第3話
部屋から部屋へ……を繰り返しながら、俺は何かしらの手がかりを探しつつ移動していった。
「おっ、結構広い部屋だな。何かあればいいんだが……」
手をすり合わせながら、独り言ちた。──それにしても、月明かりが入りづらいのか、先ほどまでの部屋と比べると、家探しするには暗過ぎである。
日中のうちに調査を終えて帰ってくるつもりだったから、ランタンなんて持ってきていない。それでも何か、灯りをつけられるものなんて、あったか……おっ、ポケットにマッチが入っていやがった。ラッキー!
さっそく、マッチを擦って灯りを点けた。とてつもなく小さな松明だが、ないよりはマシだろう。
灯りを頼りに、部屋の中を調べていると。筒状に丸め込まれた紙を見つけた。広げてみると、どうやら城内の地図のようだった。こりゃあ大収穫だ!
「地図と、一番最初に見た景色を照らし合わせて考えると。今いる場所は……」
俺は大失態を犯した。地図に気を取られ過ぎていて、外の気配に気を割くことをすっかり忘れていたのだ。
バアン、と勢いよく扉が開き、俺は驚くのと同時にマッチの火を消した。しかし、遅すぎた。グールはしっかりと俺を見据え、ズル、ズルリと向かってきていた。
ゆっくりだと思っていたグールの動きは、次第に早くなっていった。これは振り切れない、と思った俺は、とっさに腰の銃を抜き、一発撃った。
静寂が訪れたが、それも一瞬のことだった。部屋の外から、多数の這いずり音が聞こえてきた。
「クソッ!」
慌てて部屋から出ると、結構な数のグールが集まりつつあった。──やばい、やばいやばいやばい!
俺はひたすら走り続けた。しかし、闇夜は奴らの独壇場だ。グールはどんどんと速度を上げ、俺に食らいつこうとしていた。
俺は聖水の入った瓶に手をかけると、栓を抜いてグールたちに向かってぶちまけた。オ゛ォ……と呻きながら、グールたちは溶けていった。
すかさず、俺は空になった瓶を遠くへと投げ、瓶が床に落ちてコツンという音が廊下に響き渡ったのと同時に、瓶を投げた方向とは真逆へと走って扉に手をかけた。
部屋に滑り込んで、物陰に隠れ、息を凝らす。しばらく何も音がしない時間が続き、俺はゆっくりと扉に近づき、聞き耳を立てた。どうやら、グールの捜索網から逃げきれたようだ。
大きなため息をついた俺は、気を取り直して、先ほど入手した地図を広げてみた。──正面の大門までもうすぐのところまで、俺は来ることができているようだ。……よし、このまま、門まで行ってみよう。
俺は地図をしまうと、慎重に部屋から出て行った。
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