14.荷物

 マジックバッグとアイテムボックス。

 果たしてどれくらい中身が入るのか。


 夏ミカンの木から、実をつぎつぎ収穫してマジックバッグに詰めていく。


「かなり入る……」


 夏ミカンはすべて収納された。

 収納袋は不思議で重さも中身とはほとんど関係なく軽かった。

 使った感じ夏ミカンを詰めた後、マジックバッグの空きは少しだけだ。


 例年、夏ミカンは食べきれずに痛む前に取ってしまうと、冒険者ギルドへ出荷してしまう。

 今年はとりあえずマジックバッグに収まった。

 低容量で金貨1枚のマジックバッグの容量は背負い籠5個分くらいだった。


 マジックバッグ内の夏ミカンを取り出してはアイテムボックスに移していく。

 アイテムボックスに入れていくと夏ミカンすべてを移動させた時点で、アイテムボックスは容量半分といったところ。

 だから容量は背負い籠でいうと8個分ということになる。


 馬車と比べれば到底少ないものの、かなり入る。


「それでじゃのお」

「うん」

「マジックバッグは時間経過があって、アイテムボックスはないんじゃ」

「へぇ」

「料理や傷みやすい食料はアイテムボックスに入れておくといいぞ」

「分かったわ」


 ふむふむ。選べるというのはある意味便利だ。

 熱すぎて食べられないものはマジックバッグに入れておくといったこともできる。

 その他にも世の中には発酵食品や漬け置きなど時間経過を必要とする料理法などがあった。


 夏ミカンはとりあえず痛まないようにアイテムボックスに入れたままにしておく。

 レモンも木になっているが、これは例年少しずつ取りながら使っていくので、10個くらい収穫してアイテムボックスに入れておく。


「そうそう、調味料とか、薪とかもいれよう」


 予備の塩の小袋1つを入れておく。

 塩は値段が高騰することがたまにある。理由は不明だが困るので、うちでは予備の小袋は2つ以上を常備することにしてあった。

 今は丁度お金もあって4つあるので大丈夫。


 冬の暖房とお風呂用の薪がある。

 的当てに使っている木の板がそうだ。

 割れても薪には使えるし、大量にあるから的も減らない。

 それをお風呂5回分くらい。

 すでに魔法の的当てで割ってあるものを集めて、収納した。


 これで野外で火を使うときにも便利だ。

 お金に余裕ができたら旅行用の簡易魔道コンロもほしい。

 欲しいリストに入れておこう。



「さて、買い出しに行きますぞ、サフィアちゃん」

「お、おう」

「露店で買い食いしまくろう」

「それはいいな」


 お昼はお母さんとは別にしてもらって、買い食いするのだ。

 時間はもうお昼のピークが完全に終わった後だった。


 商業区のメインストリートに到着した。

 幅は馬車が3台以上。路駐に加えすれ違いができるだけの幅が確保してある。


 その隅には露店の屋台が並んでいて、いろいろな食べ物を売っていた。


「まずは定番、ホーンラビットの肉串、100パソ」


 金貨1枚で千本買えるがそんなに売っているわけがないし入らない。


「おじさん肉串先に2本ください。はいお金」


 銅貨2枚を渡す。

 すでに火で炙っている焼きたてがあったので、すぐに貰えた。


「ありがとう」

「ありがと」


 二人でもぐもぐホーンラビットの肉串を食べる。

 温かくて美味しい。

 これは塩味のみだけど、肉のあっさりした旨味と塩気でそこそこ美味しい。

 コスパに関して言えば、最強だと思う。


「おじさん肉串100本ください。マジックバッグ持ちなので。料金は先払いでいいですし、少し時間かかっても待ちます」

「あ、ああって100本か? お金は確かに。どこかの団体さんのお使いかい? 小さいのにえらいね」


 100本でも銀貨1枚しかしない。ぶっちゃけ安いと思う。

 ちょっと金貨のせいで金銭感覚がくるってきた。

 前は千パソ、大銅貨でも大金だったのに、世の中は変わるものだ。


「ええ、まあそんなところです。できるまでほかの店でも注文するので」

「あいよ、また戻ってきてくれ」


 こうして隣の店に移動する。

 こちらはサンドイッチのお店だった。

 ブルーウルフ肉の甘辛煮込みをパンで挟んだものだ。


「すみません。先に1つだけ」

「あいよ」


 サンドイッチを2つに分けて、二人で食べる。

 お店はいっぱいあるので、少しずつ食べることにする。


 値段は400パソ。

 一般的な黒パンが200パソなのでお肉の値段は200パソだ。

 タレは南国産の香辛料が使われていて、また砂糖も使ってある。

 これでこの値段なら良心的だ。


「すみません。30個、作ってもらっても大丈夫ですか?」

「いいですけど、1個ずつ挟むから、ちょっと時間かかるよ」


 店主のお姉さんは苦笑いだ。

 銀貨1枚と大銅貨2枚を渡す。


 さて次のお店だ。

 その隣の店主は私を見ていたので、ギョッとした顔をした。


「お嬢さんたち、けっこうお金持っているみたいだけど、まだ買うのかい?」

「ええまあ」

「別にいいけどよ。どういう理由があるのか、気にはなるな」

「ちょっと買いだめしようと思いついて」

「ただの思い付きなのか?」

「あはは……まあ、その、ごにょごにょ」


 笑ってごまかすに限る。

 こういう時、少女の笑顔に人々は弱い。ちょろい。

 困ったときの涙にも弱い。やっぱりちょろい。


 さて、気を取り直して、このお店は何を売ってるのかな。

 ビッグスラッグの焼き物だった。


 一口大に切ったものが串に刺さっていて、塩で味付けしてあるものだ。

 そう説明するとホーンラビットの肉串に似ているように思うかもしれないけど、ビッグスラッグは要するにオオナメクジなので、リクウミウシに似た食感の食べ物だった。

 つまり焼き貝だということだ。


「えっと、じゃあ30個ください」

「はいよ、すぐ焼くから待ってておくれ」

「はーい」


 さて私たちはくじけない。

 さらに隣に移動する。


 ここはオオダンゴムシのピリ辛焼きだ。

 オオダンゴムシは他の食べ物で言うとカワエビに似ている。

 甘味があり、エビの風味がかなり好きだ。


 こちらも串焼きになっているので、50個ほど注文しておいた。


 最初のお店に戻り、受け取っていく。

 料金は先払いだったので、みんな苦笑いだけど、いいんだ。


 帰りに辛い香辛料とお肉に使ういい匂いのする香辛料を買ってくる。

 それから小麦粉を1袋買っておいた。

 うちではメインが麦粥なので、小麦粉はあまり使わないのだけど、お肉のムニエルとかをすることもある。

 小麦粉を水で練って焼く、薄焼きパンを作ることはある。

 あとはすいとん。小麦粉を練ってお団子にしたものをスープに入れる。


 小麦粉はあれば何かと便利なので、入れておく。


 こんなそんなでお料理系の荷物を詰め込んだ。

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