第3話

〜真実〜

「お邪魔しまーす。」

そう言ってオレは桜さんの家に入る。

「親は?」

「仕事でいつもいないよ。」

オレの問いに少し寂しそうに答える。

(じゃあ毎日一人なんだ)

「適当に座って。」

そう言われてオレは椅子に座った。

「この前うちが話してた好きな人って、誰だと思う?」

そう言いながら近づいてくる。

「だ、誰?」

椅子から立ち、後ろに少しずつ下がりながら、聞く。

「蓮くん、だよ?」

「え?な、何で?」

転校した日や華との会話を聞いたり、最近の仕草だったりでなんとなくそうなのかなとは思っていたが、まさか本当にそうだとは思わなかった。

「転校した日、遅刻してきた君を見て、ビックリしたけど、よく見たらカッコよくて一目惚れしちゃった。」

「さ、桜さん?」

「桜でいいよ。」

そう言いながらどんどんと近づいてきて、ソファに押し倒された。

その時、桜の袖から、手首が見えた。

そこには、傷跡がいっぱいあった。

「あっ」

桜もそれに気づき、手を隠す。

「うち、こうゆうのしちゃうんだよね。」

その傷跡は桜が前に自分でつけたものだった。

「ごめん、一回お風呂入ってくる。」

そう言って桜は風呂に向かっていった。

「あー嫌われちゃったかな。」

桜が風呂でつぶやいていた。

(桜はどうして、こんなやり方するんだろう)

蓮はそんなこと考えながら、辺りを見回した。

(そういえばさっき...もしかして)

「お待たせ、ごめんね待たせて。」

桜が風呂から上がってきた。

「え、なにこれ。」

桜が目にしたのは、焼きうどんだった。

「ごめんね、勝手にキッチン使って。」

蓮が作ってくれていた。

桜が驚きながらも椅子に座り、焼きうどんを食べる。

「おいしい。」

桜はそう言いながら涙を流していた。

「もしかして桜は、家で一人なのが、寂しかったんじゃない?だからこうやって家に呼んだんでしょ?」

「う、うん」

蓮にそう聞かれ、桜は正直に頷いた。

「オレでよかったら、いつでも作りにくるから、また呼んでよ。」

そう言って荷物を取り、帰ろうとする蓮。

「あ、ありがと。」

桜が顔を赤くしながら、手を掴み言う。

「告白の返事だけど、オレ、好きな人いるからごめんね。」

「そっか!」

オレの返事に笑顔で返す。

「また明日。」

そう言って蓮は、帰っていった。

「こんなに優しくされたのは、初めてだな。

そんなことされたら、本当に好きになっちゃうじゃん。」

桜は、そう言いながら焼きうどんを食べる。

「おいしい。」

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桔梗 ミミズク☆左目 @2779790391

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