い方を教える為ですよぉ、パン作りにはエルフの誇りがかかってますから!」


「「はい、頑張ります!」」



頑張って欲しいけど、エルフの気合いが少し恐いです。



「シン殿ぉ、早朝に来た理由は他にもあるんですよぉ、前にシン殿がミリアリア様に提案した『配送業務』を今日から試験的に始めるのでリヤカーを4台ほど欲しいんです」


「もう始めるんですか、リヤカーのサイズはどうします?」


「えっと、荷車と同じくらいのありますか?」


「ありますよ、それを4台ですね」


「ありがとうございます、それじゃあ『配送業務』に雇った人達を外に待たせてるんで渡してあげて下さい」



おいおい、こんな早朝から『配送業務』やんのかよ大変だな


とはいえ日の出から朝市はやってるし、街の門が開くのに合わせて来る商人も多いから、稼ぎ時ではあるのか



リヤカーを渡す為に外に出ると、そこにはぱっと見て一瞬で分かるくらいに日々の生活に困ってそうな女性が4人


年齢は皆10代後半くらいか?見事に全員ガリガリに痩せている



「「「「おはようございます!」」」」


「あっ、うん、おはよう」



外に出て来た俺を見つけて目の前の4人が挨拶をしてくれたけど、栄養不足だからなのか声カッスカスやん!


挨拶に気合いは感じるけど声に全くチカラが入ってない、こんな状態で配送業務なんてして大丈夫か?


この人達倒れても這ってでも仕事を続けそうなんだよな(汗)




「ウェンディさんこの人達で大丈夫なんですか?」


「シン殿の言いたい事は分かりますけど、リヤカーや荷物を持ち逃げしない人となると限られちゃうんですよ」



そうだよなぁ、リヤカーを買いたい奴は沢山居るだろうし荷物を転売して逃げるとかこの国じゃ普通だもんな


だからこそ何の伝(つて)も無い平民は信用されないし出来る仕事も限られる、そして目の前の4人のように貧困から抜け出せない人が減らない


池田屋商会でそれなりに人を雇ったといっても、街の人口からすると吹けば飛ぶような人数だもんな




そんな事より目の前の4人をこのまま仕事に行かせるのは駄目だ、途中で倒れられるのは困る


俺の収納に何か、、、ワインの空きビン、、、


ちゃんと洗ってるからこれで良いか、空きビンに水を注いでコルクで栓をしてと、あとはウィンナーサンドとデザートのフルーツサンドをラップで包んで紙袋に入れて、それぞれのリヤカーに乗せていく


ラップは燃やしても大丈夫なやつがスキルの「店」にあったからそれを選んだけど、そもそもスキルの「店」の商品は創造神様が作ってる物だから、たとえプラスチックに見える物でも限り無くそっくりな別の何かだと思われる


試しにスキルの「店」で買ったおにぎりの包装を裏庭に埋めたら、分解されたのか翌日には消えていた


環境問題も対策済みとは、さすが創造神様!






「えぇーと皆さん、配送業務が正式に事業としてやっていけるかは皆さんの頑張りにかかっています


差し入れのウィンナーサンドとフルーツサンドは期待の現れですので、遠慮せず食べてお仕事頑張って下さい、それではいってらっしゃ~い」


「「「「ありがとうございます!行って来ます!」」」」




リヤカーを引きながら仕事に向かう4人を見送るけど、本当に大丈夫か?


気合いは伝わるんだけど、、、



「シン殿ぉ、心配なのは分かりますけどあとは信じて待つしかないですよぉ」


「そうですね」



貧困問題なんてただのおっさんにはどうにも出来ん、俺に出来るのは我が家のみんなを守るくらいだ


腹も減ったし、そろそろパンが焼ける頃かな?



我が家に戻ると、ケイト、スミレ、ニィナがオーブンの前にしゃがんで仲良くパンが焼けるのをじっと見ている


なかなか珍しい組み合わせだな(笑)




「主様!今日のパンは至高の匂いがします!」



なるほどニィナは匂いに釣られたのか


パン作りにエルフの誇りがかかっているって聞いてから、最初に作った食パンから色々と改良を加えてみたからな


多分今日のパンはバターをたっぷり使った超リッチなパンだと思う、そりゃあ至高の匂いにもなるはずだよ♪



「はいはい、ケイトちゃん、スミレちゃん、ニィナちゃん、オーブンの前に居ないでこっちを手伝って頂戴」


「「「は~い」」」








「シン殿ぉ、そんな所に立ってどうしたんですかぁ?早くしないとパン全部食べられちゃいますよぉ」


「え?」



ウェンディさんに声をかけられて我にかえる


楽しそうに準備をしているみんなを眺めていたら、どうやら軽く意識が飛んでいたっぽい



それでだ


ぼーっとしていたのは俺が悪いからパンを誰かに食べられても文句は無い


だがしかし!



「ケイト、その手に持って丸かじりしようとしている食パンは、切り分けてみんなで食べる用じゃないのか?」


「ケイトちゃん!」


「えぇー?!駄目なの?丸かじりしたらスゲェ美味しそうなのに(悲)」


「丸かじりは確かに美味しそうですが、ケイト殿は大人なのですから幼い子供のような事をしてどうするのです」



「罰としてケイトは今日の夕食のお酒抜きにしま~す」


「え゛っ?!お嬢それだけは駄目だってぇ、あたし何でもするから許してよぉ~(泣)」


「わっ?!ケイト鼻水!鼻水が付くから!いいからお酒飲んでいいから、鼻水がぁ~~~(汗)」


「「「「「「「あはははは」」」」」」」






愉快な仲間が多いと毎日騒がしくて大変だな


昔はそういうの苦手だったけど楽しいと思える日が来るとは思わなかったよ


そして、今日も我が家は騒がしくて平和です♪






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る