第12話 現代ダンジョン部探検隊 その2
メイン通りの前に出て、ショップの中を外から眺める。
中には、ごちゃごちゃといろいろな品物が置かれているのが見える。
「武器ショップ、防具ショップ、アイテムショップ……」
「全部同じ場所でやればいいんじゃないでやがりますかねえ」
「そうはいっても一ショップ一ショップ結構物が多かったぞ、一つにまとめるには大きすぎるんじゃないかな」
「なるほどでやがりますねえ」
ちょっと気になってアイテムショップの中に入り、足りないものがないか調べる。
「ロープは最近買いなおしたよな? 持ってきた懐中電灯の電池が大丈夫かどうか不安なんだが」
「リュック新調しましょうよリュック」
「へーフライパンとかあるぞ、武器じゃないのか」
「中で料理するよう出やがりますって、ガスコンロやバーベキューセットもあるでやがりますよ」
「火使うのは魔物をよびよせて危険じゃないかねー」
そんなこんなでなんか買うのはみんな集まってから話し合ってやろうということになりまた何も買わずにショップから出てくる。
「あら、板野ちゃんに井荻君じゃない」
「神舞先輩!」
整然とした制服をまとい、紫髪に赤い帽子をかぶった物腰柔らかな表情をした先輩、神舞先輩が現れた。
「そうだ、板野ちゃんに話したいことがあって……こんど現代ダンジョン部内の料理部にこないかしら?」
「ちょうどいいですね、今現代ダンジョン部内巡りをやってるところなんですよ」
「それなら、今から来るかしら? 今なら同じ一年生の聖さんがいるわよ」
それは今日の朝体育で見かけ、もしかしたら現代ダンジョン部にいるのではないかと疑った少女で合った。
「へえ、やっぱり聖さんここに入部してたんでやがりますね」
「知らなかった? まだ今年も始まったばかりだからあまり横のつながりとかないのかしらね、でも一度同年代の人と会ってみるのはいいわよ」
「それでは、会ってみようでやがりますか」
「そっすると俺は邪魔になるのかね?」
「井荻くんも来ていいわよ?」
「ええ、女だらけの空間に行くのも……」
板野が何かを乞うような目で見てくる。
「……じゃあお言葉にお甘えして、行かせてもらいましょうか」
「それでは行きましょう!」
***
料理部の中は、女の子らしいかわいらしいデコレーションと清潔な部屋になっていた。
ソファーの上には件の少女、整えられた制服に片方に寄せた金髪の巻き髪、その上にピンク色の帽子をかぶった聖さんが優雅に座っていた。
「あら、あなたは確か……」
「どうも、同じ一年生の板野というでやがります」
「付き添いの井荻です」
彼女は可憐に立ち上がると、にっこりと朗らかに笑う。
「一応同じクラスですが挨拶を。
「ど、どうもよろしく……」
なんだか生きてる世界が違うような豪華さに、少ししり込みしてしまうところだった。
「さて自己紹介はこれくらいにして、料理部ということで作ってきたお菓子を食べましょう」
「わーい」
「どれどれ……」
「急いでもお菓子は逃げませんわよ」
こうして、しばらく料理部でお世話になることになってしまった。
***
「いやあ、いろいろごちそうになってしまいやがりましたねえ」
「おいしかったなあのクッキー。へへっ今日のおやつ代の節約になったぜ」
「こういうところでケチ出さないでいいんでやがりますよ……」
すると、後ろから一緒に料理部から聖さんも出てくる。
「今日は楽しい時間を過ごせましたわね、板野さん、井荻さん」
「ああ、どうもこちらこそ……」
「聖さんはこれからどうするんでやがりますか?」
「そろそろ、一緒にダンジョンを潜る方たちとの待ち合わせの時間が……」
「おーい聖はんおるかー?」
「ん、あいつは……ギンヘビじゃねえか」
崩した制服に少し長い黄髪を後ろで束ねた三白眼の男であった。
「ギンヘビ?」
「銀に蛇って書いて
「おっと、そこにおるんはギショウのやつやあらんか」
「ああ、いおぎしょうすけだからギショウ……」
「一緒に組んどるって聞いてるトタケの奴はおらんのか?」
「トタケ?」
「
「そりゃ残念やのう……」
「そうだ、こいつは俺の幼馴染の板野だ。自己紹介してやってくれ」
「ワシは
銀蛇とは違うクラスではあるが、あちらからいろんな奴に積極的に話しかけてくる奴だったので俺も知っている。
キャラが濃いから忘れられないしな。
「それで銀蛇さん、どういたしましたの?」
「川森の奴がちょい遅れるゆうてるから先にこっちで呼んで集まろうと思うてな」
「わかりました。それでは
そういって二人は去っていった。
「いやあ銀蛇みたいなチンピラが聖さんと組んでるとは……」
「普段どんな会話してるか想像がつかない出やがりますねえ」
***
料理部の合ったあたりには、ほかにも部室がある。
弓道部、野球部、コンピューター部、美術部などに加え、オリエンテーリング部とかいうよくわからない部活やプラモ部とかいうそんなの合っていいのか見たいな部活まであった。
「この学校変な部活多いでやがりますからねえ」
「趣味同好会とかあるらしいぜ。適当に出せば通るんじゃねえの」
「ロリータ同好会ももしかしたら通るんじゃないでやがりますか?」
そんなことを言っていたら向こう側からちょうどロリータ服をまとった人が二人現れた。
片方は先日もあったピンク色のロリータ服の男、メアリー先輩。もう一人は白色のロリータ服に頭に灰色の帽子をかぶった少女のような女の子であった。
「んー井荻君と板野さんじゃん、先日はどうも」
「そんな、先輩に無理させた結果あんなことになってしまって……」
「謝る事じゃないって、俺が勝手にやったことなんだから」
手をひらひらさせて得意そうににやにやと笑う。
何だか、この人の中ではむしろ武勇伝のようになっているのではないだろうか。
「どうもごきげんよう。こちらは、ロリータ同好会が一人、マリアと申しますわ」
「どうも……アリスさんは今日は家の用事って言ってましたよ」
「ああ、その話を聞いてみんなで集まれなくて残念だなって思ってたところだったんだぜ」
「あらあら……アリスさんも大事な同好の士でございますからね」
「あの……ところで一つお伺いしたいことがあるんですがよろしいですか?」
「ああ、何でございましょう」
「どうしてロリータ同好会の方たちはアリスとかメアリーとかマリアとかカタカナの名前を使ってらっしゃるんですか?」
ぶっこんできた。俺もアリスを見たときから思ってたことだったがあえて突っ込まなかった。
「んーとな、かっこいいからだ!」
「というのは一つの側面として、昔の現代ダンジョン部では表と裏の存在を分けるため皆偽名を使っていたらしいですわよ」
「その伝統をかっこいいからうちだけ引き継いでるってわけだぜ」
「へーそういうのにも歴史ありってことなんですね」
「この部活やたら歴史とか伝統とかを感じる場面が多いよなあ」
すると、マリアさんが井荻の顔をじっと見つめ始める。
「あの……どういたしましたか?」
「あら、あなた、受難の相がでてらっしゃいますわよ」
「えっ……」
神妙な顔をして、深く考えてからこう続ける。
「進みなさい、それでも。あなたの続く道の先に正しさはあるのですから……それでは」
「じゃあねー」
そう謎の言葉を残して二人は去っていった。
「何だったんだ今の……」
「受難なら今までもあったから大して変わらないんでやがると思いますよ」
「そういうこと言うなよ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます