第11話 勇者パーティと戦闘

「ローラ!」


 俺は拳の勇者を呼ぶとその手を繋いだ。


「きゃ♡ リッタくん♡」

「「「むぅ」」」


 他の3人がむくれ顔になるのを無視して俺は彼女を砲丸投げの容量で思いっきりぶん回す。


「きゃーーー♫ なんだか恋人みたいだよーーー♫」

「ほらっ! 行ってこい!!」


 思いっきりぶん投げてやると「きゃああああああ」と楽しそうな声を上げるローラの脚から炎が沸き起こる。


『鳳凰煉獄脚』


 拳の勇者様の強めのスキル。拳の勇者なのに脚技なのは大目に見てあげて。


「あちょー!!」

「ローラさーん! ドラゴンに炎は効きませんよー!」


 ルナが技を繰り出している最中に言うと、遠くの方から「あ! そっか」と間抜けな声が聞こえてきた。


 しかし。


『フュオオオオオオ!』


 ドゴオオオオオ!


 地響きが鳴る。


 ドラゴンが倒れたことによる地響き。


 ローラの脚技がドラゴンにぶつかると、ドラゴンは態勢を崩してその場に倒れ込んだ。


「すご……」


 炎は効かないから、シンプルなローラの脚の威力なのだろう。


 なんちゅう威力だよ。


「まったく、脳筋勇者に筋書とか理論とかってのはないのかしら。あれじゃゴリ押し勇者を名乗った方が性に合ってるわね」


 呆れた声を出すと、エリスはその場から上昇していく。


 ある程度の高さまで行くと、ドラゴン目掛けて左手を突き出した。


『光よ……』


 エリスが呟くと、無数の光の刃が彼女の周りに現れる。


 すると、一斉にその刃がドラゴン目掛けて放たれた。


『グオオオオオオ!』


 倒れているドラゴンに突き刺さると、断末魔の叫びをあげて身動きがとれなくなるドラゴン。


「フレデリカ! これで確実に当てれるわ。最高火力をぶつけてやりなさい」

「り! ドラゴン相手ならこれでいく!」


 上空からのエリスの声に簡単に答えると、先程同様にフレデリカは両手で杖を持ち、水平に構える。


 すると、先程とはけた違いの魔力の風圧が起こると。


「『ウルティム・トニトルス』」


 その領域の魔法を唱えるのか……。


 彼女の最も得意とする魔法ではないが、その次にお得意の魔法だ。


 彼女が唱えたのは神の雷に匹敵する、雷の頂点に立つ魔法。


 この世の万物、人、魔物、動物、植物、全て雷には勝てない。たった1人の少女を除いて。


 その魔法を受けた者は跡形も残らない。


 弱点としては当たりにくいのが欠点だが、今、エリスが動きを封じているので確実に当たる。


 一筋の閃光がドラゴン目掛けて落ちたかと思うと。


 ドゴオオオオオン!!!


 壮大な音が遅れてやってくる。


 これでドラゴンは丸焦げ。ならまだマシ。灰にもなって……。


『ゴオオオオオオ!』

「ええええええ!?」


 神の雷を受けてピンピンしてる!?


 なんでええええええ!?


 しかも、エリスの光の刃をすべて破壊してるし!!


「どうやらあのドラゴン。雷回復持ち」

「うそん!? そんな魔物いるの!?」

「魔物では初見」


 ですよねー。


 そんな魔物見たことない。


 炎なり氷なら聞いたことがあるが、この世のほとんどの生物は雷に弱いはずだろ! 俺の語りを返してくれよ!


 しかも雷回復なんてなんのチートを発動させているんだよ。あのドラゴン風情めっ!


 なんなのあのドラゴン。もしかして神の使いなの?


「おおい! ウルティム級を使うなら言えよおお! あんなんくらったら死ぬだろー!」


 流石は脳筋拳の勇者様。俊敏な動きで避けたのだろう。ローラが遠くで怒っている。


『ゴオオオオオオ!』


 なんて悠長にしている場合ではない。


 さっき受けた雷を跳ね返すかのように、漆黒のドラゴンは口から雷を吐いた。


 あいつの能力を盗んだ時点では雷を吐くなんてことはできなかったから、あいつはフレデリカの魔法を受けて急成長を果たしたとしか言いようがない。


 俺の盗んだ能力は据え置き。こういう戦闘で急成長を果たすタイプも俺の能力の弱点である。


「はあああああ!」


 気合いの言葉と共にルナが剣で斬った。


 バチバチと鳴り響く電撃は後方の壁にぶち当たると、ゴオオオオオオオ! と物凄い音を鳴らして消えていった。


「流石は人類で唯一の雷耐性を持つの剣の勇者様だ」

「生意気ですね。この世界で私以外に雷に強い者がいるのは……。万死に値します」


 彼女は剣をドラゴンに向けて睨みつけた。


「ルナ」


 俺は彼女の名前を呼ぶと、睨むのをやめてこちらを向いてくれる。


 ドラゴンを見る目から恋人を見るような目に変わる。どうやら、俺がしたいことを理解してくれたのだろう。


 その優しい碧眼を見つめた。


『アッパーコンパチブル』


 俺はルナの能力を盗んだ。


 これがタイマンではない、パーティでの戦い方。


 タイマンでは確実に負けていたであろう俺の能力も、仲間の能力を盗んで共に戦うことができる。


 地味だし、弱点も多々ある能力。けれども、パーティでの戦いは、俺に無限の可能性をもたらしてくれる。


「リッタ様! 行きますよ!」

「おう!」


 共にドラゴンに向かって走り出す。


 走っている間に俺は手からルナの聖剣を生成する。


「はああああああ!」


 ルナはドラゴン目掛けて思いっきり下から上に聖剣を振った。


『ドオオオ!』


 ドラゴンは防御をしたが、ルナの聖剣の力に負けて防御が解けた。


「うおおおおお」

『セイクリッド・エクスキューテ』


 ルナのスキルを使用して、聖剣を思いっきりドラゴンの首元目掛けて振りぬいた。


『ガゴッ!』


 短い断末魔の声を放つと、ドラゴンの首は地面に落ちたのであった。

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