第22話 決起集会
「次の土曜日に、チャレンジすることにしよう」
帰り際、大通りの通学路を通り4人で帰路についているとき、都武がそう宣言した。
「ふーん、まあ異論はねえがそんな悠長にしててさきこされないもんかねえ」
「合理的に考えて、平日に大型のダンジョンへもぐるというのはあまりよくないだろう。そういうわけで大体のパーティは休日に集中して攻略をおこなう……と先輩に聞いたよ」
「さすが、耳が速いですわね」
制服姿のアリスが感心してにっこり笑う。
「事実、今回も皆も土曜日に行くらしい。まあ、でかいダンジョンに行くときはそういう習慣になってるらしい。合理的だな」
「なるほど、休みの日に一気に皆が集まるということ出やがりますね、それで日曜日はやすめる、とはむはむ」
板野は後ろを見てバックで歩き、自販機で買ったポテチのお菓子を食べながらそういう。
「板野ー俺も一枚頂戴」
「えーどうしようでやがりますかねー」
「板野さん、わたくしにくれませんか?」
「いいでやがりますよ」
「なんでアリスと俺で対応が違うんだよ!?」
「そういうもんでやがりますよー」
「どういうもんだよ」
俺は手を伸ばしポテチを奪い取ろうとする。
しかし板野はさっさっと手を伸ばし走り逃げようとする。
「通行人の邪魔するんじゃねえぞーやれやれ」
「都武さんも貰ったらどうですか?」
「あの中の良さに交わる気にはなれないなあ」
俺と板野、くだらないやり取りをしながら笑う、帰り道であった。
「そういうわけで、休日がつぶれることになるがいいか?」
「今までだって普通に土日集まってたじゃねえか」
「今更ですが、別にいいですわよ」
「そうでやがりますね、確認は大事でやがります」
そういうわけで、次の土曜日。俺たちは件の新ダンジョンへ向かう。
そういうことになった。
***
果たしてその日、確かにダンジョン前の広場にはたくさんの人が集まっていた。
その中には確かに神舞先輩や汀良田先輩も混じっている。
「あら、板野ちゃん。それに井荻くん」
神舞先輩が片手をあげて手を振りながら、俺たちの姿を認めて声をかけてくる。
周りには、同じパーティの人と思われるマリアさんと永居さんがいる。
神舞先輩は人込みをかき分けながら俺たちの方に近づいて来た。
「あたしたちも参加するけど、本当に都武くんたちのパーティも参加するのね」
「ええ、そういうことになりましたんでそうさせていただきます」
「でも、今回のダンジョンは本当に難しいらしいわよ? 1年生にどれだけできるか……」
「不肖僕たちだけではなく、先輩たちの手も借りますし……」
「何より、俺がいるって訳だ」
俺は腕につけた端末を掲げる。
「アンタレス、こいつがいればどんな敵も怖くねえ!」
「そんな簡単にいけばいいのだけれども……」
「わかってますよ、合理的に考えてこいつは閉所には向かないし召喚に制限もある。……不肖、僕たちも頑張らなければいけないということです」
「そう? わかっているならいいわ。それでは頑張ってね」
そういって神舞先輩は去っていった。
「あの人も面倒見いいよなあ」
「私が最初来た時も丁寧に説明してくれたでやがりますからね」
「どうだ、あれから大分たったが……現代ダンジョン部に入ったことを後悔してないか?」
「先輩ぶらないでください出やがりますよ。ちょっと井荻君の方が先なだけで入ったの同じくらいの時期じゃないでやがりますか」
「それもそうだ」
「じゃあ、井荻君はどう思ってるんでやがりますか? この部活に入ったことについて」
「もちろん後悔してねえよ。昼飯のおかずも一品増えるようになったからな」
「それはよかったでやがりますねえ。ところで拾ったものを売るときの金ってどこからでてるんでやがりますかねえ」
「さあ。そんなの享受する俺たちにとっては関係ない事だろ。それで、板野はどう思ってるんだ」
