第24話⑥
ふいに、裏口が開く音がした。
振り向くと、背の低い黒い羽の男がいた。
「おっ、金あるじゃん」
そう言いながら、外を見て「こっちだぞ」と大声を出す。
ぞろぞろと、施設の前にいた悪魔たちがやってきた。
先頭きってやってきたのは、体の大きな糸目の男だ。
「悪いな、姉ちゃんたち。あの兄ちゃん、俺たちの相手が疲れたみたいで寝ちゃったんだよ」
「入口は鍵がかかっているから、裏に来たけど、最初からこっちに来ればよかったな」
悪魔たちの言葉にゾッとする。
リックは大丈夫だろうか。
近所の人が助けてくれればいいけれど。
とはいえ、こっちはこっちで大ピンチだ。
三対五。
悔しいけれど、勝てそうにない。
「お金を払えばいいんでしょう。いくらですか?」
ミアは彼らに聞く。
すると、糸目の男がミアをじっと見た。彼がリーダーか。
「そこにある金、全部だ」
やっぱり。
ミアは、袋をリーダーに渡した。しかし、次の瞬間。ミアはその男に腕を取られた。
「あと、おまえも貰おう」
「ちょっと、離してよ」
「可愛い顔してるじゃん。すげー好み」
「可愛くなんかありません。全然ダメな顔です」
ミアはここぞとばかりに小顔体操で培った変顔をしてみせた。
男は一瞬呆気にとられた顔になる。
よし、成功? と思ったが。
「おまえ、おもしれー」と、かえって相手を喜ばせてしまった。
「ほら、暴れるなって」
男がミアの鼻になにかを当てた。
変な匂いだ。
体から力が抜けていく。
腕や足がだらんとなり、コントロールが効かない。
これ、死んじゃうやつ?
「……二人には手を出さないでよ……」
イレインとエディに何かあったら、みんなが悲しむ。
そのてん、ミアは外れ者だ。
イレインやエディの口ぶりでは、二人だけでなくミアを悪く思う人は多いのだろう。
ミア自身も、八歳の時に自分から命を手放した。
ジャスティンが助けなければ、この場にさえいなかった。
そう思うと、八歳から二十四歳までの十六年間まるまる得をしたではないか。
それに、ミアが死んでも、両親は大丈夫だ。
彼らには施設の子どもたちがいる。
ロザリンは、悲しむかもな。
そして、ジャスティン。
ミアが死んだら、また両親が彼への返済をすることになる。
両親はミアのようには払えないだろう。
ミアの両親にお金を貸すなんて、ジャスティンは何を考えていたのだろう。
貸金業者としての彼と再会したとき、ミアは驚いた。
ほんと、あれは、いきなりだった。
そこで、ミアの意識は途切れた。
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