第34話 二人のそびえたつ少女
「それでは、こちらからやらせていただきましょう」
マリアは鎖でがんじからめにしたメアリーのクリスタルを振り回し、神舞に近づいていく。
「ハハハハハハハ!!! あははははははは!!!」
神舞は、叫びながらクリスタルに向けて腕を振り下ろす――
「はぁ!」
その手のひらに向け、クリスタルの先を勢いよく振り回しながら突き刺す――
グサリ。
鋭い先が腕に突き刺さった。
「ガアアアアア……!!!」
「やった! 効いてるで!」
「中にいるメアリーは大丈夫なんだろうかあれ……」
メアリーは中で死んだ目でひっくり返っている。
「かわいそうだけどしょうがないなの。やられた奴が悪いなの。武器としてくらい役に立つなの」
「ひでえな……だがこちらはそんなことを言ってる場合じゃねえか!」
「……これが、是なれば」
統月の振り下ろす鉋をナイフで受け止める鋼。
「統月……お前は神舞さんと知り合いだったのか?」
「……是は、仁代ちゃんとは昔からの幼馴染です」
「その幼馴染が――ああやって獣のように暴れてる姿をみて何も思わないのか?」
統月が、ちらりとよそ見をする。
「ああああああああああ!!!」
あばれながら腕を振り回す神舞。
「あら……見え見え」
それをマリアはクリスタルで受け止める。
「……彼女は、ああやって暴れてる時が一番強いんです」
「あんなことしなくても強かったじゃねえか。それじゃダメだったのか?」
「仁代ちゃんが決意したことです。それは――あなたたちを高く評価してのものでもあります。普通に戦っても勝てないからこそ――ああやって苦しんででも戦う道を選んだのです」
「お前らがやりたいことっていうのは、自分が苦しんででもやりたいことなのか?」
くっと、唇を噛む。
「いやでもなんでも、可哀そうでも――あの子はそれをやらなければいけない人なんですよ! そう決められてきたから!」
統月は叫ぶ。
そして、鉋を勢いよく振り下ろし、地面をえぐる。
「っと――任務、決められ。お前たちに自由意志ってものはないのかよ――」
「ありません、それが秋津衆の一員として生きることです」
「お前らは――現代ダンジョン部の一員でもあっただろうが」
一撃を回避し、ナイフを振る。
「皆からかくれて、ダンジョンで好き勝手暴れる。それが俺たちのやる事じゃないのか」
「そんなのもう許されないんですよ――」
「いいや、許されるね。誰でもない、自分自身で許すんだ。誰にも縛られずに、な」
「それを許さないのが是の役目なれば――」
統月は、札を取り出し地面にたたきつける。
すると、びきびきと地面から勢いよく木が生えてくる。
「蔦よ舞いなされ、その枝を広げ敵にを滅ぼせ――」
そして、その枝が腕のように伸び、鋼の下へ延びる――
「あら――そうはさせませんわよ」
アリスが、一瞬にして移動しその枝を刈り取る。
「厄介なものがでてきましたが、わたくしには関係ありませんわ」
そのまま時を止め、幹へ向けて鎌を振り下ろす。
ガキリ。
だが、その一撃は硬い幹によって防がれた。
「是の木は硬くそう簡単に切れない」
「あら、でも枝は切れるのですわよね?」
「……ならば!」
その時地面から、根が飛び出してくる。
「! 掘って攻めてくるなんて……!」
「ワシも手伝うで!」
銀蛇が拳を握り、根に向かって突き出す。
「握拳! 火炎拳!」
そうして出てきた根を燃やし尽くす。
だが、次々と根は飛び出してくる
「だったら……出てきた先から叩くしかあらへんな!」
「わたくしたちの出番ですわ……!」
伸びた先から枝を刈り取るアリス。根を燃やす銀蛇。
「誰も傷つけさせませんわ。その木、無力化させてもらいますわよ」
「是とあなたの、我慢比べでありますれば……!」
「っと、こちらも忘れんなよ」
鋼が、ナイフを振った。
しかし、そのナイフは鉋で受け止められる。
「是の名において、立ち向かわせていただきますとも……」
「この数だ、果たして勝てるかね?」
「勝てないまでも、仁代ちゃんのじゃまはさせません……!」
「……その友情を、彼女を止めることに使ってやれなかったのか」
「うるさい、黙れ……!」
鋼は、ナイフを振る。
その首筋を狙って――
統月は、にらみつける。
その目に向かって――
***
「とりゃー! なの!」
右腕で振り下ろされる神舞の塊塀剣に対し、梁瀬は剣杖両刀のギャラクティックハートにて迎え撃つ。
「腕の方はこちらで承りましょう」
マリアが巨腕をクリスタルで受け止める。
中にいるメアリーの表情はどこか悲鳴を叫んでいるようであったが、それでもその硬さは強力な一撃を受け止めるには十分なものであった。
「ああああああああああああああ!!!」
神舞は叫ぶ。苦しそうに、痛そうに、それでも、力を手に入れた彼女は暴れ続ける。
「今……!」
狙撃が飛んでくる。
その弾丸は目の前で発光する。
弾丸の通りが悪いために、閃光弾による目くらましを中心にしているのであった。
「……あまり役に立たないかもしれないけれども、それでもやって見せるわ」
「いえ、十二分に役に立っておりますわ。心強いくらいです」
永井の言葉に、マリアが答える。
「でも……戦況は良くない」
暴れる神舞を、二人で抑えるのが精いっぱい。それが現状であった。
ただ、力任せの振り回し。だが、その一撃は非常に強力なものであった。
「ああああああああ!!」
地面を殴りつける。それだかで土がまくりあがるほどの衝撃波が広がる。
「ぎゃー!? なの!」
「くっ……」
守りを固める二人。その一瞬を使って近づいてくる神舞。
「がああああ!!!」
「くっ……!」
それをクリスタルで受け止めるも、すぐさま右手の塊塀剣が開き、マリアを狙う。
「かいへい……びーむ……」
「来るなの!」
「まずい……!」
「そこ!」
だが、剣を永居の狙撃がはじく。
一瞬剣先がずれ、明後日の方向へと飛んでいく――
「危なかった……なかなか、辛い。このままじゃ押されるばかりよ」
「押されるなら押し返すのみなの!」
そう啖呵を切るも、対応策は少ない。
このままじりじりと削られていくばかりかと思われた――その時であった。
ごごご、ごごごと地面が揺れる。
遠くから地響きが鳴る。
「――」
「! いったい是たちのもとに何が――」
声が――響く。
「フフフ……ようやく間に合ったわよ!」
「ようやく掘り当てたこいつ……ついに調整が間に合ったぜい!」
「これから先頭に混ざらせてもらう所存なのでありまして……」
「それじゃあ、いくよ。あたしゃらの――」
現れたのは――
「戦車を」
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