第36話 校外学習⑦

「「「Grrrrrraaaaaaaaaaaa!!!!」」」


「アアアァァァァァァァ!!!! 死ぬ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!! クロスしっかりしてくれーーーーーー!!!!」


「だいじょぶ、みそしるは、ばななに、オヤツだから」


「何言ってんだバカーーーーー!!!??」


「「「Grrrrraaaaaaaaaaaa!!!」」」


「ヒイイイィィィィィーーーーーーー!?!?!」


「─────とーーーーうッ!」


「「「GA─────!?」」」


「へぁ───!?」


 アブナイ、アブナイ。危うくこちらの切り札が二枚とも失くなってしまうところだった。


「余、参上………!」


 はいっ、背後をドカーンと爆発!


「どぅわああああああーーーーーーーー!!!? なに!? 何で爆発したのッ!??」


「おかしな事を言うのだなギーク。ヒーローが登場し口上を述べれば爆発するのは当然だろう?」


「いいえ!? 全くもって当然ではないですが!?」


「細かいヤツめ、だから若くしてハゲるのだ!」


 さて、冗談はほどほどにしてクロスの様子を診るとしようではないか。先ほど、あのゴッドスライムとやらの凄まじい攻撃を見たときは流石の余も肝を冷やしたぞ。


「えっ、ハゲてる? 嘘だろ………?」


「嘘だ。それよりもクロスはどうしてこうなった? 攻撃を受けてしまったのか?」


「い、いや、なんか血がどうのこうのって……彼岸花って技を使ったんだけど」


「彼岸花………ワイヤートリックの技か?」


「そう! そのワイヤートリックを使ったら、こうアホみたいな状態に………って、ゴッドスライムが来てる!?」


 たかが一年足らずでワイヤートリックの奥義とも呼べる「彼岸花」を会得するとはな。クロス……お前が本当に人間か怪しくなってきたぞ。


(攻撃を受ける度胸、技を使う判断、成功させる技量………どれをとっても一流のそれだ)


 あのアルゴが気に入るのも分かる。こやつは叩き込めば叩き込むほどに恐ろしいまでの成長を期待できるのだから。


「おいっ! ブラッド聞こえてんのか!?」


「ええいっお黙りッ!!!」


「へぶぅッ───!??」


 ピーピーギャーギャー騒ぐんじゃありません。泣くギーク黙まらせる王子様ビンタで冷静さを取り戻させる。


「安心したまえギーク、余は何も遊んでいたわけではないのだ。既にヤツに対して手は打ってある!」


「おお!? ただの騒がしいヤツじゃなかったんだな、お前!!」


「ハッハッハ! 余でなければ即刻その首を刎ね飛ばされておるからな気をつけよギーク!!」


 それはそうとクロスには早々に復帰してもらわねば困るからな、特大の注射器でを注入せねばならん。ほーれラブ注入〜!


「触手が来るッ───!」


「ブァカめッ! そこは地雷原だぞ!!!」


 ドガガガガガガガガガッッッッ!!!!!!


 一本の触手が空中で爆発したのを皮切りに、ゴッドスライムの周囲を連続した爆発が襲いかかる。


 余の溢れんばかりの威光を隠密性に優れた「ステルス」という魔法で気づかれなくさせ、ヤツの周りに炎系魔法「エクスプロージョン」の魔法陣で囲えば準備完了。


「導火線に火をつけていたのだ、後は任意でその時間をゼロにするかスライム自身が攻撃をするかで魔法は発動する!」


「ブラッドすげぇぜッ! 見直したぞ!!!」


「フッハッハッハ! そんな事もある! 図体ばかりデカくとも無傷とはいかないだろう!」


「………あーーー、うるさ」


「む! 回復したかクロス! どうだ、愉快な目覚ましは特別に効いたのではないか?」


「最高だね。これにモーニングコーヒーなんかあったりしたら天国なんだけど?」


「バカを言え、今の貴様に必要なのは栄養たっぷりの血液であろうに!!!」


「栄養たっぷりの血液ってなんだよ。絶対にクロスに刺しちゃだめなヤツだろ………」


 みなまで言うなギーク。余も自分で何を言っているのか訳がわからん時があるが、その場のノリと勢いで出てくるのだ。


 しかし、だ。爆発で舞い上がった土埃がそろそろ晴れるころだが、ヤツにどれほどダメージが入ったのだろうな? 少なすぎても多すぎてもダメなのだ。ちょうどよく中間くらいに傷を負っててほしいのだが。


