閑話 スラム街の少女
side:スラム暮らしの少女
わたしは今日1日の稼ぎである硬いパンを抱えてスラム街にある家に帰る
家と言っても崩れた石壁と板で囲ってあるだけの粗末な物だ
数年前に両親が流行病で亡くなってから私はここで暮らしている
ここでの仕事は2つしかない、商会の雑用かこの街に来た人を案内する仕事のどちらかだ、それ以外は森で食べれる物を探している
わたしの今日の仕事も商会での雑用だった、その商会の会長さんはいつも私たちに仕事をくれる優しい人だけど、みんな平等になるように順番に仕事をくれるから、なかなかわたしの番にならない
でも商会の仕事は色々な話が聞けるから楽しい♪
お母さんが生きていた頃、わたしに知識はチカラなんだって、知識があればご飯を食べる事も出来るんだってよく言っていた、その時は意味が分からなかったけど
でも商会の人は色々な事を知ってる人が多い、だから知識があるのは大事な事なんだと思う
でも今のわたしにはその知識が足りないみたい、だってとても空腹だから
最近スラム街に人が増えた
また何処かの国と戦争をしているらしい、人が増えたせいで仕事が少なくなって最近は木の実しか食べていない
わたしは『身体を売る』という仕事をしてみようかと思ってる
詳しく分からないけれど毎日ご飯を食べるくらいのお金は稼げるらしいから
朝から何人かに「身体を買って欲しい」と声をかけてみたけど駄目だった、服がボロボロなのがいけないのだろうか?でも服はこれしか持っていない
あきらめて帰ろうとした時、キョロキョロしながら歩いている若い男の人がいた、とても優しそうな顔をした人だ
この人なら同情してわたしを買ってくれるかもしれない
わたしが身体を買って欲しいと声をかけると、その人はとても困った顔をしていた
その顔を見てわたしは何故かとても悪い事をしたような気持ちになってしまった、そしたらその人はわたしに仕事を手伝ってくれないかと聞いてきた
突然の事で驚いたけれど報酬に肉串をくれるというので喜んで引き受ける事にした
どんな仕事をするのかと思ったら、干し芋という食べ物を無料で配る仕事だった
食べ物を無料で配るなんてどうゆう事か分からなかったけど、たくさん配ってと言われたのでわたしは頑張ってたくさん配った
配り終えて休んでいると、その人がやってきて商品が完売したととても喜んでいた、何故無料で配った商品が売れるのかわたしには意味が分からなかった
そして完売したお礼といって、肉串とパンをくれた、わたしは干し芋を配っていただけなのに
戸惑っていると明日も手伝って欲しいと言われて驚いたけど、驚き過ぎて慣れてしまった(笑)
肉串が貰えるなら断る理由も無いから喜んで引き受ける
その人と別れたわたしはすぐに肉串を食べる、久しぶりのまともな食事は凄く美味しかった、涙が出るくらいに
次の日、昨日貰って食べずに残しておいたパンを食べる為に、手にチカラを入れてパンをちぎろうとしたらパンが潰れてしまった
だってパンといえば硬い物だから、このパンは外側はそれなりに硬いけど中は驚くほどに柔らかかった
こんなパンは初めて見る、きっとあの人が自分で食べる為のパンを間違えてわたしに渡したんだろう、きっとそうだ!
でもこの潰れたパンを返してもあの人はきっと困る
今日は昨日以上に頑張って働こうと誓い、わたしは潰れたパンを頬張るとあまりの美味しさに驚きパンがノドに詰まりそうになった
貴族やお金持ちが食べるパンは柔らかくてとても美味しいらしいから、このパンもきっとそういうパンだ
商売は上手そうなのにそそっかしい人、わたしがキチンと教えてあげないと!
だって商会の人も駄目なところはちゃんと言わないと本人の為にならないって言っていたから
あの人は他の商人さんたちと比べると凄く頼りなく感じた、だからわたしが早く教えてあげないと駄目だと思う!
ふふっ、早く約束の時間にならないかな♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。