第4話

 正面の大門に戻ってきてはみたものの、扉を開けることはできなかった。入ってきた者を城内のどこかしらに飛ばした魔術がかかっていたのだから、出て行こうとする者を徹底的に閉じ込めるための魔術がかかっていても、そりゃあおかしくはないわな……。

 元来、城というものには隠し通路なども含めると、たくさんの出入り口が存在する。だから、ここ以外のどこかからなら、悪魔の管理からうっかり漏れていて、外に出て行くこともできるかもしれない。……しかたない、どうにかして脱出口を見つけ出すか、グールどもに見つからないようにしながら朝まで耐えるとしよう。


 逃げ続けるにしても、今の装備では少し厳しいものがある。銃は強力だが、撃てばたちまちグールが集まってしまう。聖水はあと2本しかない。護符は敵に囲まれた際に安全な場所へと強制退去できるが、それはそうそう使いたい代物ではない。どうしたものか……。


 大きな柱の陰に隠れて、俺は考えた。そして、二階に行けば食堂があると地図に書いてあったことを思い出した。

 今や悪魔の巣食う城とはいえ、昔は栄華を極めた王宮だったのだ。銀製のカトラリーなんて、数えきれないほどあるだろう。それを持てるだけ拝借して、投擲武器代わりにでもしようか。


 そうと決まれば、話は早い。食堂目指して、俺は手探りで正面の大階段を上っていった。



 ***



 グールの気配に気をつけつつ、俺は食堂にたどり着いた。が、広い食堂内にはグールが数体さまよっていた。そのうちの一体に、気取られないようにゆっくりと近づくと、俺は床に転がっていた燭台を手に取り、グールの腹に突き刺してやった。

 さすがは王城、燭台も銀製ときている。グールはたちまち、形なく崩れていった。続いてもう一体も、落ちていたカトラリーを拾って、投げナイフよろしく投げつけてやった。ガクンと頭を垂れ、動かなくなってから少しして、ヤツは溶け崩れていった。……よしよし、思っていた通り、カトラリー程度でも使い物になりそうだ。


 残りの数体も同じ要領で手早く仕留めると、俺は武器調達に勤しむことにした。

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