第110話 剣士ケイト その2
「ヤバい!みんな伏せろ!!」
『ドッゴォーーーーーーーーン!!』
うおっ!!スゲェ衝撃だ
「みんな無事か?!」
周りを見ると自動回復のお陰か全員かすり傷ひとつ無い、改めて創造神様に感謝だよ
「ダンナ大丈夫?こっちは終わったよぉ♪」
「そうか、ありがとうな」
隠れていた岩の反対側に行くと、岩に激突したせいでイノシシの鼻と口が見事に潰れて死んでいた
よく見ると巨大な岩が20㎝ほど動いてるしどんだけ凄い勢いで突進してきたんだよ
絶命したイノシシを観察すると、腹と右の前足と後ろ足に小さな傷があった
なるほど、足の健を斬られて方向転換出来なくなり岩に突っ込んだ訳か
そして腹から心臓をひと突き
なかなかに繊細なやり方だ、だからケイトの武器は確実に狙った場所を斬れる細身の長剣という事なんだろう
でもこれだと対人戦はどうするんだろ?盾でも持たれたら厳しいと思うんだけど、素人の俺が考えなくても対策済みなんだろうな
「なぁケイト、こいつ魔物なのか?」
「魔物じゃないよ、ただの豚だよ」
「豚?、、、イノシシじゃなくて?」
「流石にこんなに大きい豚は珍しいけど、小さいのなら肉屋に売ってるよ、安くて美味しい定番の肉だね♪」
マジか、こんな厳つい顔して牙まであんのに魔物じゃないし豚なのかよ!
でも肉が美味しいなら持って帰るか、商会の皆のお土産にちょうどいいや、よし収納っと
さてと、バーベキューの続きだ!
サウスエビが良い感じに焼けたところでクソ豚に邪魔されたからな
「おい!申し訳無いがグラフィアス商会が野営をするので、場所を開けて頂きたい」
サウスエビとハマグリを美味しく頂いてまったりしていたら、黒塗りの豪華な馬車の一団がやってきた
グラフィアス商会・・・
知らんな
申し訳無いと言いつつ高圧的だけど、デカい商会っぽいし一応断りを入れてるから良心的と言えなくもない
トラブルは困るしさっさと片付けて俺達はもう少し先で野営をするかな
「みんな片付けて出発するぞ~」
「おい、お前!」
呼ばれたので振り向くと、金ピカの見るからに高そうな鎧を着込んだ男がいる
グラフィアス商会の護衛だろうか?
それにしては目立ち過ぎな気がするし、ついでに美的センスも無さそうだ
「なにか?」
「お前じゃ無い!そこの女!こっちを向け!」
見た目通りの傲慢な態度の奴だな、こういう奴は絶対トラブルを持って来るんだよ
今俺の近くに居るのはケイトとスミレだけど、まさかスミレを狙うロリコン野郎か?!
「あたしに何か用か?」
「・・・やはりアイアンメイデンじゃないか♪」
アイアンメイデン?なんだその拷問器具みたいな恐ろしい名前は
「人違いだよ。ダンナさっさと片付けよう」
「おっ、おう」
なんだかケイトが凄くピリピリしていてこんなケイトは珍しい、金ピカ男は知り合いか?
「久し振りの再開で照れているのかい?キミとボクの仲じゃないか
探したんだよアイアンメイデン、Sランクも夢じゃないと言われていたのに急に姿を消したと思ったら、こんな所で商人の護衛かい?
キミはここでそんな事をしているべきじゃない、キミは神に選ばれた人間なんだから。さあ!同じく神に選ばれたボクと一緒にSランクになろうじゃないか♪」
とりあえずこいつを殴りたい!
だが我慢だ、神に選ばれたとか言ってるけどそれは無いな、創造神様がこんな馬鹿そうな奴に興味は持たんだろ
「ケイト、こいつは知り合いか?」
「・・・親しくは無いよ」
親しくは無いか、知ってはいるって事だな
まあ、俺は他人に興味は無いからどうでもいいけどな
「片付いたし、行こうか」
「うん」
「どうしたんだい、ボクの事を無視するなんて酷いじゃないか
そうか分かったぞ!そこの男だな、そいつがキミをたぶらかしているんだろう?」
「おい!この人はあたしの大切な人なんだ、手を出すならお前を許さない!」
「なっ?!なんて事だ、ケイトがボクにこんな口の聞き方をするなんて、、、だっだけどボクは神に選ばれた紳士だからね、そこの男!」
「なんだよ」
「ふん、口の聞き方もなっちゃいないけど、今日だけは許そうじゃないか、そこの男、金をやるからボクとケイトの前から消えてくれるかな、邪魔なんだ、ほら」
『ドサッ』
男が放り投げた袋が俺の前に落ちる、いつもの俺ならこの袋を思いっきりあのボクっ子の顔面に投げつけてやるところだが
ここは冷静に大人の対応をしてやろうじゃあないか
「ケイト、その男はケイトに用があるみたいだけど」
「あたしには無いから、ダンナは気にしなくていいよ」
「だそうだよ、えぇーと名前は、、、知らなくていいや、ほら袋は返すよ」
「ふふっ、あはははははははは」
なんだ?急に笑い出して、情緒不安定なのか?
「そうか、お前もそうなのか、ケイトに寄生するゴミ虫だったんだな!
昔からそうなんだ、ケイトは子供の頃から特別なチカラがあったんだ、だからそのチカラを目当てに寄生しようと虫が群がって来る
でもこのボクがそんな事を許すはずが無い、ケイトに近付く虫はボクがみんな追い払ってやったんだ
ケイトにはボクさえ居ればいいんだ、お前みたいなゴミ虫は要らないんだよ!」
話を聞く限り、ケイトとこいつは子供の頃からの知合いだろう
神に選ばれたって所はどういう事なんだ?
剣の才能の事だろうか?
ケイトは確か何処かの街の孤児院出身だった筈、ならこいつも孤児か
同じ孤児院でたまたまケイトとこのボクっ子に剣の才能があって、将来を期待されてチヤホヤされて勘違いしたよくあるパターンか
こんな所までテンプレ展開かよ(泣)
ケイトも大変だな、子供の頃からこんな変人に付きまとわれて・・・
待て待て待て!
子供の頃からこんな変人が側にいたら誰もケイトに近寄るわけがない、たとえ近付いてもこいつが追い払ってたんだからな
ケイトが異常に仲間外れを嫌がるのも、こいつのせいじゃねぇか!
完全にトラウマになってるんだぞ
許さん、このボクっ子がぁーー!!
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。