113.野営の肉団子を二人で作った
そう思ったけど、かなりいい勝負だったみたい。見守った騎士達が興奮した顔で教えてくれた。お祖母様とお母様にエルを預け、リリアナと一緒に野草摘みを手伝う。騎士や兵士の中に、専門の知識を持つ者がいるの。摘んだ薬草に毒草が混じっていないか確認してもらい、今度は料理担当の兵士と肉団子を作った。
摘んだ薬草を刻んで混ぜ、鍋に入れる。お湯は危険なので、リリアナとこっそり挑戦した。見つかって叱られたけど、それも楽しいわ。素人が混じれば邪魔だと思うのに、彼らは快く協力してくれる。こんな優しい人達が暮らす国を、生活を守るのが皇族の役割。そう自覚できたのが、一番の収穫だった。
お祖母様やお母様へ、鍋に入れた薬草入り肉団子スープを運ぶよう、リリアナに器を持たせた。二つの器が載ったトレイを両手で掴み、ゆっくりと歩いて近づく。先にお母様が一つ受け取り、もう一つをお祖母様が手にした。カトラリーはフォークのみ。洗い物を減らす野営のルールなの。
「頂くわね」
微笑んだお祖母様に、リリアナはどうぞと頷いた。お母様は肉団子から口をつける。二人が味を褒めてくれたのは、私達が捏ねたのを知ってるんだと思うわ。侍女か騎士に聞いたみたい。
嬉しさで弾む足で戻ったリリアナを抱き締める。
「うまくいって良かったわ」
「美味しいって言ってもらいました」
私達も自分の分を手に移動し、お祖母様達の近くに腰を下ろした。用意された椅子でゆっくりと頂く。思ったより香草が強くて、驚いた。入れすぎちゃったかしら。
飲み終えるのを待っていたように、エルが泣き出した。馬車に戻り抱き上げる。果物を摩り下ろした物を与えた。もぐもぐと口を動かし、三口も食べれば口を開かない。いつもなら違う離乳食を用意するけど、野営だとそう簡単にいかない。なんとか食べてもらおうと工夫し、頑張ってあと二口食べてもらった。
「ぶぅ」
不満そうに口を尖らせて吹き出す仕草をするので、笑って唇を押し戻した。
「悪い子ね、エル」
抱き締めて額や頬にキスをした。機嫌が良くなったエルは、はしゃいだ声を立てる。連れ出すと、馬車の外でリリアナが待っていた。
「あら、リリアナ。待たせちゃった?」
「ううん、エルが泣いた声が気になったの」
「もうご機嫌よ」
笑顔のエルを見て、リリアナはほっとした顔で手を伸ばした。エルの小さな手が、きゅっとリリアナの指を握る。
二度目の手合わせを終えたひいお祖父様と将軍閣下が戻り、私達も合流した。騎士達と一緒に火にあたり、お茶を飲んで過ごす。日が暮れて馬車に戻るまで、リリアナはエルのそばを離れなかった。
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