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「ワタシの脳をHEAVENの10万人の無意識に接続してみたのだよ。彼らに神を与えるために。すると、未来を見る目を得た。彼らの神になることは、正しい流れだったわけだ」

「ずいぶん横暴な神サマをあてがわれたものだ。気の毒に」シュウは口元に笑みを浮かべる。「神サマ気取りも結構だが、そんな発言をしていいのか? 聞かれたらマズいヤツが居るんじゃないのか?」

「なに」

「アンタの後ろに居るヤツさ。世界に大きな動きがある時、必ずその裏に居る男」

「……」

「どうした、言葉が止まったぜ。リウミィン──闇社会の帝王だ。HEAVENプロジェクトに、アイツも裏で絡んでいるんだろ。アンタは、所詮、リウの番頭じゃないのか?」

 司教の顔から熱が失せる。リウの名は、誰の表情だろうと凍らせる。

リウは自分の上に居る者など許さない。たとえ神サマであろうとな」

「つまらんことを言うな」自分に言い聞かせるように言う。「じきには逆転する。あと少しのことだ──」

「あと少しで、リウの上に行けるのかい?」

 司教は気を取り直すように大きく息をする。「ワタシが繋がった10万人の無意識界は、広大な形而上宇宙だったよ。それは、実際の形而下宇宙と多少のズレを生じて重なっていた。そのズレが未来だ。この、第三の目には少し先の未来が見えるのだ」白髪の混じる長髪をかき上げた。

 横一文字の切れ込みが額中央にある。内圧で盛り上がり、切れ込みは開きかけている。

 司教は、いとおし気に切れ込みを撫でた。「三つめの眼球ができつつあるのだよ。これは真理を見る目だ」

「落ちこぼれブーステッドの次はサイボーグ、その次はバケモンになるのか」

 挑発に応じず、ゆとりの表情を浮かべる。「ワタシは神になるのだよ、新世界の。いずれ、遥か先の未来まで見通せるようになる。そのとき神は完成するだろう。リウごとき問題ではない」

「ってことは、まだ未完成なわけだ。現在いまリウにかなわない。開眼しきっていない目には、絶対的な信頼をおけない。そうだろ?」

「ふん。未来の視界はまだ鮮明とは言えんが、僅か1/100程度の誤差に過ぎん」

 誤差が1/100しかないという事実を、絶望を与えてやろうと、司教は口にした。だが、うずくまるKO寸前の男は、絶望ではなく希望と取った。

「へえ、いいことを聞いた。100の内1回、勝ちの目があるのか。希望がもてるじゃないか」

 司教はいきなり正拳突きを放つ。よけたはずの胸に命中した。喉元に地獄突きが、脳天にネリチャギがきまる。すべての攻撃が、標的をロックオンした追尾ミサイルのように軌道を変え、回避した先へ正確に着弾する。こちらのカウンターはかすりもしない。最後に顔面を蹴られダウンした。鼻血が生ぬるく伝った。

「これでも希望がもてるか? 名案は浮かんだか? 時間かせぎはもう終わりだ」司教は歯を剥く。

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