閑話 アリスのファッションショー
「都武きょう用事だってさ」
現代ダンジョン部で3人集まったところで、都武が不在ということが判明する。
「これじゃあ今日ダンジョンいけねえな……3人でどこか潜るっていうのも手だが」
「別に3人で潜ってもいい事ないでやがりますよ」
「それなら――少しわたくし、行きたいところがあるのですが少し付き合ってくれませんか?」
アリスが珍しく、行き場所を提案する。
「まあいいけどさ……いったいどこへ行くっていうんだ?」
「それはですね……」
***
やってきたのは、大量のロリータ衣装の並ぶ一室で合った。
「ここは……」
「あら、ごきげんよう」
中にいたのは、マリア先輩で合った。
「マリア先輩にアリス。そしてこの大量のロリータ衣装……ということは」
「ええ、ここはロリータ同好会のスペースになりますわ」
ロリータ同好会。現代ダンジョン部内でロリータをまとう変人たちの集まりである。
「ここでいろいろ衣装をまとうのに選ぶのを協力していただけませんか、と思いまして」
「へー面白そうでやがりますね……ロリータ、ロリータでやがりますか……」
「板野さん? 少し興味あります?」
「はうっ、……そりゃ、少しは……」
「なら! 板野さんも着てみましょう! 楽しいですわよ、ロリータコスプレは!」
「うう……ちょっと! まだ着てみるとは……あああ」
そういっていたのは引きずられていった。
へえ。板野のロリータ衣装か。
……少し興味はあるな。
***
「どうです? こちらの衣装は」
アリスは、夜空の刺繍のついた青のドレスに頭に青のレースとリボンをまとった姿で現れた。
「うん、似合ってるよ。いつもとは少し印象が違うけど青ってのもいいもんだね」
「ふふ、褒めてもらってうれしいですわ」
「それで、板野は……」
「うう……」
板野は、恥ずかしがりながらアリスの後ろに隠れている。
「板野さん、いつまでもそんなところにいてはいけませんわよ。ちゃーんと見せてあげませんと」
「はうっ」
アリスに押し出され、その姿が現れる。
黒を基調とした、白いフリルを一面につけた、ゴスロリ衣装。
「うう……」
それが、板野の着ている服で合った。
肘までついた手ぶくろ、黒いドレスグローブを腕につけ、それを不安そうに撫でている。
「おお、思った以上に似合ってるぞ。板野」
「恥ずかしいでやがります……」
「ほらかわいいかわいい」
「かわいい、うう……かわいいでやがりますか……」
そういって恥じらう姿が、そのかわいさを助長させているとも言った。
「いやあいいのもを見せてもらったわ、ロリータ衣装っていうのも悪いもんじゃ……」
「ちょっと待ったー! 話は聞かせてもらった!」
突然、扉がドーんと開かれる。
そして現れたのは、ピンク色のロリータ服を着た男メアリー先輩で合った。
「どうしたんですか先輩」
「ふふふ……ロリータ服が悪いもんじゃねえって言ったな、それなら……」
メアリー先輩は、俺の事を指さす。
「井荻君、君もゴスロリを着てみないかい!」
「……は? 俺が?」
「それは……いいでやがりますねえ!」
「クスクス……面白そうではなくって?」
「あら、それではこちらが化粧をさせていただきますわ」
ノリノリで乗り始める板野にアリスにマリア先輩。
「んじゃま、決まったな井荻くん! それでは君も……」
「ちょっとまってなんで俺が女装なんて!」
「大丈夫だ! おれも女装している!」
「そりゃあ常時女装しているあなたは平気でしょうけど! あっ以外に力つよ!」
なすすべもなく俺はメアリー先輩に引きずられていく……
***
「ううう……」
「これは……以外にすげえな」
「まさか……結構に合うとは思わなかったでやがりますよ」
スカートがスース―する。ゴスロリ衣装の匂いがする。化粧が顔に張り付いている。ストッキングとコルセットに引き締められる感覚に違和感がする……
「クスクス、似合っておりますわよ井荻さん」
「あらあら、肌がきれいだから化粧も以外に乗りやすかったですわ」
「似合うって言われても困るんだよ……」
「んじゃま、自分の姿をみてみんしゃい」
メアリー先輩が鏡を持ってくる。
そこには、中央に大きなリボンとコルセットをつけた黒いゴスロリ衣装をまとった美麗な女性がいた。
……いや、女性じゃなくて俺なのだけれども。
「きゃーかわいいでやがりますよー!」
「テンションたけえな板野……うう……」
「ね、ロリータ衣装っていいものだと思いませんか?」
アリスが問うてくる。
「……知るか―!」
俺の叫びがロリータ同好会の中に響いていく……
***
「うう、ひどい目にあった……」
「でも、珍しい所見れたでやがりますよーかわいかったでやがります」
制服に着替えた板野が、にやにや笑っている。
「でも、結局どうしてアリスは同好会に連れて来たんだ? 女装させたかったからじゃあるまいし」
「クスクス……わたくしの普段とは違う姿を見てもらいたかったっていうと笑いますか?」
すると、突然アリスは俺の腕に抱き着いて来た。
「なっ……!」
「こっこらー! 私の井荻君から離れろー! でやがりますよ!」
板野が慌てて不服そうな顔をしながら反対側の腕に抱き着く。
「なんだ今日は……厄日か!?」
そのまま二人に抱き着かれて俺たちは歩いていくのであった……
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