第5話
持てる限りのカトラリーを手に入れた俺は、脱出口を探すべく城内探索へと戻った。暖炉に見せかけて抜け穴の入り口になっているとか、壁に設置された燭台が引き下がるようになっていて、それを下げたら壁が扉になるとか、そういう仕掛けが城というものにはゴマンとあるものだからだ。
こそこそと部屋に侵入しては、それらしいものがないかを探す。あわよくばで、悪魔討伐に使えそうな情報がないかも探す。そして、見つからなかったら次の部屋へ──。これを何度か繰り返した。
ある部屋にやってきた俺は、その部屋の暖炉が他とは違うことに気がついた。意匠やら大きさやらが他の部屋のものとは若干違うのだ。もしかしたら、隠し通路の入り口になっているかもしれない。
俺は暖炉の前にかがみこむと、内部がよく見えるようにとマッチを擦った。ほこりと煤にまみれながら、内側に何らかの仕掛けがないかを丁寧に探す。
「チッ……。いまいち、よく見えねえな……」
少しばかり苛立ちながら身じろぐと、足元からミシッと音が鳴った。──ん? なんだか、足元が少しばかり軟らかい気が……ああああああ!?
ズドンという大きな音を立てて、俺は階下の部屋に落下した。どうやら、床がダメになっちまっていたらしい。
さすがに、こんな大きな音を立てたら、あっという間にグールどもが集まってきてしまうだろう。そう思い、俺は慌てて立ち上がろうとした。だが、落下の衝撃で体のあちこちが悲鳴を上げていた。──動け、動けよ! 俺の体!!
ようやく体が動いたのと同時に、グールが一体、視界に飛び込んできた。とっさにカトラリーを投げつけて撃退し、起き上がってすぐに俺は駆け出した。
部屋に入ってこようとしているグールを蹴飛ばして距離をとり、必死に前へ前へと走った。しかし、落下のダメージが思ったよりもひどいらしく、足が思うように動かない。
俺は後ろを振り向くと、追いつきつつあるグールにカトラリーで応戦した。──なんてこった! さっきまで、一発で仕留めることができていたのに! こいつら、夜が更けるにつれて強くなっていくのか!?
一体のグールを倒すために、二、三本のカトラリーが必要だった。これじゃあ、埒が明かない。せっかく補充した
気がつくと、俺はグールどもに追いつめられてしまっていた。ちくしょう、聖水も間に合いそうにねえ!
やられる、そう思った瞬間、俺はまばゆい聖なる光に包まれて、その場から逃げおおせた。
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