第89話 タコヤー・K・エモンズ

朝、目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった


当然だな、ここはサウスビーチの街で商業ギルドに用意して貰った宿代わりの家なんだから


久しぶりにひとりで寝る夜は気を使わなくていいけど、多少寂しさもあるな



さて朝食を作りに行くか



「「「おはようございますご主人様」」」


「おっと?!、、、ニィナ、カスミ、スミレおはよう」



まさか旅先でも待ってるとは思わんかった


だが俺を驚かせた2人には倍返しだ!



「カスミ、スミレ、こっちおいで、ほれっ」


『ぎゅぅぅ♪』



カスミとスミレをぎゅっと抱きしめてやる


、、、ん?



何故か反応が無いと思ったら2人とも泣きそうな顔をして俺を見ている



「カスミ、スミレどうした?」


「なっ何でも、、ありません、、、」




もしかしたら俺を父親と重ねているのだろうか?


まだまだ甘えたい年頃だろうからな



だがしかし



所詮俺は赤の他人でしかない、そもそも親になった事も無いのに親代わりが出来るような器用な人間でも無い


だから


俺は俺として、たんまり愛情を注いでやるだけだ、それをどう受け止めるかは2人の自由だけどな


せめて言いたいことは遠慮せず言える関係にはなりたい



「カスミ、スミレ、あんま遠慮ばっかりせんでええ、もっと自分の好きなようにしてええねんで、、、俺もふたりには遠慮せんようにするから、ほれっ」



さっきからずっと泣きそうな2人を、改めてチカラいっぱいギュッとして頭をわしゃわしゃしてやる、


今はこれが俺の精一杯だ



『ムニッ』



ん?


なんだか背中にムニッと柔らかい感触が、、、ってニィナしかいないよ!


まあいいか、たまにはこんな時間も必要なのかもしれん




ーーーーーーーーーーーーーー




朝食も食べ終えてまったりタイムを満喫中。


この街で登録するレシピはどうしようかなぁ?


海辺の街だから魚や貝を使ったレシピがいいんだけど



「ダンナァ、商業ギルドの人が来てるよぉ」


「分かった、通してくれ」






「シンさん、おはようございます。朝から申し訳ありません、今ギルドにエモンズ商会のタコヤーさんが来られてシンさんにお会いしたいという事なのですが、いかがいたしましょう」



エモンズ商会と言えば、旅の初日に会ったマスヤー・K・エモンズが会長をしている商会だったな


時間的にはまだマスヤーさんはこの街に到着してないと思うけど、別件か?



「タコヤーさんって、会長のマスヤーさんとはどういう関係なんですか?」


「はい、タコヤーさんは会長の息子さんで、タコヤー・K・エモンズさんとおっしゃいます」


「分かりました、お会いするのでギルドに行きましょう」








商業ギルドの職員さんと一緒に、商業ギルドの応接室にやって来た


目の前には20代前半くらいの青年が座っていて、少し日に焼けて小麦色になった肌がいかにも南国の人って感じがする。



「お初にお目にかかります、わたくしエモンズ商会のタコヤー・K・エモンズと申します。あなたが池田屋商会会長のシン様で間違い無いですか?」


「間違い無いよ、それで要件は?」


「実は、昨日父からの手紙が早馬にて届けられました、内容はシン様御一行に大変失礼な事をしてしまったと


そして父が戻る前にシン様が到着したら丁重にもてなすようにと、他の皆様の特徴も細かく書かれており、たまたま見かけた商会の者が知らせてくれましたので


失礼を承知でギルドに頼み朝から面会を求めた次第です


父に代わり謝罪致します。大変申し訳ありませんでした。」


「それは俺とマスヤーさんの問題だから、タコヤーさんが謝罪する必要はありませんよ」


「いいえ、私はシン様に謝罪しなくていけないのです、昨日シン様は屋台で魚を挟んだパンをお買いになられましたよね?」


「あぁ、あの危険なパンか、、、まさかあれって」


「お察しの通り、あれはエモンズ商会で出している屋台です、最近エモンズ商会では新しい食べ物の開発をしているのですが


あれは幹部のひとりがお客の反応を見る為に試しに売っていたそうです、まさかあのような物を売っているとは知らなかったとはいえ大変申し訳ありませんでした。」



うーむ


エモンズ商会には迷惑料を貰えばそれで終わりだったんだけど


せっかくだからこの街の食の改善の為に、タダ働きしてもらうか



「タコヤーさん質問なんだけど、この街で魚はどうやって食べてるんですか?」


「魚ですか?貴族以外で食べる方はほとんど居ないと思いますが」



なっ、なんだと?!海辺の街で魚を食べないとかなんなんだ!



「昨日の屋台は魚を使ってましたよね?」


「あれはたまたま潮溜まりにいた魚だったらしいです、そもそも魚を手で捕まえるのは大変ですし


人を沢山雇って魚を捕まえさせる事が出来る貴族や一部のお金持ち以外は、わざわざ魚を捕まえて食べようとする人はほとんど居ないと思います」



魚なら網とか釣り竿とかあるけど、そっち方面も発展途中か?!


すげぇー面倒くさいわぁ~、この際全部放置でいいんじゃねぇかな




『ピロロロロン、ピロロロロン』


あっ?!


もはや毎度お馴染みのあの音が頭に鳴り響いた



(おーい、魚捕る方法くらい教えたりぃや、ウチは鉄火巻き言うのが食べたいなぁ、網とか必要なもんはタダで送るから頼んだで♪


ちょっと、ちーちゃん勝手に何してるのよ!


すいませんが、あの子がキャラバンシティにいるので保護をお願いしますね、それと私は海鮮丼を所望します、それでは頑張ってくださいね)



あぁ~、なんかもうカオスだな


神様達がめっちゃ普通に喋って来たし、そして前にも言われたけどあの子って誰?もう少し詳しい情報が欲しいのですけど、、、


これはキャラバンシティに戻ってから考えよう


創造神様の友達?からのお願いだから無視する訳にいかないよなぁ



頑張りますから、これからも色々とお願いしますよ






つづく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る