第四話

 さっきからなんでずっと黙っているの。さっさと秘策とやらを教えなさいよ。

「うわっというか急に場面転換したからビックリだよ。言ってよそういうことは」

「重要な場面をひっぱるのは常套手段でしょ。そんなことにいちいちビックリしないでよ、みっともない。得意のラップも忘れちゃってさ」ツッコミ禁止じゃなかったのか。

「うるさいお前、嘘と建前、聞きたいならみせろ構え、なくせその甘え、いいから聞け座りたまえ」

 場面変換している隙にイカフライはマイクを手にして準備していた。「いや、あわてて急にラップはじめてんじゃん」マイクパフォーマンスは迫力に拍車をかけた。自らボイスパーカッションしている。

「ヨウ。ヒューマンビートボックス。イエ」

 聞くも何もみんな口を開けたまま放心状態になっている。

「いいかげん全日本ラップ協会からクレームがくるんじゃないか。ラッパーにいらぬ誤解を招くぞ」

 イカフライはマイクを置いた。

「その議長持ってるコンプレックス、それはエビフライ、この法案通したらいくぜ国政、半端ない志、それは幼少から抱えた痛み」

「マイク置いたんなら普通にしゃべろうや」

 冷め切ったインスタントコーヒーを一気に飲み込むとエビチリは尋ねた。

「で、秘策ってなに」

 え。だから秘策。えええ。だから痛みとかコンプレックスとかわかったからそれで秘策ってなに。え、だからこれが秘策。

 エビータはもうソシャゲをやりはじめている。最近は通信協力型ランクマッチゲームをやっているのでゲームしながら暴言を普通に大声で叫んでいる。あまりにムカつくとゲームを録画してネットに晒すという熱のいれようだ。ステーキはさっきまでおにぎりを食べていたが今はもう寝ている。カニコはネイルをしている。タロウは動かない。この話しているのエビチリとイカフライだけなの。そんなことってある。イカフライはメンバーじゃないんだよ。話も全然みえてこない混沌状態だけど。

「議長は甲殻類アレルギーだ。だからエビフライを規制する。議長は幼少よりエビが食べられないことでいじめられていた。議長が子供の頃当時はまだアレルギーに理解がなかった。アレルギーは秘匿問題だったのだ」イカフライは新聞の切り込み記事を机の上に置いた。

 だからなに。え。だからそれで。え、だからこれがそれ。それってなに。まさか。え。これで話終わりなの。は。

「そんなことはもう調査済みだ。議会でエビアレルギーが上がってアレルギーが認められるような料理はだめだろってことでこの規制問題があがったんだよ。え。君なにを取材してきたの」

 するとイカフライは腕を胸の前で組んで大笑いをした。エビチリに近寄り背中を強く三度叩くとラジカセを担いでボイパしながら部屋を退室していった。

「なんなんだ、アイツは」

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