この事件、未解決では、始まらない

阿滝三四郎

この事件、未解決では、始まらない

それは『出会いは雑踏の中で』から2週間に起きた出来事だった





雑踏の中、出会った二人は

あの日、映画を観て、食事をして

「またね」と言って

別れたのだった






僕は親友に、その日の出来事を、電話で報告した



親友からは

「GETしたか?いい子だっただろ」

「俺に彼女がいなかったら、告白していたぞ」

と、間髪入れずに言われた



「うん。すごくいい子だったよ。可愛らしいとも、おもった」

「で、どうしたんだ。告白したのか?つき合ってくださいって、言ったか」

「いや、まだなんだよ」


「俺が取るぞ」

「お前、彼女いるだろって、それに彼女の友人だろ。チクられるぞ」

「いいんだよ、お前が嫌なら、別れてでも、つき合いたいかもな」



「何が、気に入らないんだよ」

「何も気に入らないんじゃ、ないんだよ」

「じゃー、なんだよ」


「僕でいいのかなって、おもってさ」

「つき合ってもいないんだろ。告白もしていないで、何を言っているんだよ」

「・・・」

「考えすぎだろ。つき合ってから考えろよ」





「そういえば、いつ最初のデートしたんだ?」

「うん?先週の日曜日」

「あれから、話をしたか?」

「いや」

「あのさ~、何日経っているんだよ。一週間以上音沙汰なしかよ。つき合うも何も、続きがないだろ、電話一本していないのか」



「う、うん。そうなんだよ」

「このままじゃ、何もなく終わるぞ。それでいいのか?」

「・・・」

「俺の彼女から連絡があってさ、あれ以来電話もくれないって、伝言があったんだよ」

「あっ」

「あっ、じゃないだろ。次のデートの誘いくらいしろよ。俺の彼女には言っておくよ、また連絡いくから、待っていてくれって伝えるから、必ず電話しろよ」


と、言われ、電話は切られた




「ごめん・・・ありがと」


と、つぶやいた








次の日

僕は電話をした

女の子の優しさからなのか、何もなかったように話が弾み

今週末の日曜日に

また、デートをする約束をした






初めて出会った場所と同じく待ち合わせは、新宿駅東口駅前広場の階段の上になった


デートプランは、「考えておいてくださいね。楽しみにしています」という話になって、色々な雑誌を見て研究した

まったく、女の子の好みが解からず、どこに行っていいのか、どうしたらいいのか

悩みに悩んで、大きな公園でゆったりするだけにした






新宿駅から地下鉄丸ノ内線に乗って、降りた駅は「新宿御苑前駅」



この駅前に、おいしいと評判のサンドウィッチ屋さんがあるのを雑誌で調べて

そこで、サンドウィッチを買って、「新宿御苑」に入ることにした






入場券を買いながら

「ここでいいのかな、どこに行けば女の子が喜ぶのか解らなくて、都内で大きな公園を散歩するのもいいのかなと、おもって」

「ありがと、私も一度来たいと、おもっていました」

と、言って、微笑んだ






園内に入った二人は

売店に、飲み物を買いに行った

そしてベンチに座って

買ってきたサンドウィッチを頬張った







「散歩しようか」

「うん」




園内の日本庭園を見て、温室で熱帯の植物を見ながら、色々な話をして散策をした




そして

公園入場口の看板で

「バラ花壇でバラの花が今見頃」

と、知らせていたバラ花壇に到着した




赤やローズピンク、白に薄ピンク色。色々な色で咲く、満開のバラが出迎えてくれた




ほのかに香る、バラのいい匂い

二人とも、バラに顔を近づけて、香るバラの匂いを嗅いでいた


「いい匂い」

「そうだね」






「あの~、美嘉さん」

「うん?」

と、女の子は答えた




僕は、女の子の顔を見て


「僕と、つき合ってください。好きです」

と、言った


「はい。私もです」

と、答えてくれた









事の顛末を、僕は親友に、報告をした


「つき合ってくださいって言ったら、OKしてくれた。ありがとう」

と、言ったら


「勝手にしろ」

と、言って、笑いながら、電話が切られた

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