心を空にして

一人で電車に揺られ

窓の外を眺めている


春の陽気に誘われて

一人で出かけてみる


でも一人で桜を見ても

つまらなくて


それは二人で見た桜を

知っているから


それは二人で見た桜を

知ってしまったから


桜ごしに見える青い空

どこまでも続く

限りなく透明なブルー


なぜこんなに

切なくなるんだろう


澄みきった空

そんなにきれいじゃなくても

重ねてしまうのかな

夢も、願いも

何にもない

ぼくの心に


でも本当はわかっている

空には何もないわけじゃないって


その存在は

あまりにも大きすぎて

あまりにも眩しすぎて

目を背けているだけだって


だって

目で見えなくても

耳で聞こえなくても

さっきから

こんなに暖かいから


だから早く夕暮れになれと

待ち遠しくなるのです


そのときだけは

あなたを見ることができるから


そして何もなかった空が

あなた色に染まっていくから


目に映る世界の

そのすべてが

あなたの色だけに


そして帷が降りれば

一人で夜空を眺めている


でも一人で月を見ても

さみしくて


それは二人で見た

月を思い出すから


それは二人で見た

月を思い出してしまうから


夜空に煌めく星の輝き

あなたが去って

はじめて気づけた

それは夢の瞬きか

それとも願いか


その光の点と点とを結んで

夜空に線を引き

線と線とを結んで

面を描き

面と面とを結んで

箱を作ろう


ぼくの心箱を


そして夜空に浮かべて

ごみ箱のごみを捨てるように

一度空っぽにしてみたら


やっぱり残るのは

最後は希望なのかな


あの有名な箱のように



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