2話目:終わりの始まり
あるゲームのイベントの少し前・・・。
「あー、充実感と疲労感がハンパねー」
今日はやたらとテンションが高い。
なぜならボランティアとはいえ大きなお祓いに成功した帰り道だからだ。
(ホントならこっちの道で食っていきたい!心温まる依頼者との出会いもあるし。)
刹那、先生との約束が頭をよぎる。
・・・やっぱだめだよな。
斜光が差す暑い夕方、都市部の下道を乗りなれた軽自動車で走りながら一人つぶやく。
道路はお盆のUターンラッシュ。高速道路が混んでいるのは当たり前なのだがまさか下道もこうなっているとは・・・。
片道200kmの道を少しウンザリしながら進んでいく。
こんなことなら高速道路で真っ直ぐ帰るんだった。
しかし後悔先に立たず。
あんまり無駄遣いできないしなぁ・・・。
翔太はブラック企業に勤め恋人の明日香を養う傍らボランティアでお祓いをしている。
かつて明日香はOLをしていたのだが・・・。
結婚を前提にと俺が高校1年生の頃から付き合っていたが、俺の高校卒業と同時に社会人であり宗教家だった明日香は仕事をやめた。
前々から体が弱く宗教に専念したいから専業主婦になりたいと言っていた彼女の意見を尊重し、就職とともに同棲。
いつの間にか病気が増えた明日香に対して、心配もあり同棲当初は
いつ結婚するのだろうか?家事も運動なんだよ?と時々は言ってみたものの彼女は・・・。
「 はぁ?アンタ何様のつもり?アタシが決めたこと、タイミングってのがあるの。それに文句があるなら別れてもいいのよ?」
「それに、アンタまだ功徳が足りないし。財務総額100万円、約束でしょ?」
といつものように煙に巻くのが関の山だった。
わかってはいる。別れてしまえばラクになる。しかし・・・
俺のような身の上の人間が他の人と上手くやれる気はしないし・・・。
「妥協は・・・必要だよな?」
そんなことを考えていると・・・。
ピロン♪
・・・嫌な予感が走りすぐ近くのコンビニに入る。
「牛丼買ってきて」
たった一言だけ。
・・・明日香からラインだ。
僕はただ利用され何も満たされない関係をズルズルと続けていた。
家にいても何もせず兼業主婦のように俺をこき使う彼女。
付き合って3年になるがどんどんと体型が崩れていく・・・。
気付けば恋の魔法も解けたのか(あるいは最初からなかったかもしれないが。)
ここ2年半、昼間のデートも夜のお楽しみもない。
事あるごとに言い訳を並べては家事をしない彼女。
何かを頼んだり、いわゆる「お誘い」をしようものならいつもの口癖が飛んでくる。
そんな彼女の口癖は2つ。
「〜してくれないなら別れる。」
「でもお、アンタみたいな変わり種、他の女とは絶対に付き合ったり結婚なんか出来ないから私にひれ伏しなさい」
あぁ、退屈だ。面倒だ。しかし一人にされてもなぁと葛藤する。
家に帰った直後から始まるブラックな生活に辟雍しながら
最近楽しみのオンラインゲームをするために家路を急ぐのだった。
こんな面倒な拷問(買い物)さっさと切り上げてイベント(ゲーム)に参加したい!
某牛丼屋でキングサイズのチーズ牛丼を手に思う。
(これ女が喰う量じゃなくね・・・?)
「ま、今日のイベントは早めにベッドに入って一人で楽しむか!」
そうこうしているうちに駐車場に着く。
車を停めた直後、どこかで見ていたかのようにスマホがなる。
「もしもし?」
「翔太?もうお腹へって動けない。早く帰ってきて?」
「あとお風呂とトイレ掃除と洗濯と買い物、ゴミまとめもまだなんだからさ。」
「仏壇のお水も変えてないし。あ、お線香も切れてるから買ってきてね!」
「もうお金ないんだけど・・・。」
「もうお小遣い使い切ったの?信じらんない!」
「仕方ないからお金貸してあげる。家に帰って来たらすぐ買い物行ってね。」
「誰のメシ買ってき・・・」
言い切る前に電話を切る明日香。
(出たよ・・・明日香のマウント取り。第一小遣い、お前の食料代になってんだけど。)
財布が薄ペラいのはもう慣れたがそれでも切なくなる。
夏なのにブリザードが吹いているようだ。
(切り替えよう。今夜は楽しいオンラインイベントがあるんだ)
・・・あのイベントがすべての始まりだった。
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