第二話

 朝から重低音が鳴り響く。なんなんだ。

「ヘイヨウ。社会環境破壊環境、社会封鎖し被害風評、被害妄想、それはお前あるのか根性、出して見せろやその激情過剰ただいま参上。イエ」

大きなラジカセを肩に担いだ大男がガムを噛みながら軽快なリズムで体を躍らせている。

「誰だコイツは。つまみ出せ」

 エビチリは顔も向けようともせずに言うとエビータはちょちょちょと制した。

「リーダー、彼こそ先日話した新聞記者ですよ」

 新聞記者は口笛を吹く。

「ピューイ。オレはイカしたラッパー、イカフライだ。新聞取材にやってきたぜブラザー。よろしく頼むぜ、話は聞いてるぜそこのソルジャー。イエ」

「誰だコイツは。つまみ出せ」

 エビチリはスマホを見ながら言った。

「ピューイ。お前今、オレをみくびった態度みせた、オレはれっきとした新聞記者、取材し世論訴える媒体、それは絶対、首都高はいつも渋滞、それは御免被りたい、めでたいの反対。イエ」

「君、なんでそんな昔のインディアンみたいなしゃべり方しているの」

 イカフライは肩を大げさにすくめた

「これはラップリリックのライムとフロウだ。そんなのもわからないで世の中を生きているのかいブラザー」

「誰だコイツは。はやくつまみ出せ」

「だあーっだからなんで同じことばかり言ってオレを追い出そうとするんだよ。聞いているのかよ、オレは新聞記者なんだって」

「なんだ、普通にしゃべれるじゃん」

 イカフライは肩をすくめる。

「オレとしたことが曲げたポリシー、プライドリテラシー、それは直結する即死、まばゆい愛はとても愛おしい。イエ」

「君はダジャレを言わないと死んでしまう病気持ちなわけ」

「だからこれはイカしたラッパーのフロウなんだよ。わかってくれよブラザー」

 イカフライは机を拳で叩く。

「どうもナナナナーの人にしか見えないんだけど」

 イカフライはエビチリの胸ぐらを掴んだ。

「オイいくらブラザーでもその名前は言うんじゃねえ、わかったか」

 エビチリは振り払うと「名前は別に言っていないだろ。というかソレ君の地雷なの」

 エビータが中に割って入る。

「もうそこまで。ツッコミ合戦になっちゃうと話が進まなくなるから。リーダーもそれ以上もう笑わない。ホラ、イカフライが肩を震わせて怒りを抑えているでしょ」

「でもさっきからこの人、言え言えって言うからほしがり屋さんなのかなと思うじゃん」

「イエっていうのはイエイってことだよ。最初なんのこと言っているかと思ったじゃないか。イエっていうのは言ってってことじゃないから。あとハウスの家でもないからな。あとラッパーってチェケラッチョとか言わないからな。はじめが肝心だから念を入れておくけどあれ誤解だからな、ブラザー」

 エビチリはあくびをしている。

「さっきからなに言っているのこの人」

「だからそんな態度とっていると話がいっこうに進まないでしょ。もうイカフライは顔真っ赤にして体中震えているじゃないの」

「それなんかの病気じゃないの、ウケピ」カニコがネイルをしながら笑っている。

 エビチリはスマホを机の上に置きパソコンを立ち上げた。

「確かに。我々の目的はうさんくさいラッパーをからかうことではない。エビフライ規制を否決させることだ」

 座ったと思ったらすぐイカフライは飛び上がった。パイプ椅子が思いっきり後ろに跳ね飛ばされる。なんだこれはロケット噴射台かよ。

「うさんくさいとはなんだ。オレのラップは魂の叫びだ」イカフライは拳を机に叩きつける。まったく騒々しい人である。

 エビータはイカフライの両肩を掴んで座らせた。「だからツッコミはやめろっての」

「そうだ、まずは議題を話し合おう」

 イカフライはエビフライ規制を否決させるための議論を聞いていた。が、そのうち鼻で笑うことが多くなってきた。

「お前、さっきからなにがおかしい」

「そんな議論じゃ不毛。否決は不可能。世論に訴えられるかなんてノンノンノー」

(またコイツはなんでこしゃくな言い回しをいちいちしてくるんだ。しかもラッパーとは言いながら微妙にゴロの悪い言い回しをしてくるんだよな。センスが感じられない)

「新聞記者のオレをなめるな秘策はある。頼れ俺、カフェオレ、避けるぜ手遅れ共倒れ、だからもっと俺に寄れ、ソレソレ」

 なにい

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