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「神は常にで人を導く。ブラックホール出現に時期を合わせるように、ナノマシン・テクノロジーが飛躍的な進展を見せた。偶然だと思うか? 必然だよ。ECHIGOYAの科学部門が、ヒト/ナノマシン間の画期的な情報伝達技術を開発した」

 開発したのは日本の中小企業だ。ECHIGOYAにその技術を横取りされ、会社は潰された。この場で訂正を入れる事ではないが。

「──そして、ヒト/ナノマシン融合体であるブーステッドマン、オマエのようなが現れたのだ」

「まわりくどい」

「進化なのだよ。人がブーステッドになるのはだ。次世代量子ナノマシンも創出されつつある。ブーステッドからさらに進化した量子ブーステッドマン。それこそが選ばれし者だ。ブラックホールのむこう、事象の地平線を超えた先へ行けるのだ」

「壮大な夢物語じゃないか」

「オマエの人格をHEAVEN に招待しよう。才藤が使うはずだった区画メモリが空いている。対価はその躰だ。空になったオマエの脳に、ワタシの人格を移植する。ワタシはオマエになり、オマエはHEAVEN で幸せになる。どうだ、win-winだろう」

他人ひとの躰でブーステッドになるつもりか」

「ブーステッドの基礎体ベースがあれば、次世代量子バージョンにアップデート可能だ。ワタシはリスクを負って新世界へ行く。選ばれし者だけの世界だ。オマエは安全に、HEAVENごと宇宙船はこぶねで逃げればいい」

 ふふ。シュウは嗤う。こらえきれなくなった嗤いは大きくなり、ドーム内に響きわたった。

「何がおかしい?」司教の目が翳る。

「選ばれし者どころか、アンタ、落ちこぼれじゃないか。不適合者なのに無理してブーステッド処置を受けた。そうだろ? 同調率が問題外に低くて、導入したナノマシンが不協和音を鳴らしてる。耳を澄ませば聞こえるよ。オレの中に居るナノが共振するから」

 司教の顔が余裕を失い、仮面のようにこわばる。

「同調率がBクラス以上ならナノ共振は消せる。E、いや、クラス分け以下のアンタは、カラダがブサイクにわめいている。ボクは出来損ないだよ、って」

 司教は蒼ざめている。崇められさえすれ、侮辱を受けたことなどないのだろう。

 本気で怒ると蒼くなるんだな──シュウは妙な事に感心した。

「不適合者だという劣等感をバネに、アンタはここまでのぼり詰めた。マイナスの差異がダイナミズムを生んだわけだ。なるほど、差分世界論か」

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