第14話 早いもので気が付けば六歳でした
あれから兄ととても仲良くなることが出来た。
兄の誕生日を皆で祝ったり、こちらの世界にはない、前世で大好きだったクリスマスなどを開催したりもした。
家族団欒を大切にしながら日々を過ごして、そしてあっという間に三年の月日が流れた。
気が付いたら六歳になっていた。……前にもこう言うことあった気がする。
「魔力測定?」
紅茶のカップを手に持ちながら、レティシアは首を傾げた。腰まである長くて柔らかい髪がフワリと揺れる。
あまりにも綺麗な髪だから切るのが勿体無いと皆から言われ、髪を切ったことが殆どない。
レティシア自身は長い髪が些か邪魔なので、大抵は髪をゴールデンポニーテールに括るようになった。
少し背も伸びて舌足らずも無くなったが、相変わらず身姿は美しいまま。
絶世の美幼女が絶世の美少女になっただけだった。
「そう。十歳になると、魔力を持って生まれた子供は必ず魔力測定を受けなければならないんだ。詳しい魔力量を測るためにね。僕ももう十歳だから受けた方がいいって義父様に言われたんだ」
向かい側のソファーに座っているユリウスは、十歳にしては長過ぎであろうスラリした脚を組みながら優雅に紅茶を飲んで答えた。
ユリウスも美しくそして格好よく成長した。
女の子と間違える程可愛らしい顔付きは、少し男の子の顔付きへと変化しつつある。
襟足で結んだ美しい金髪も肩甲骨の下辺りまで伸びていた。
(美少女が美青年へとメタモルフォーゼしていく日々を間近くで観察出来て私、毎日幸せです)
レティシアの残念な思考もまた健在だった。
「魔力測定かー。確か、『火』『水』『風』『土』後は『光』と『闇』。どの属性が得意なのかも調べるのだったよね。あっもしかして、何処かの教会とか神殿みたいな所で調べたりするの?!」
小説によく出てくる、ヒロインが光属性だと判明するテンプレな展開を思い出して、ちょっと前のめりになって訪ねた。
「レティ、よく知ってるね。普通なら魔力測定器のある近くの施設へ行くのだけど、僕は公爵の子だからね。公爵の魔力測定器を使用するから、この屋敷で執り行うそうだよ」
自分を『公爵の子』と言ってのける程、両親との絆は確固たるものになっている様だ。
レティシアは嬉しくなった。
ユリウスは公爵家の養子となってから勉強や剣の訓練など毎日頑張っている。
レティシアは常にユリウスにベッタリくっ付いて行動していたので、ユリウスがどれだけ頑張っているのかよく分かっていた。
(……それにしても我が家が魔力測定器を私物で持っているのには些か驚いたわ。流石公爵家。……十歳で魔力測定かー。どんな感じなんだろ、とても気になる)
「ね、ユリウス兄様。魔力測定している所、私も見に行っても良い?」
「勿論。準備が整い次第始めるそうだから、呼ばれたら一緒に行こう」
優しい笑顔を向けながらユリウスは応えた。
ユリウスはレティシアの願いは、殆どと言って良い程叶えてくれる。
もしレティシアが前世の記憶を持っていなかったとしたら、とても我儘な悪役令嬢となっていてもおかしくない。
レティシアはお礼を言いながらも、あり得た可能性に手の平に嫌な汗をかいた。
(……我儘になり過ぎない様に気を付けよう……)
ユリウスとお茶を楽しんでいると、部屋の扉でノックが鳴った。ユリウスが応答すると、ユリウス位の少年が「失礼します」と礼をして入ってきた。
グレーの髪色で水色の瞳に薄い眼鏡を掛けた、知的そうな美少年だ。
「ユリウス様。魔力測定の準備が整いました」
「ああ、分かった。それからデュオ、レティシアも連れて行くから」
「はい、承知しました」
「突然で申し訳ないけれど、宜しくねデュオ」
「大丈夫ですよ、レティシア様」
デュオは優しくレティシアに微笑んだ。
このデュオという少年は何とランディの息子さんなのだ。最近ユリウスの側近となった。
ランディよりしっかり者で、ランディを怒る姿はセバス爺そっくりだ。
「では行こうかレティ」
ユリウスは立ち上がると、さり気なくレティシアに手を差し伸べた。
「うん、ユリウス兄様」
手を借りて立ち上がると、その手を繋いだままユリウスの部屋を後にした。
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