悪魔退治人ロアン 古城からの脱出
小坂みかん
第1話
俺の名はロアン。
それほど遠くない昔、サンタナは古デュアン王朝の首都であり、かの古城は王宮として使用されていた。しかし、ある時代の王がいっそうの繁栄を願って禁忌に手を出した。──忌み子を贄にした外法を用いて、悪魔と契約してしまったのだ。
悪魔は王朝につかの間の繁栄をもたらしたが、それも本当につかの間のことで。王の死をきっかけにデュアン王朝は急速に衰退し、あっという間にロモズ朝に食われちまった。ちなみに、そのロモズも瞬く間に現王朝であるシモンに滅ぼされた。
デュアンが無くなっても、サンタナは悪魔から逃れることができていなかった。だから、教会は最初のうち、シモン王立の退治人ギルドに悪魔祓いの要請をしていた。だが、どいつもこいつも、ミッションを達成できなかったようだ。おかげで、俺のような風来坊にまでお鉢が回ってきたというわけだ。
胸糞悪いことに、悪魔を鎮めておくために、街では年に一度、生娘を贄に捧げているそうだ。で、今年はなんと、領主様のところの娘さんが贄に選ばれたという。当然、「今年の儀式が始まるまでに、何とか悪魔を祓わなくては」という流れになったそうだ。
悪魔を祓うことができれば、領主の娘さん以外であれば何でも褒美としていただいてもいいという。が、正直、俺は褒美には興味がない。俺は王立ギルドですら匙を投げた悪魔を、俺が退治できるかどうか……俺の実力はどれほどのものなのかということさえ知ることができれば、それでいい。
サンタナの悪魔は、日中はなりを潜め、夜に活発に活動するという。だから、古城内部を調査し、悪魔討伐のための材料を揃えたかったら日中のうちに全てを終わらせなければならない。なので、目下の目標は「日中のうちに調査を終え、一度街へと帰ってくること」だ。悪魔を退治するのに必要な〈悪魔の真名〉の書かれた書物がどこかに必ずあるはずなので、まずはそれを探し出す。そして、それが分かったら一度街へと帰ってきて、万全の準備を整えたいと俺は思っている。
というわけで、俺は念のための装備として聖水三瓶、護符二枚、護身用の拳銃、それから一応、聖書と銀の大杭を持って〈事前調査〉をするべく王門をくぐった。
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