第7話 勇者パーティと古代文字
勇者パーティの仲は良いのか悪いのか。
道中、喧嘩をしながらの移動。
喧嘩と言っても、戦争に匹敵するほどの規模の喧嘩だ。
上級魔法、上級スキルのぶつかり合い。
世界へ、魔王軍へレベルの違いを見せつけるような喧嘩。
半端ねぇ喧嘩。続いてたら世界が滅ぶのではないだろうかと思える喧嘩。
その副作用として、道中の魔物が全て消滅したのは言うまでもないだろう。
末恐ろしいな。勇者パーティ。
「こ、ここか……?」
俺は特になにもしていないのだが、なんかどっと疲れた。
普通に歩けばそこまで時間のかからないダンジョンまでの道のりも、いつの間にか太陽は南から西に向かっている最中だった。
「ここです。ここです」
ルナが答えてくれるので、今回攻略するダンジョンの入り口を見てみる。
岩石に自然と空洞ができたのが伺える。その空洞に蓋をするみたいに巨大な門が設置されてある。
洞窟に門。
洞窟は自然とできたものなのか、誰かが造ったものなのかは不明だ。
だが、門は誰かが意図的に設置したものだとわかる代物である。
「ここの古代文字が読めないから中に入れないんだよね」
縛りの魔法が解けたローラが両手を挙げて笑いながら言った。
ちなみに、縛りの魔法を解除したのはエリスらしい。
だから、先程後ろにいなかったみたいだ。
「リッタ……。読める?」
フレデリカが俺を頼りにしている目で見つめくる。
「読んでみるよ」
彼女の期待に応えるためにも、洞窟の門に書かれている古代文字を見てみる。
確かに、この世界の文字からすると、幼い子供が適当に描いた絵の落書きに見えるのかもしれないな。
そして、古代文字と言うだけあって相当昔に書かれたのだろう。
文章が掠れて消えている個所が見受けられる。
「リッタくん。読めそう?」
「しっ。ローラ。今、リッタが集中してるから。古代文字読むのって集中力使うのよ」
「あ、ごめん」
エリスが注意するとローラは慌てて口をおさえて素直に反省の意を示した。
「そんなに気にしなくてもいいよ。もう読んだし」
素直に反省するローラに言ってあげる。
長くない文章だったのですぐに読み終えた。
「なんて書いてあったの?」
ローラの質問はみんなの質問だったのだろう。
興味津々で俺を見てくれる。
門に書かれた古代文字を見ながら音読する。
「『我の宝──汝の──を示せ。試練は──人の盗賊? イフタ──……。ペン? ……海? ……。ごま』って書いてある。ところどころ読めないところがあるけど、大体こんな感じかな」
「すごい、すごい。リッタくん。古代文字も読めるなんて凄すぎ。好き」
心底感心するローラは拍手をしながら言ってくれる。
「ど、ども」
最後にさらっと好きとか言われて照れてしまうが、他の3人はローラのことなど気にせずに考え込んでいる。
「文章からはこの洞窟を作った、もしくは門だけを作った者の宝が眠っているみたいですね」
「試練? 盗賊?」
フレデリカが首を傾げるとエリスが考えを言う。
「中に盗賊がいるって言うのは言葉のあやでしょうね。封印魔法の中に盗賊がいるなんてありえないわ」
「エリスさんはなんだと思いますか?」
「宝と試練から、宝を守る守護者的な意味合いじゃないかしら」
「同感。フレデリカもエリスと同じ考え」
「中は危険ってことですね」
「まぁ、でも、あたし達ならどんな敵でも余裕でしょ」
簡単に言ってのけるローラの言葉に3人はニカッと笑った。
「そうですね。ローラさんの言う通り」
「フレデリカ達は」
「世界が認めた最強の勇者パーティなんだから」
そう言って円陣を組んで手を重ね合い。
「勇者パーティ……」
「「「「「最強!!!!! オー!!!!」」」」
勇者パーティめっちゃ仲いいな。青春かよ。
「さ! みんな行こうよ!」
テンションあげあげの勇者パーティ拳の勇者ローラがいつも通り先陣をきって歩み出す。
門の前に立って、首を捻った。
「そういえばどうやってこの門開けるの?」
「「「あー」」」
どうやらこの勇者パーティご一行は中で暴れることしか考えてなかったみたいだ。
「リッタ……。開け方わかる?」
多分だが、これは昔に父親が聞かせてくれた、おとぎ話に出てくるセリフ。
それをモチーフにした封印魔法が施されているのだろう。
そうだと仮定すると、なぜペンやら海と書かれているのかはわからないが……。
イフタの次に消えている古代文字は『イフタフ』と予想できる。
これは古代文字で『開く』という意味だったはず。
そして『ごま』というよくわからない意味の古代文字から導き出される答えは1つ。
「開けごま」
1言放つと、ゴゴゴゴゴゴと門が開いていく。
「リッタ様。今のは?」
「むかーしに読んだおとぎ話にでてくる……。んん……呪文? みたいなものさ」
「博識なリッタ様も素敵です」
「ど、ども」
すぐそうやって褒めてくれるのっては、悪い気はしない。照れちゃう。
しかしだ……。
これで開いたということは、これを作ったのはおとぎ話の知識のある人間……。
このおとぎ話は有名な話ではないはず。俺も父親から聞いたマイナーな話だ。
それをモチーフに封印魔法を使用した人はもしかしたら……。
「みんな。俺の役目は終わったけど、一緒にダンジョン調査に付いて行っても良いかな?」
俺は勇者パーティではない。この門の古代文字を読めば帰ろうと思ったが『開けごま』で開くこの洞窟を調べたいと思った。
「もちろんですよ。リッタ様は私がお守りします」
「うん。リッタくんと一緒だったら百人力だよ」
「リッタはフレデリカが守る」
「ふん。せいぜい足引っ張るんじゃないわよ。怖くなったら引っ張るのは腕にしなさい」
四者四様の反応は肯定と捉えて差し支えなさそうだ。
勇者パーティは快く、俺を仲間に入れてくれた。
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