7.薬草の選別、鑑定
ヒール草には薬効が高いものと普通くらいのものがあり、バラつきがある。
そのため薬師や錬金術師は、ポーション10個分ぐらいのヒール草を一度に使用して水に抽出し平均化してその差を吸収するようにしている。
ポーションごとに分量を分けて、錬金魔法でヒーリングポーションにする。
ポーションの完成品が青ければ高い薬効があり、緑色だと薬効が少ない。
だから完成させないと効果は分からない。
薬草1本分ずつ錬金しようとしても最低分量があり失敗してしまうため、効果が高い薬草のみ集めるのは無理難題だった。
「ふと思ったんだけど、薬効が高いヒール草だけ集めたら、すごいポーションができるんじゃない?」
「そうじゃな」
今はおじいちゃんのところにいる。
「問題は見分けるのが困難ということじゃな。何か見た目の違いが発見されれば、いいんじゃがな」
「今まで研究していて、誰も見つけていないの?」
「うむ。30センチくらい成長したものがよい、というのは常識じゃろう」
「うん」
私もお母さんもそれは知っている。
だからいつもヒール草が30センチくらい伸びたものを選んで、根本を刈ってるんだし。
「葉の裏に白い毛がたくさん生えているものがよい、という噂はあるのう」
「それも知ってる。でもみんな普通に裏は白いよ」
「そうじゃろ」
うん。どの薬草も葉の裏は白い毛でびっしりだ。
そういうものだし、それは特別ではない。
「ねぇねぇ、聖魔法や闇魔法で、品質の高いヒール草かどうかチェックできる魔法とかないの?」
「ないことはない」
「えっ、あるの? それなら普通に仕分けできるんじゃ?」
「それがな、聖魔法および闇魔法に適性がないと無理なんじゃ」
「そっか、私無理かなぁ」
「エミルちゃんは、闇魔法は使ったことがあるかい? 適性は1以上はあるのだろう?」
「うん1はあると思う。使ってみたことはないよ」
「じゃあ、分からんね」
「そっか、やってみないと分からないんだ」
「うむ」
おじいちゃんは少しだけ考え込むと、今度は得意な顔になって言った。
「キーワードは『鑑定』じゃ。頭の中に、その対象物が何であるかを思い浮かべる魔法なんじゃ」
「ふーん」
「実はワシは鑑定ができる。ただし適性がどちらも1での。ヒール草は鑑定してもヒール草だとしか分からない」
「そうなんだ。それじゃあダメだね」
「もっと高レベルの鑑定を使えば、どんなヒール草かも分かるらしい」
「へぇ。ちょっと庭のヒール草とってくるね」
鑑定の要件は、全属性が最低1。それから聖闇属性が2以上だとされているらしい。
家に帰って急いでヒール草を5本、収穫する。
これは右側の聖水で育てたほうだ。
左側も遅れつつこちらにも聖水を撒くようにしたので、こちらも今ではモサモサしてる。
ヒール草を持っておじいちゃん家に戻ってきた。
「じゃあやってみます。これは何ですか神様――鑑定」
頭の中に、情報が書き込まれるというか、浮かんでくる。
――"ヒール草:高品質"
「すごい。できた。やったー。高品質のヒール草だって」
「ほほう、できたのかい?」
「うん。もう一回。2つめ」
――"ヒール草:普通品質"
「2つめのこれは普通品質だった。やっぱり分かるみたい」
「おほほ、すごいじゃないか」
「うん。でも結構魔力使うみたい。何十回、何百回って使うのは無理そう」
「エミルちゃんは闇は2くらいなんじゃろう」
「うん、たぶん」
残りも鑑定する。3つとも高品質だった。
確かによくよく見ると、2番目のものだけなんとなく精気が弱いような気がしてくる。
ちょっとだけ元気がないのだ。
「できた、わかった。すごい。でもなんとなくしか分かんない」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
とにかくこうして私ははじめて鑑定を使った。
次の日、草原に行って採取をした中で、精気が強そうなものを選んで、鑑定を掛けていく。
勝率は3分の2くらいだろうか。
20本ぐらい試して、15本だけ高品質だと鑑定された。
これだけで魔力をだいぶ消費してしまった。いざというときの残りの魔力を考えればこれでぎりぎりだ。
それを分けておいて、冒険者ギルドの受付で提出してみる。
「あのヒール草15本なんですけど、高品質なものみたいなんです」
「高品質ですか? 見ても違いはあまりないように思えますが」
「あの、あの、私鑑定がちょっとだけ使えて」
「申し訳ありません。ギルドでは大量品での鑑定は行っていなくて……このまま薬師ギルドへ高品質『らしい』ヒール草として卸して、向こうで薬効を確認してから、差額の代金をお支払いする、というのはどうでしょうか」
「あ、はい。それで大丈夫です」
「では、今日中に薬師ギルドへ回されるので、また2日後くらいに私へ確認をお願いします」
「わかりました」
うふふ。一応仮だけど、認めてもらえた。
場合によっては受け取り拒否という門前払いされる可能性もあったのだ。
そして2日後、また薬草採取をしてギルドへ向かう。
「すみません、受付のお姉さん」
「はい、エミルちゃんね。覚えているわ。おめでとう。あなたの薬草は高品質のものだと認められたわ」
「本当ですか?」
「ええ。すべて高品質のもので、ヒール草であるのにハイポーションが作れたそうなの」
「――ハイポーション」
それはヒール草だけではなく、貴重な材料などを投入しないと作れない上級ポーションの名前だ。
普通の怪我だけでなく、部位欠損などにも効果があるとされ、非常に、うん。
非常に高い。
「それでお値段なんですけど、金貨3枚になります。よかったね」
「きっ、金貨3枚。ああわわあわわ、金貨ああ」
「はい。本当ですよ、はい」
私の手に金貨が渡される。
すごい、金貨。
黄色に輝く、黄金だとは知っていても、触るのも見るのも、生まれて初めてだ。
「すごい」
「やったわね、さすが私のエミルちゃんだわ」
お母さんも大よろこびしてくれた。
こうして金貨3枚をゲットした。
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