「………あれって効いてる?」


「知らんッ───!!!」


「効いてるんだろうけど巨大過ぎて分からないだけなんだろうな。俺の魔力弾も当たってたけど、どれくらいのダメージが入ったか見て分からなかったからな」


 全くもって厄介なものだな、あのゴッドスライムとやらは。遠近感が狂って相手の攻撃は避けにくいのに対し、コチラの攻撃は慣れなければ手前に落ちてしまいそうになる。


「ブラッド、お嬢様たちは大丈夫なのか……?」


「安心しろ。ヴァイス嬢とシュヴァルツ嬢は順調に魔力を削っている」


「な、なあブラッド? あとどれくらいの時間、こうしていればいいんだ?」


 ギークたちと合流する前、南側に見えた彼女たちの魔力残量からするに半分もないだろう。膨大な魔力を持つが非戦闘員である二人にとって予想外のことばかり起こっているのだ。下手なところに力が入り、常に守ってくれていたクロスも居ない状況下では100パーセントのパフォーマンスを発揮するのは至難の業だろうな。


 故に、ゴッドスライムを彼女らにぶつけることを考えれば後一時間もないのだと予測できる!!!


「余の脳内計算機によれば後一時間ばかし魔物どもと遊んでおけば、万事解決するッ!!!」


「おお…………!?!?」


「───ブラッド」


 まだ特大の注射器で注入して血液が全身に行き渡っていないのだろう、そんな本調子ではないクロスが話しかけてきた。


「俺は……二人と合流するか、あのデカブツの攻撃をこっちに集めるかを提案するぜ」


「ほう………して理由は?」


「合流であれば全員で叩ける。攻撃の集中であれば二人の安全を確保できる」


「───で? デメリットはなんだ?」


「前者は他の魔物との混戦になり易い。後者はこっちに注意を引きつける何かが必要だ」


「ご、合流にしないか……? 固まったほうが何かと安全じゃない……?」


 ギークの言う事にも一里ある。


 確かに下手に散らばるよりかは集団で固まった方がいい場合もあるからだ。しかし、彼女らの魔力は余も恐れてしまうため、万全の態勢でいられるかと聞かれれば否だ。当然、それはギークにも当てはまる。


 であれば選ぶのは当然───。


「後者の攻撃を集中させる、だ!」


「なっ、なんでだ!?」


「ブラッドとギークが恐怖で万全でなくなることと、俺がダウンしてるのが大きいか………」


「そうだ。仮に合流できてもギーク、お前を守るクロスはいないのだぞ?」


「………そうか、分かった」


 自分が負担になっていることに気づいているようだな。この計画が始まる前では、自分はもっと何かの役に立つと息巻いて空回りしそうであったが、今はその不安な感じはない。


 意外にもこやつ、クロスと同程度には成長速度が早いのではないのか? 普通、自分の弱さを受け止めるのは慣れていないやつだと時間が掛かるというのに。


「よしっ、では誘引の魔法をコチラへ向けるのと、なるべくスライムが彼女たちに行かないよう余裕を持って行動するぞ!」


「オレは動けるけどクロスは難しい……どうするんだ? 担いでいくか?」


「否ッ! クロスは全身に血が巡れば動けるようにしているため、ここは余の力を魅せてやろう!!」


「まさか一人で行く気じゃないだろうな……?」


 伊達に先輩ぶってないわい! こちとら魔法に関しては随分と年季の入ったオタクなんじゃい!


「まさかもまさか………大まさかよッ!! 見ていろよギーク、この華麗な回避術を!!」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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いつも応援していただきありがとうございます!

それではまた次回でお会いしましょう。


                    研究所

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