第41話 税金
ジアリス街が完成して、意外にも忙しい日々が過ぎた。
畑作りももちろんそうなんだけど、白銀商会からジアリス産農作物が大人気で値段が高騰し続けているという嬉しい悲鳴があり、生産量を増やして貰えないかと相談があって、領民達に説明してほんの少しだけ頑張ってもらい生産量を増やした。
元々農作物作りはやれる範囲でしかお願いしていない。
無理して頑張ってもらいたくはないという僕の信念があるから。
ただ、元スラム街から来た領民の大人達は生き生きした表情で、寧ろもっと働きたいと頑張りたいと言ってくれた。
昔の最初のジアリス町から数倍に広がったジアリス街は中心地は魔道具でどんどん開発されながら、周囲を囲うように広がっている農園によって、元の姿は全く見えずとんでもない開発が進んだ。
財政管理のセレナちゃんは毎日忙しそうに走り回っていたけど、必ずご飯は一緒に食べてくれるように調整してくれている。
それとジアリス町が広がりすぎて街となった事で、お父様が一度訪れて許可を出してくれた。
というのも、広がりすぎるとしっかり町を街に改編する必要があり、それによって納税額が増える代わりに色々権限が増えるという。
納税は辺境伯領の法なので、違法すると捕まるからと爺があたふたしながらその件を進めていた。
そんな楽しくも忙しい日々が過ぎ、本日、爺とセレナちゃんが僕の前にやってきた。
「えっと…………税金?」
「はい」
二人とも神妙な表情で僕を見つめて話すのは――――税金という言葉だ。
そもそも税金ってなんだ?
「税金というのは、国民が国に属している代わりに、支払うお金を言います。例えば、ジアリス街はインハイム辺境伯領に属しているので辺境伯様に納税する義務がございます。今までのジアリス町はキャンバル様の
爺がひと息入れ、隣のセレナちゃんが続ける。
「ですが、今のジアリス街の収入は辺境伯領内でも有数のモノで、ソウレイン都よりも多いかも知れません。となりますと自然と住民の収入も増えます。幸い、ジアリス街はキャンバル様のご厚意により、働き手の人々が貰うべき金額を頂いております。となりますと、その額が他の町で働いている人々と差が広がってしまいます」
今度はまだ爺が続ける。
「それがやがて反乱にも繋がりかねません。中にはジアリス街に移住したいと願う人も多いでしょう。となるといくらご子息と言えども、辺境伯様が動かざるを得ません」
そう話す爺の表情が中々怖い。
「もしお父様が動くと……どうなるの?」
「――――――弾圧されます」
「弾圧!?」
弾圧ってあれだよね!? 捕まって拷問を受けて処刑されるあれだよね!?
「ですので、しっかり納税をしましょうという事です。ですが現状のジアリス街の納税は行われていません。ですので、本日から納税を行うべきです」
「納税…………えっとそれはわかった。お父様を困らせなくはないし、ジアリス街の領民達が平和に暮らすために必要なら、彼らには申し訳ないけど、納税ってものをしよう」
「かしこまりました。その旨は私から――――」
「ううん。それは僕が言うよ。領主だもの」
爺が笑みを浮かべる。
「それが良いかと思います」
その日、ジアリス街の領民達に集会の知らせが回った。
「ジアリス街の領民の皆さん。今日は残念な知らせがある。我々ジアリス街が遂にはインハイム辺境伯領にて、しっかり街として認めて貰えるようになったのだ!」
拍手が起きる。
「という事もあり、辺境伯様に納税を行わなければならない! しかし、僕には――――お金がない!」
「「「「ええええ!?」」」」
「という事で、これからジアリス街のみんなには、納税をして貰いたい!」
周囲のざわつきが始まる。
無理もないかも知れない。
だって、僕ですら貰ったお小遣いを取り上げられたら泣くと思う。
目の前の領民達は毎日汗を流して働いてくれているのに、そこから納税をするって凄く酷い気がする。
その時、リーダー格のヒブ爺さんが手を上げる。
「税はもちろん払わせて頂きます! ですが一つ疑問がございます。今までキャンバル様は壁を作り、畑を作ってくださり、その上で農作物を売っていたと思いますが、お金がないと仰るのには何が事情があるのでしょうか?」
「えっと、お金は全部魔道具を買ってるよ?」
「「「「ええええ!?」」」」
「で、では、街を豊にしている…………タダで配られた魔道具の数々はもしや全て農作物の収入でございますか!?」
「そうだよ?」
「「「「ええええ!?」」」」
みんなどうして驚くのだろうか?
それから領民達のみんなが泣きながら全財産を持ってきてくれたけど、そんなに要らないというか、セレナちゃんに頼んで必要な分だけ貰う事でお父様に持っていく納税額を集めた。
一人が手一杯に持って来たのが、銀貨数百枚とかあったけど、そんなに必要なくて一人ずつ三枚だけ貰う事で十分な額に到達した。
何故か百枚くらい貰ってくださいと何度も押し付けられたけど、美味しくもない銀貨は要らないって怒って追い出してやった。
「だって! 銀貨って食べられないし、美味しくないからいらないよ!」
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