葛藤
僕は独りだ。もうずっと、何年も。「きみ」が来てから、見かけでは独りじゃなくなったけれど、僕自身の心は孤独に乾いていた。どれだけ「きみ」が僕に話しかけてきたとしても、潤うことはない絶対的な孤独感。「きみ」のおかげで僕の人生は色づいた。しかしこの孤独感だけは消えやしない。所詮僕は、生まれるはずのなかった人間なのだから。
それでも信じたかった。「きみ」といるときに芽生える感情を。錯覚ではない、僕自身の本物の感情なのだ、と。孤独感は消えなくとも、「きみ」のおかげで僕の日常は明るく輝き始めたのだ。これだけは不変の事実だった。そう思いたかった。
「きみ」に振り回される毎日は退屈ではなかった。傍若無人という言葉が似あう「きみ」に僕は毒されていた。しかし、その微笑みは、優しさは、言葉は、「きみ」の全てが僕を追い詰めた。孤独に存在していた僕にとっては拷問のようにも感じられる毎日だった。それと矛盾するように、退屈ではなくなった。「きみ」のおかげで。これは僕の存在において最大の矛盾であるだろう。だから僕は、生まれた感情を信じたかった。孤独に乾く僕自身への、精一杯のあがきのようなものだった。
葛藤。葛藤。葛藤。これが今の僕だろう。
それでも、わからなかった。「きみ」を求めながらも孤独を抱える僕は、一体どう生きれば良いのだろうか。答えは、見つかりそうにない。
ワルツ 真月陽 @tsukihi_294
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