第42話 次なる目標と向けられる敵意
「キャンバル様…………本気でそのような事を考えておられますか?」
爺が怒った表情で僕を見つめる。
「うん。絶対に必要な事だと思うんだ」
「………………私は納得いきません。それにお父様である辺境伯様も納得しないと思います」
「でもハーミットの情報から
「ですが、今までの
僕と爺が争っている事。
それは、隣国との交流を持つ事である。
実はハーミットから良い情報を仕入れる事ができて、というのも、以前ジアリス街を攻めてきたバルバギア王国軍が大敗して帰ってきたあと、向こうの国からこちらを攻撃してくる素振りは全くないそうだ。
という事で、僕の感で隣国との交流を持てないかと思ったのだ。
なのに、爺は反対だという。
「でもそれは昔でしょう?」
「…………セレナ」
「はい……」
隣のセレナちゃんが少し悲しそうな表情で俯いて応えた。
どうしてこのタイミングでセレナちゃんなのか。
「セレナがここに流れ着くまで両親に捨てられた事は知っていますね?」
「うん」
「その一番の原因は――――バルバギア王国にあるのです」
「…………戦争によって仕事がなくなり、働けなくなった両親が捨てた。ってこと?」
「!? はい。その通りでございます」
爺の事だ。絶対に理由なく話さないだろうと思ったけど、僕の予想が当たったみたい。
「それなら尚更、隣国との交流を進めるべきだ」
「どうしてです!? 今まで――――彼らによって死んだ者が幾人もおります。民が納得しません」
「………………じゃあ、僕が何とかしたら、交流の件は納得してもらえる?」
「何とか……なるのなら、私も納得してキャンバル様を全力で応援させていただきます」
「わかった」
僕はその足でヒブ爺さんを連れて、領都に向かった。
◆
「急な訪問失礼します。お父様」
「良い。それにしても珍しいな」
玉座の間。
玉座に座ってこちらを見下ろすお父様の隣に二人の男が見える。
その瞳には憎悪が込められていた。
「お久しぶりです。
「久しぶり。カイル。カイン」
二人は不服そうに頭を下げる。
インハイム家の長男は僕なので、彼らが頭を下げるのは当然の事だ。
でもキャンバルさんに恨みを感じている二人は中々に不服そうな表情を浮かべているのだ。
「それで、今日はどういった事で来たのだ?」
「はい。隣国――――バルバギア王国と交流を持つ事を許してください」
「なっ!?」
「!? ふ、ふざけるな! いくら兄上でも言って良い事と悪い事がある!」
お父様よりも次男であるカイルの怒りが飛び散る。
それもそうだろう。二人は長年バルバギア王国軍と戦争を繰り返しているのだ。
爺曰く、二人はとても優秀な剣士らしくて、数々の武勇を誇っていて、領内の人気も凄いみたい。
ちなみに僕は最低という事だ。
「カイル。よい」
「お父様!?」
「キャンバル。お前はそれがどういう意味を持つのか知っているのか?」
「もちろんです。今だからそう話しているのです」
「…………わかった」
「「お父様!?」」
カイルもカインも驚いてお父様を見つめる。
「ただし、条件がある」
「何でも言ってください」
「――――民を納得させろ。それが条件だ」
「かしこまりました。領民達から承諾を得ます」
「できるはずがない! お前みたいな落ちこぼれに!」
「カイル!」
「っ…………」
カイルは悔しそうに拳を握りしめて、僕を睨みつけてきた。
隣のカインもまた言葉は出さないけど、敵意むき出してこちらを睨みつけている。
でも、僕にも譲れない事がある。
二人が僕の弟なのなら、いくら人気があっても僕にも発現する権利くらいはずだ。
「カイル」
「…………」
「納得するまで、俺に付いてくるか?」
「っ!? …………どこまでも俺達を馬鹿にして…………いいだろう! そこまで言うならお前がどこまでやれるか見極めてやる! カイン。お前もそれでいいか?」
「もちろんだ。
「決まりだ。後悔するなよ」
そう言い残して二人は玉座の間から去って行った。
「…………すまないな。キャンバル」
「お父様が謝る必要はありません。これも昔の俺がやってきた事。それに――――俺は隣国との交流を提案した者ですから」
「そうだな。ではこれだけは言っておく。お前が願う未来通り、領民を説得して隣国と交流を結び、それがより
辺境伯……………………いらないんだけどな。
でもまぁ、二人が座るとまた領民達が血を流す事になりそうだから、セレナちゃんのためにもちゃんと僕が貰おう。
そう決意して、僕はお城を後にして、一般区の広場に向かった。
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