121.お姉様もお兄様も大好きよ

 私の家庭は少し複雑。お父様はアルムニア大公で、お母様は皇孫なんですって。ひいお祖父様はもちろん、高祖父の大お祖父様もいる。長生きしてくれて、本当にありがとう。


 大切な家族に、リリアナお姉様とナサニエルお兄様がいる。リリーお姉様はお父様の連れ子で、血が繋がってない。エルお兄様はお母様が一緒だった。でも全員皇族だし、関係ないわ。


 綺麗で凛々しくて優しいお姉様と、最近逞しくなったお兄様はどちらも私の家族だもの。二人はいつも私を連れて遊びに行く。それがとても嬉しかった。友人の話を聞くと、歳が離れた兄や姉とはあまり交流がないんですって。勿体無いわよね。


 エルお兄様は、リリーお姉様が大好き。きっと私とリリーお姉様が一度に危険な目に遭ったら、お姉様を先に助けると思うわ。そのくらい、お姉様を好きなの。見ていて分かるし、お母様も同意した。そんなお兄様が、何か企んでいる。


 誕生日が近づくと、そわそわし始めたの。だからお兄様の友人であるクレト様に、いろいろ聞いた。なかなか教えてくれなかったけど、泣き真似したらすぐよ。慌てふためいて、全部白状しちゃうんだもの。


 お兄様と同じ四歳も年上なのに、可愛いと思ってしまう。クレト様は青い目が綺麗で、もう一人のお兄様のような存在だった。うちに遊びに来ると、必ず私にもプレゼントをくれるのよ。甘いお菓子だったり、花だったり。高価じゃないけど、それが嬉しかった。


 リリーお姉様は、お母様が作ったお人形を大切にしている。マリアという名前で、羨ましかった。だからお母様にお願いしたら、お祖母様やお姉様も協力して人形を作ってくれたわ。七歳のお誕生日にもらったの。


 エルお兄様とクレト様は手作りのミニソファーを用意してくれた。お人形用だったんだけど、サイズを間違えて大きかったわ。小さくなくてよかった。滑っちゃうから、今はソファーが人形のベッドみたいになっている。


 話がそれちゃった。


 エルお兄様はとにかくリリーお姉様が大好きで、お父様とお母様みたいに結婚したい。そう聞いたら、協力するのが妹の役目よ。今年のエルお兄様へのプレゼントは、銀のイヤーカフにした。銀は魔除けで、表におまじないの模様を彫ってある。裏に名前を彫れるサービスがあって、リリーお姉様の名前を入れた。


 きっと喜んでくれると思うわ。指輪の方が外れなくていいけど、お兄様もお姉さまも剣を扱うから。指輪はしないのよね。私は剣を手に取る気はない。凛々しいお姉様に憧れるけど、多分無理だと思うから。


 誰かに守ってもらうのも覚悟だとお母様は笑う。いつもお父様が守るからかもね。私にもお父様みたいな人が現れるかしら。強くて優しくてかっこよくて、少しだけ可愛い人がいい。


 隣でプレゼントの剣を大切そうに抱き締めるリリーお姉様は、すごく幸せそうだった。自分で気づいてないのよね。エルお兄様のこと、お姉様は大好きなのよ。将来二人が結婚したら、邪魔しないようにお嫁に行こうかな。お祖父様達と暮らしても楽しそう。


 クレト様のお話では、明日、お兄様はお姉様に「好き」って言うわ。安心して! 私は二人の味方をする。大好きな二人が結婚したら、もっと好きになるだけ。大好きよ、リリーお姉様、エルお兄様。ずっと私の宝物でいてね。

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