1話目:なにかの予感

「いやー、面白かった!」


ベッドに寝転がりながら今日のイベントを回想する。




それに・・・


なんだろう、こんな感覚?


うまく言葉にできない。思考が混乱する。


明日からまた拷問の日々だというのに眠れる気がしない。






「くっそ!眠れねぇ。」






いつもなら気絶するように眠れるのに今日に限って何故か眠れない。






もしかしたら・・・あのことか?






今夜のイベントを回想してみる。








「今日は改名祭りです!ルールは一つ。名前に尻をつけましょう。」


「つけた人は闘技場へ。1位になった報酬をみんなで分かち合いましょう!」






三国志をモチーフにしたこのオンラインゲーム。


俺はとある声優さんが演じるキャラクターを手にするためだけにこのゲームを始めた。




なんとも不純な動機だがこれもまた楽しみ方の一つ。


と思いながらテンション上がってた俺は課金アイテムを改名につぎ込む。


後先なんて考えずノリだけでやってしまった。








・・・一位になることは出来なかったが楽しめた。


少しの悔しさを胸にみんなと雑談をする。




イベント、お疲れ様〜!


お盆休みあるのー?


明日から出勤ー。


休みがあるだけまだマシー。


ずっと日曜日だから関係ないっす。


何の仕事してるの〜?






変わらない、変わることなんてないと思っていた日常。


拷問のような日々もこんなやり取りで少し救われる。


それで良かったのかもしれない・・・なのにその時










あるアバターから目が離せなくなった。


皆性別もわからないようになっているこのゲーム内、性別なんて言わなければわからない。


戦いに性別なんて関係ないしな。


そんな環境にあるからこそ誰にでも気軽に絡みに行ける。


匿名性の高いこの空間の中なのにも関わらず


特に変わったアバターでもないのに、気になって仕方なかった。








「名前、変えないんですか?」


気づくと俺はその人に話しかけていた。


その人は別に孤立していたわけでもないのに何故かその人にばかり目がいく。


話しかけてしまう。






「えっと、こうですか・・・?」


その人は恥ずかしがりなのだろうか?控えめな返答をしてきた。


その時舞い上がった。返信が来た!


他の人と絡んでいるときとは明らかに違う感覚。


言葉では言い表せない、不思議な感覚。






気づけば時間を忘れてその人と絡んでいた。








・・・時計を見ると出勤まであと4時間。




・・・流石に寝るか。






これだ。たぶんあの人との絡みが楽しすぎたんや。


だから眠れないんだ・・・クッソ。






満たされない性欲をマイフレンド(右手)と発散してベッドの中で静かに落ちた。

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