第7話 ジアリス町という町らしい
セレナちゃんのおかげでもう走る事なく町の案内をして貰った。
けど、実はちょっとだけ残念に思っていて、もっと走ってみたいと思ってたりする。
この町の名前はジアリス町といい、200人くらいが住んでいる町だそうだ。
そのうち成人してない人が30人で、大人は170人くらい。
町の周辺は荒れ地になっていて作物が育てにくくて、住むには難しい町だそうだ。
そもそもどうしてこんな場所に住んでいるのだろう? 今度、セバスお爺さんにでも聞いてみようと思う。
ジアリス町は全体的に柵で囲まれてはいるが、壁らしい壁はない。
ただ簡単に飛び越えられる高さではないから壁の役目は果たしているとセレナちゃん談。
玄関口は南と北にあり、南から続いた道を進んで行くと辺境伯様の領都に着くそうだけど、数日かかるみたい。
北の道を進むと敵国に着くらしいので、危ないから向かってはならないそうだ。
町の東には大きなはげ山があって、石ころくらいしか採石できないから、使い道もないという。
町の内部は北玄関口から入って来て、すぐにいくつかのボロい家が並んでいて、整理されてない道を進み、町の東側に少し高い丘に設置されているのが、僕がいま住んでいる屋敷だ。
屋敷だけは立派な作りになっていて、他の家と比べるとものすごい格差を感じる。
町の中央には何故か噴水があって、水がずっと湧き出ているんだけど、実はここに町がある理由がこの噴水だそうで、実はこれって噴水じゃなくて、井戸らしい。
僕が本で読んだ井戸ってもっとこう石で丸く囲って、中に桶を入れて紐で引っ張り上げて水を汲むモノだと思っていたんだけどね。本当の事を言えば、実は一回くらいやってみたかったというのが本音かな。
町の外は荒れ地なんだけど、実は町の中には肥沃な土地があって、そこで食べ物を植えて凌いでいるそうだ。
小さいのに、ものすごい速度で成長するらしい。
あとはこれといって珍しいモノもないらしく、殆どは住屋だけだった。
「キャンバル様!? ど、どうなさったのですか?」
屋敷に帰るとセバスお爺さんがものすごく慌てて迎え入れてくれる。
それと共に、隣には大きな身体を持ついかついおじさんがこちらを鋭い視線で見つめている。
このおじさんはジェラルドさんで、うちの護衛を担ってくれる人だ。
セバスお爺さん曰く、ものすごく強い人らしくて、普段から寡黙な雰囲気も相まってものすごく怖い。
「キャンバル様。誰かに追われましたか?」
珍しく声をかけてくるジェラルドさん。
「い、いえ! ちょっと走ってみたら、ものすごく汗をかいただけなんです。だから心配しないでください。みなさん」
「「…………」」
「あはは…………」
何とか誤魔化したかな?
すぐに風呂に案内されて、ゆっくりと身体を洗って食事を取り、その日はゆっくりと眠った。
ここに来て、毎日眠るのに少し時間がかかっていたはずなのに、走ったおかげなのかすぐに眠りについた。
次の日。
ぐっすり寝たおかげで身体が軽く感じる。
起き上がって外に出ると、廊下の窓の外から不思議な音がするので覗いてみると、ジェラルドさんが木刀を振り回していた。
初めて見る木刀に夢中になって眺めていると、それに気づいたのかジェラルドさんが僕を見つめて一礼して近づいてきた。
「おはようございます。キャンバル様」
「おはようございます。ジェラルドさん」
「早起きでございますか?」
「何だか身体が軽くて起きてしまいました」
「そうでございますか。セバスをお呼びいたします」
「い、いいえ! 大丈夫です!」
急いでジェラルドさんを止める。
今すぐ何かやって欲しいこともないし、ただ早く起きたし、昨日走ったから今日も走りたいなと思いながら散歩に出てきただけだからね。
「あの、ジェラルドさん」
「はい?」
「えっと……もしよかったら、走る方法を教えて貰えませんか?」
「走る……方法でございますか?」
「はい。昨日初めて走ったんですけど、上手く走れなくて」
「…………なるほど。かしこまりました。では動きやすい服装に着替えてこちらに」
「すぐに着替えてきます!」
僕はまた全力で部屋に走って向かった。
「…………」
◇
急いで着替えてジェラルドさんの所に向かった。
「では、ここから向こうまで走ってみてください」
「はい!」
僕はジェラルドさんに言われた場所まで全力で走り抜けた。
やっぱり息が上がって、胸が苦しい。
暫くその場で休んでいると、ジェラルドさんがやってきた。
「キャンバル様。どうして走りたいと思われたのかお聞きしてもよろしいですか?」
「えっと…………気持ちよかったから…………です」
「!?」
「へ、変ですか?」
「…………いえ。かしこまりました。これから走り方についてお教えします」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
思わずその場から飛び上がった。
あんなに疲れていたのに、今にも走り出せそうだ。
でもそんな僕を、肩に手を上げてジェラルドさんが止めた。
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