第31話 死霊の祟り ③
放射線科に勤める俺、こと安田大毅がよく読む小説と同じなんだよな。後輩の宮脇の同期の看護師である岡田遥香が死んだわけだけど、状況証拠ばっかりで実際に三人の医者が殺したと動機も詳しいところが分からないし、物的証拠がゼロ状態だったのは間違いのない事実。
宮脇の夢があまりにリアルだし、霊感高めの横山理奈が言うには、死んだ岡田遥香からのメッセージだっていうし、5月になれば、あいつらは晴れて本院へ逃げ出して、あとは知らね〜って事になっちまうしで、短期で決着をつけなければならない状況に陥ったわけ。
確かに宮脇の夢の中では、首を括られた岡田さんは足を引っ張り上げられたらしい。
ドアノブに引っ掛けて首を吊っての自殺だから、そこに何か違和感というか、問題となる証拠とか残っていたら良いんだけど、知り合いに目黒警部がいるわけでもないこの状況。
見かけは子供、頭脳は大人な助っ人が居るわけでもないし、実際の現場がどうなっていたのかなんてわかんないってことで、家族が荷物を引き取りに来たときに、挨拶がてら問題の寮の部屋の中を見た宮脇と横山理奈は、
「やっぱり物的証拠とか、良くわからないんだけど〜」
と、至極当たり前の事を言い出す始末。
最終的に宮脇自身が囮となって、問題の医師たちが事件を示唆するような発言をしたところを録音して、病院には相談せずに直で警察に持っていこうって事になったわけ。
何でも揉み消しがちな病院側の対応は痛いほど分かっているから、直で警察に行く事により、三人の医師の家宅捜索にまで持ち込めれば何か証拠が出てくるんじゃないのかなぁ・・・程度の望みをかけて俺たちは動いたんだけど・・結果はとんでもない事となったわけだ。
「女性に飲酒させ、集団で性的暴行を加えたとして警視庁捜査一課と・・署は準強制性交の疑いで・・大附属・・総合病院に勤務の医師6名を逮捕。またそのうちの一名は、同病院勤務の看護師を殺害したとして殺人罪で、うち二名は殺人教唆の罪ですでに逮捕をされており、医師たちの余罪の追求が続いているようです・・・」
ラーメン屋のテレビから流れるニュースを眺めていると、
「震え上がっている医者が、うちの病院には山ほどいるって本当の話なんですかねー〜―」
と、宮脇咲良がラーメンを啜りながら呟き、
「あんた、自分だって被害に遭っているのに余裕の発言じゃない!」
と、同期の横山理奈が言い出した。
宮脇がスマホに録音していた音声と、宮脇が襲われているところを撮影した画像をひっ提げて警察に行き、3名の搬送された医師に対して被害届を提出。また、自殺した岡田遥香について三人の医師に性的被害を受けたと相談されていたという嘘をつき、やっぱりあの三人は怪しいと結論づけて、もう一回捜査をしてもらうように願い出た。
とりあえず三人は精神病院に入院中だし、裁判所の許可を得て家宅捜査を行う事になったらしいんだけど、出るわ、出るわ、睡眠導入に使っていた薬から、レイプした女性の画像から、果てには泥酔した岡田遥香を首吊りさせる動画まで出てきた為、殺人事件に捜査を切り替える事となったらしい。
ちなみに、首に縄をかけて殺していたのは同じ職場の脳外科医師の辻元で、その様子を重岡医師、田辺医師、二人ともが録画をしていたらしい。
重岡医師が岡田遥香の部屋の合鍵を持っていたため、犯行後は自殺に見せかけて鍵をかけて出て行ったのだそうだ。
うちの病院の医者の中には、薬を使って性的暴行を働いたなんて医者もいたみたいだし、証拠としての画像がパソコンの中に残っていたっていう関係で、関係者となる医者への事情聴取とか進められている中で、事件に対する報道から、被害届をだす女性の数も日に日に増えていっている状況で、病院の上層部は記者会見まで開いて謝罪しなくちゃなんないし、急に病院を辞める!!と、言い出す医者は増えて来ているし、てんてこ舞い状態になっているらしい。
ちなみに脳外科の山岡師長さんは6月から僻地の病院に転勤となるらしい。
「あなたは相談に来た新人看護師にカルテを投げつけたそうね!自分の部下の一人が亡くなったというのに涙ひとつこぼさず、重岡医師のフォローに入るだなんて?人の心があるの?あなたこそ看護師失格なんじゃないの!」
と、総看護師長に怒鳴られたらしいのだが、元々評判が悪かったからね〜。だけど、ここまで騒動が起こっているのに退職にまではならないんだから、甘いよな〜とは思うけど。
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