「うーん私は……」
板野は辺りを見回す。そこには都武とアリスがいる。
「友達が増えただけで満足でやがりますね」
「欲がないねえ」
「井荻君がケチなだけですが」
すると、都武とアリスがこちらの方に寄ってくる。
「混んできましたわね、そろそろダンジョンに行きませんか?」
アリスがそう提案し、俺たちも頷く。
「そうですね、そろそろ頃合いだとおもうでやがります」
「さて、ついに来たか……」
その時、人込みをかき分けて4人の男たちがやってくる。
「んおっと、いたいた」
それは、メアリー先輩ら鋼、大槻、忍居らのパーティで合った。
「先輩、手伝ってくれるって言ってましたが……」
「へへっ、お前たちのダンジョン攻略、同行させてもらうぜ」
「そんなわざわざ、ありがとうございます……」
鋼先輩の言葉に、板野が猫をかぶって頭を下げる。先輩といるときだけ語尾がなくなるんだから。
「しかし! 何の得もなくわれらが協力するということはないのであって……」
「交渉事ですか?」
都武が眼鏡をカチリと上げて、目を光らせる。
「そんな難しい事じゃない……最後のネックレス以外の宝物は普通通り2パーティで均等で分けようってだけだよ」
大槻先輩が口をはさんでくる。
「んでも、最後の目玉のネックレスだけはお前たちのものって訳だぜ」
メアリー先輩はピンク色のロリータ服を翻しながら腕を組む。
都武は皆の顔をうかがい、大きく頷く。
「なるほど、簡単な話ですわね」
「合理的だな。断る理由もない」
「それでも先輩が力を貸してくれるだけこっちの方が得でやがりますからね」
「へへっ、でも、俺たちは井荻くんのアンタレスをあてにしてるところもあるんだぜ?」
鋼先輩が肩をすくめる。
その言葉を聞いて少しだけ汗をかく俺。
「なるほど、俺の戦力は大事か。そりゃあ肩の荷が重い話だな……」
「あの質量は強力ですからね、さぞかし今回のダンジョンでも役に立ってくれると思いますわ」
「えーちょっとロボットと聞いてワクワクしてることがないわけではない。結構見たいところはあるのでありまして」
忍居先輩が眼鏡を輝かせながら言う。
「へへっ、たしかにな。さぞかしかっこいいと聞くぜ」
「んじゃ、そいつの鑑賞会を行うってのも条件に入れとくっていうのはどうだ?」
「少し……中を見せてもらいたい」
「そのくらいならいくらでもいいですよ」
よっしゃーと喜び小躍りし始める先輩4人組。
「やっぱロボットは男のロマンだよなあ」
「私たちにはわからない感覚でやがりますねえ」
「そうですの? わたくしはちょっとわかるような気がしますわ」
「えっそうなんでやがりますか」
「そうだな、板野にもわからせてやろう。アンタレスのかっこよさはなー」
「長くなりそうだからストップ」
ロボットのカッコよさに対して議論が始まりそうだったが、そこを都武が手で静止する。
「それで先輩、今から向かうということでよろしいですか?」
「んーそうだな、その前に皆一回集まって欲しい所存でありまして」
何だなんだとがやがやしながら、皆で円陣を組む。
「んじゃ、俺たちがいつもやっていることだけど、円陣を組んで激を一発入れるんだ」
「えー号令は誰がやるか?」
「それじゃあ一番の発起人の井荻君でどうでやがりますか」
「えっ俺かよ。まあしょうがねえな……」
ごほん、と咳ばらいをして俺は言う。
「皆、俺の提案に乗ってくれて、先輩達が助けてくれて、本当にありがたいと思う」
「へへっ前置きはいいぜ」
「それじゃあ、「万病を治す癒しのネックレス」目指して……頑張るぞ!」
皆が一斉に、「おー!」と声を上げた。
「それじゃあ行くぞ!」
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