第19話 魔術学園なんです……か?

「しかし、これなら魔術学園に行かなくても良い位だな!!」

「え? ま、魔術学園? お母様何それ……学校?」


 何やら初めて聞く、乙女ゲームチックな響きに、やや顔を引き攣り気味で尋ねる。


「ん? レティには言ってなかったか! この国では、魔力が一定以上高い者は、十五歳から魔術学園に通って、魔術を学ばなければならない決まりがある! 正しい使い方や、一流の魔法を学べたり出来るからな! 四年間、学ばなければならないが、なかなか有意義ではある!!」

「よ、四年も……」


(そんなの聞いてないよー!?)


「まあ、聞くだけでは、四年は長く感じるかもしれないが! なかなか…いやな学園でな!! 四年なんて、あっという間で、兎に角面白かったよ!!」

「そっか、お母様も通ってたんだよね」

「そこでレオに出会った訳だ! な、レオ!!」

「……まあ、そうだな」

「え! 二人は恋愛結婚だったの?!」


(おおっラブロマンス!! くっ詳しく! そこ詳しく聞きたい聴きたい気期待ききたいです!!)


 食い付きが異常なレティシアに気付く事なく、ルシータは高笑いするばかりで答える気はないらしい。レオナルドに目線を移すと、視線を逸らされた。


「……まあ、魔術学園については、レティにはまだまだ先の話だ。ユリウスは五年後か。今、その話をする事も無いだろう。私は先に帰る」

「えー!? 待って、聞きたいー! 今気期待ききたいー!!」


 レティシアの懇願虚しく、レオナルドは踵を返した。ランディはこちらに軽く礼をしてから、レオナルドの後を追い、帰っていった。


「お母様ー!!」

「ハハハ! 私達のことは、レティがもう少し大きくなったら話してあげるから! そんな可愛い顔で睨むなレティ! 仕方ない、魔術学園の事はもう少し話してあげようじゃないか!!」


 頭を撫ぜられる。ロマンス話、聞きたかったが魔力学園の話も気になるので、渋々頷いた。


「魔術学園は、魔力が高い者しか通う事は許されない。という事は、必然的に貴族の子供達が集まる場所となる! そう言う意味では、面倒臭い場所でもあるからな! レオナルドは、泥臭い話をレティにはまだ話したく無いのだろう!!」


 その言葉に、レティシアはハッとした。


 平民が高い魔力を持つ事は稀だ。もし高い魔力の子供が生まれても、大抵、貴族達に養子として引き取られる。

 魔術学園を、前世の学校の様に考えてしまっていた。


 それに今まで、公爵家としての心構えが出来ていないことにも、気付かされた。

 ユリウスもいつの間にか、鋭い顔つきになっている。


「義母様。レティも通わせるのですか? 僕は反対です! そんなの、勉強の話どころでは無くなってくる!」


 ユリウスは何故か憤慨している。レティシアは首を傾げた。


「ユリウス兄様? どうして私が行くと、そうなるの?」

「レティ……。そろそろ自分の美しさを、自覚した方が良い。君は美しすぎるんだ。レティが塵芥きぞくどもに求婚される姿なんて、見たくない!」

ゴミどもちりあくたって聞こえた気がする……あと、き求婚って……!」


(そ、そうでしたーー!! ついさっきまで、両親の恋バナを気にし過ぎて、色々頭から抜け落ちてました!! やはり学園生活から、ゲームスタート! 的なやつですか!?)


「それは心配は要らない! ユリウスの言ったような事は、昔からあるからな! 学園側も、重々承知しているんだ! それを防ぐ方法が、また面白いんだ!! 何せ『変装石』を使うからな!!」

「『変装石』? 何それ?」


 新しいキーワードに首を傾げた。変装って事は、姿を変えれる石……?


「フッフッフッ、これから先は、正式に入学が決まった者にしか言えない! 入学が決まってからの、楽しみに取って置こうな!! レティは別に通わなくても構わないしな! さっ、今度こそ帰ろうか!!」

「えーー?!」


 殆ど何も聞けてないっとごねるが、ルシータに背中を押されて、渋々歩き出す。ユリウスも、また納得していない顔だ。


「ユリウス、君は後五年だ。魔術学園は貴族で魔力が高い分、実力のある者達が揃う! にも、通い初める迄には、ある程度実力をつけておくのが良いだろう。……言っている意味は、分かるな?」

「!……はいっ!!」


 何やらユリウスは、俄然やる気を見せている。ユリウスも男の子だから、負けん気が強いのかな? レティシアは、男の子らしいユリウスの、新しい一面を見れてご満悦だ。


「じゃあ私も、魔術の勉強頑張る! ユリウス兄様に負けてられないからね!」

「あ…いや……レティはそんなに、頑張らなくて良いと思うな……。僕がレティを……」(ぶつぶつ)

「兄様なんて言ったの? よく聞こえなかった」

「……僕は五年後だけど、レティはまだ先の話だから、今からそんなに頑張らなくても良いと思うよ? ……まずはマナーの勉強から、がいいんじゃないかな?」

「うぐっマッマナー……!」


 痛い所を突かれ、思わず言葉に詰まるレティシア。ルシータはニヤリと笑って、レティシアの肩に手を置いた。


「そうだなぁ! レティもそろそろマナーレッスンを、始めても良い頃かなー? なあ? レ・テ・ィ・シ・ア?」


(ひいいいいぃぃ!!)


 レティシアは乾いた小さな声で「そうですね……」と辛うじて答えた。

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