第40話 ジアリス街
グガガガガガ――――
目の前の建物が絶望の音を鳴り響かせて崩れていく。
ガレキと化した家はまた大地魔法により、土へと還る。
今度は地面に両手を当てて、魔力を注ぎ込む。
全身から土色の光が溢れ、目の前の大地に降り注ぐとまだ轟音を鳴らしながらニョキニョキと白い建物が生えてきた。
白い建物はどんどん出て来て、こちらの地面が真っ黒に染まる程の高さに聳え立った。
「凄い~!」
そして、後ろから歓声が鳴り響いた。
目の前に建てたのは、新しいお家だ。
ソウレイン都で見かけた多くの家は、5階建ての大きなビルのような建物ばかりだった。
それを想像しながら、それに似た建物を建てていく。
なんたって――――ジアリス町の領民が大量に
◆
「キャンバル様! お疲れ様でした! こちらどうぞ」
いつものレモン水を渡されて、一気に喉に流し込む。
満面の笑みでこちらを見つめる可愛らしい瞳が少し気になる。
何だか、凄く嬉しそうだ。
「どうかな? みんなは慣れてくれそう?」
「はい! セバス様が次々家を決められて、領民達からは全く不満の声もありません。それよりも喜んでいる声だけが大きくなっていますよ! 家も広くなったし、テラス部分も凄く好評みたいです~」
テラスは夜空が見やすい方向に建てられ、夜空を楽しみながらゆっくりできるだろう。
これもハーミットさんが教えてくれた領都の流行りだ。
今日中に終わると思わなかったけど、意外とジアリス町の領民達全員が住めるくらいの家は確保できた。
少し狭くなってしまったジアリス町の街並みなんだけど、町の至る所に伸びている水路と相まってそれがまた風情があって良いと感じる。
領民達も新しいジアリス町の風情がとても気に入ったそうでよかった。
セレナちゃんはというと、婚約の件もあるので、うちの屋敷で一緒に住む事になった。
屋敷は他の家よりも明らかに大きすぎるので部屋も沢山あるし、最近は財政管理を担ってくれているので屋敷で過ごしてくれると仕事も捗って良いかも知れない。
…………一応寝る部屋はまだ別だ。
ジアリス町に住む事になった元スラム街の人達。
彼らはジアリス町で農業の仕事をする事でジアリス町で暮らせるという提案を呑んでくれた。
ハーミットさんとセレナちゃんを交えてお給金の話や迎え入れる条件など、しっかり話し合って彼ら一人一人と契約を結んでここに住んでもらうことになった。
誰一人欠ける事なく、ジアリス町に住むという選択をしてくれて嬉しい。
やっぱり美味しいご飯や果物を食べると、元気になるというか、僕もアレク兄ちゃんの美味しいご飯のおかげで、ここでの生活がとても楽しかったからね。
彼らにもそれを感じて貰えたら嬉しい。
ハーミットさんとも話し合って、便利な魔道具も買う事が決まった。
動かすのに魔石が必要なんだけど、おじさんズが頑張ってくれて毎日のように増える魔石の使い道ができたのは嬉しい。
何しろ、そろそろ屋敷の倉庫が魔石でいっぱいになりそうだからね。
それから数日後。
僕とセレナちゃんはアクア様が悠々とひなたぼっこをしている噴水にやってきた。
「アクア様~」
「バルくん~! そろそろいいかな!?」
顔を出して可愛らしく
というのも、以前からアクア様からとあるお願いをされている。それは――――――
「もちろんいいですよ! 約束ですし、でも本当にいいんですか?」
「うん! 最近凄く力が湧き出るようになったから!」
「分かりました。ただ、町は
「いいよ~東側じゃないんだ?」
「はい。東側よりも先に北側を開発したいんです」
「わかったのだ~!」
嬉しそうに話すアクア様からの提案。
それは――――まさかの町を広くしてくれないかという提案だった。
アクア様は水路でジアリス町を縦横無尽に駆け巡るようになったんだけど、やっぱりもっと駆け巡りたいという事で、町を広くしたら水路が伸びるからそれが目当てみたい。
今のジアリス町の規模でギリギリなのかなと思ったら、毎日魔石を食べているアクア様はもっと力強くなったらしくて、噴水から溢れる水の量をもっと増やせるようになったし、アクア様本人の力を使える回数も上昇しているそうだ。
毎日魔石を食べた事がなかったらしくて、こうなるとはアクア様も思わなかったらしいので、嬉しい誤算というのかも知れない。
早速北側にやってきた僕は空高く聳え立つ壁を取り壊した。
興味を持った子供達が見に来てくれて、崩れる町の壁に黄色い声をあげる。
噴水を中心に丸かったジアリス町は、北側に敷地が伸びてまん丸から楕円形みたいな形になった。
領民も増えて、新しく伸ばした土地での農作物もすぐに育て始めて、ジアリス町はどんどん大きくなり、遂にはジアリス街と呼ばれるようになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます