第2話

 正面の大門をくぐり抜け、城内に足を踏み入れた途端。まがまがしさを伴った、とても強い衝撃を受けて俺は気絶してしまった。目を覚ましてみると……なんてこった! 真っ暗じゃねえか! 俺は一体、どれだけの時間、気絶しちまっていたんだ!?

 カーテンの隙間から月明かりが差し込んでいて、それにより、俺は城内にあるどこかの部屋に移動させられているようだということが分かった。そっとカーテンを捲って外を眺めて見た景色から、一階のどこかだということが分かる。これなら、大門に戻り一旦城から出て、調査作業を明日に仕切り直すことが簡単にできそうだ。


 ひとまず、脱出するのに必要な情報を揃えたい。あわよくば、悪魔討伐のための情報もゲットしたい。──そう思った俺は、カーテンを開けて、月明かりを頼りに部屋の中を調査した。


「ちっ、手掛かりは無しか……」


 そうぼやいて、ため息をついた矢先に。部屋の外からギシ、ギシという音が聞こえてきた。俺はとっさに、倒れていた戸棚の陰に滑り込んで息を凝らした。すると、ギィという重たい音を立てながらゆっくりと、部屋の扉が開いた。


 ズル、ズルという音とともに、何かが部屋の中へと入ってくる。戸棚の陰からこっそりと覗き見てみると、悪魔の眷属であるグールが辺りの様子を窺っていた。

 俺はグールに気づかれないよう、気配を消すことに努めた。


 異常なしと判断したのか、グールはゆっくりと部屋の外へと出て行った。バタンと扉が閉まる音を聞いてから、俺はようやく息をすることができた。


「ッハア! ……ハアッ、ハア……。危なかった。一体どれだけの数いるんだろうな。こりゃあ厄介だ」


 ただ出口に向かえばいいと思っていたのが、グールに見つからないように隠れながら逃げ出さなければならなくなってしまった。

 戸棚の陰から出ると、扉に耳を押し当てた。何も聞こえないのを確認すると、今度はそっと扉を開け、廊下の様子を窺った。──よし、大丈夫そうだ。

 俺は物音が立たないように気をつけながら部屋の外へと出ると、隣の部屋の扉に耳を当てた。そして何も音がしないのを確認すると、こそこそとその部屋の中へと入ったのだった。

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