第15話 フラグ回収なんです
デュオに連れられてたどり着いたのは、以前訪れた事のあるレオナルドが使う執務室だった。
扉をノックして「ユリウス様とレティシア様をお連れしました」とデュオが告げると、中からレオナルドの応答が聞こえた。
デュオが扉を開けてくれたのでユリウスと二人で中へと入った。
「やあ! 待ってたよユリウス!! それにレティも!」
レオナルドの隣に座っていた、相変わらず男装な出立ちのルシータは相変わらず美しい笑顔で迎えてくれた。
「えへへ、気になって一緒に来ちゃった」
「やれやれ、レティは好奇心旺盛だな」
レオナルドも相変わらず美丈夫なお顔でやや呆れ顔だ。
部屋を見回すと両親の他には誰も居ない。いつもレオナルドの側に控えているセバスや、案内してくれたデュオも既に居なかった。魔力測定は家族のみで執り行う様だ。
テーブルにはボーリングボールよりやや小さめ位の丸い水晶が鎮座していた。お約束なアイテムにレティシアは目を輝かせて駆け寄った。
「お父様! これが魔力測定器!? これに手を乗せれば魔力の属性や魔力量を測れるの!?」
「そうだ。貴重な物だから、転がしたり、投げたりして遊んだりしては駄目だぞ?」
「もうっお父様! 赤ん坊では無いんだから流石にそんな事しません!!」
「はは、冗談だ」
「まあ、レティならやり兼ねないと思うけどね!!」
「ちょっとお母様まで!!」
両親にとってはまだまだ子供なのだろう。しかし余りにも幼稚な子供に思われてるのは心外だ。レティシアはわざとらしく頬を膨らませた。
「怒っているレティも可愛いけど、機嫌を直して一緒に座ろう?」
ユリウスに頭を撫でられる。やはり子供扱いな気がする。まあ子供だけど。
レティシアは少し剥れながらも両親と反対側のソファーにユリウスと座った。
「では、そろそろ始めよう。ユリウス、手の平を水晶に乗せてご覧」
「はい、義父様」
怒っていたことなどさっさと忘れたレティシアは固唾を呑んで見守る。
(オラすっごくわくわくすっぞ!)
既に興奮状態のレティシアに気付く事なく、ユリウスはゆっくりと右手を水晶に近づけ手の平を乗せた。
水晶の中央が白い光を放ち出す。
その光は次第に大きくなっていき、やがて水晶全体を白い光で覆い尽くした。
「わー綺麗っ! お父様! これが兄様の魔力?!」
「そうだ。白い光の強さで魔力量を測る事が出来る。ユリウスはかなり強い魔力の持ち主だ」
「ユリウス!! 水晶を全て光らせる人間はそうそう居ないぞ!! 私やレオを除けば、他の公爵連中ぐらいだ!!」
「おお……」
(流石ユリウス兄様。ハイスペック)
「二人共、水晶の中央をよくご覧。中央に現れる光の色で、その者の一番得意な属性が分かる」
すかさずレティシアは水晶の中央を凝視する。暫くして中央の光だけが色を変えていく。その色は……。
「……水色……? でも、緑色も見える気がするけど……? お父様、これは」
現れた光は一色ではなく二色。透き通る水色と同じく透き通る黄緑に近い緑色が混ざり合う様に渦を巻きながら光っていた。
レオナルドとルシータも驚いているのが分かった。
「……これは珍しい。ユリウスは『水』と『風』の二属性を得意としている様だ」
「え、二つの属性が現れるのはそんなに珍しいの?」
「レティ! 得意な属性は、普通一つなんだ! 昔、稀に複数得意属性を持つ者もいたが、最近では聞いた事がない!! 凄いぞユリウス!!」
ユリウスはゆっくりと右手を水晶から離した。水晶の光は徐々に光を弱めていき、消滅した。ユリウスは背もたれに背中を預けて、大きく息を吐いた。
「……僕の得意な属性が、『水』と『風』の二属性もあったんだ……」
感慨深そうに呟いたユリウスを、ルシータはいつの間に回り込んだのか後ろ側から突然抱きしめた。
「……ユリウス、ルシアは水の属性を。ユーステウスは風の属性を得意としていた。……ユリウスは二人の得意属性を引き継いだんだ!!」
「……父さんと母さんの……」
ユリウスは呆然としていたが、ゆっくりと微笑んだ。
「そうなんだ。……だったら、すごく嬉しいな」
自分の手の平を見つめながら嬉しそうに笑うユリウスを見て、レティシアも釣られて微笑んだ。
「そうだ! お父様とお母様は得意な属性って何?」
「私達か? 私は……」
「レオ! 測定して見せてやれば良いじゃないか!!」
ルシータはレオナルドの手を掴むと勝手に水晶に乗せた。レオナルドはされるがままに手の平を開いた。
すると水晶はユリウスの時と同じ位に白く輝いた。中央に光り輝く光の色は透明な緑色だった。
「ご覧の通りレオの得意属性は『風』!! ちなみに中央の光の色はね、透明な色に近い程、適性が高くなるんだ!! レオの場合、適正値が高いので上位適正として『嵐』の名が与えられているんだ!!」
(上位適正の『嵐』……。流石お父様。確かに凄く透明な緑色……)
レオナルドが水晶から手を離すと、すかさずルシータ自身の手の平を乗せた。
「ついでに私の属性も発表しよう!!」
水晶は
「あれ? 光の色が変わらない?」
「フッフッフッ私の得意属性はね、ずばり『光』さ!!」
(おおおおっ! レア属性!!)
「『光』や『闇』を得意属性に持つ者は少ない。シータは『光』の魔法を操る魔法剣士。巷では『光の剣士』と言われている」
(お父様、そ、それは……! 小っ恥ずかしくないんですかお母様!! いや、すんごく似合ってるけれども!!)
「ハハハっ! その名に恥じない剣士でありたいものだよ!!」
……恥ずかしくないようで何よりです。
「みんな凄いね! 私も! 私もどんな魔力か知りたい!! ね、今、測定しちゃ……駄目?」
あざとく瞳を潤ませて僅かに首を傾げる。大抵これで皆落ちる。
「…………まあ、十歳と規定はあるが、ある程度魔力が安定していれば測定は可能だろう。しかし……」
「ハハハ! 皆測定したんだ! レティが測定したくなるのは無理もない!! 別に危険は無いのだからやらせてあげても良いのではないか? レオ?」
「…………今回だけだ。次は十歳になってからだ」
「やった! ありがとうお父様お母様!!」
(私は何属性が得意なんだろう? ……闇属性だけは嫌だな。プリティーで天使なこの
あれこれ予想しながら手の平を水晶に乗せてみる。
水晶に白い光が現れた。三人と同じように水晶全体を照らし出す。
(おお、やっぱりレティシアはサラブレッドな血筋……ん?)
突然白い光が勢いを増し、その光は水晶だけでなく部屋を照らす程までに強く光り輝いた。
「あ、あれ……?」
すると更に中央から透明な光が白い光を塗り替えるように溢れ出してきた。余りにも眩しい光に目が眩む。
(目が、目がぁぁ〜!!)
水晶にヒビが入ったのが辛うじて見えた。
「っレティ!!」
ユリウスが水晶から守る様にレティシアを抱き込んでソファーに倒れ込む。軋む水晶から手の平が離れた瞬間、水晶はガラスが割れるような破裂音と共に粉々になって砕け散った。
(……フラグ、回収しちゃいましたー……)
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