6.草原探検
薬草採取の仕事を終えサフィアちゃんと草原探検に行くことになった。
草原にとんぼ返りする。
「さて、では草原に向かうね」
「おお、了解」
私の前を狼耳をツンと立てて、スカートから出ている尻尾を揺らしながらサフィアちゃんが歩いていく。
獣人ちゃんには、尻尾が生えている。かわいい。
なんで人間の中でもヒューマンは尻尾がないのだろう。
「あぁあ、私もかわいい尻尾ほしいなぁ」
「そうか、別になくても困らないだろ」
「だってかわいいんだもん。尻尾」
「そんなもんか、よく分からんな」
サフィアちゃんと並んで歩いていく。
門のところに到着した。
「わぁ、いっぱいいる」
「
馬鳥の一種、ファーストバードだ。またの名を
二本足で走って、大きな翼はあるけれど退化していて飛べない。
ただ威嚇するときは広げて3メートル以上になる。
体毛は白で翼だけ黒い色をしている。
首が長めで胴体が大きい。
それが10羽ちょっといて門前で待機している。
旅商だろう人が門番さんにお金を渡していた。
賄賂じゃないよ、適正な通行税だ。
「よし、人乗せが3羽、荷駄が10と数はあってるな、通ってよし。――いい旅を」
「ありがとうやした」
商人のおじさんを乗せた馬鳥と護衛を乗せた馬鳥、それから荷物を満載した10羽あまりの馬鳥が一列につながれていて、最初はゆっくり、しだいに走り出す。
走ったらどんどん加速して行ってしまった。
「すごい、はやーい」
「だな」
荷物は乾燥ハーブ草だろう。
割れたりしないし、軽いから馬鳥に最適だ。
かなりの量を載せられる。
きっと遠方だろう。冬は薬草の生産量が減る。
春になって収穫量が上がって、値段が少し安くなる今が、商売時なのだ。
馬鳥での輸送は、馬車や馬よりもスピードが速い。
1羽ずつ運べる量は馬よりは少なくなってしまうが、団体行動が得意なので、こうやって隊列を組んで行動させる。
「そこのお嬢ちゃんたちは、どちらへ?」
「あ、すぐそこでタンポポを採ったりします、遠くへは行きません」
「そーか、そーか、それならいいな。通っていいよ」
「ありがとうございます」
城壁の見える範囲で、タンポポを探す。
「たんぽぽぉ、たんぽぽぉ」
「ふふ」
サフィアちゃんが笑う。
「そんなに私の歌、変だった?」
「そうではないよ。ちょっと可愛いなと思っただけさ」
「ふぇ」
タンポポを探す。
できるだけ葉っぱの枚数が多くて大きいものを探して、これは薬草と違い、根っこを使うので、根っこごと掘り出す。
「うんしょ、うんしょ」
掘るのは少し大変だ。
そうして見て回っているうちに、城壁の影に面白いものを見つけた。
「みてみて、リクウミウシ」
「おぉ、立派立派」
大きさは40センチくらい。
牛に似ている海の生き物、ウミウシ。
ウミウシにそっくりで陸にいるから、リクウミウシ。
ややこしい。
ナメクジの大きいのだ。
角が2本生えていて、背中にお花のお尻が生えている。
角とお花は赤で他は青に白い点々の縞模様だ。
「どうする? 持って帰る?」
「おお、エミルの好きにしていい」
リクウミウシは日向よりも日陰が好きなので、こういう高い城壁の影になる場所にたまにいる。
一生懸命に探せば1匹くらいは見つかる。
そして食べると、貝の仲間なのでうま味があって美味しい。
背負い籠にリクウミウシを放り込む。
「えへへ、結構重い」
「頑張ってエミル」
「うんっ」
背負い籠に収まったリクウミウシは大人しくしている。
この後食べられちゃうとも知らずに。
「スライムだ」
今度はスライムが出てきた。
半透明の水色で、おまんじゅうみたいな丸い形をしている。
少しウミウシにも似ているけれど、お花はついていない。
「炎よ――ファイア」
バンッ。
燃え上がる音とともにサフィアちゃんの火の玉が飛んでいき、スライムに命中、穴が開いてはじけ飛んだ。
「すごい、すごい」
「まあ、これくらいはな」
こうして今度はスライムを倒した。
残りにはべっちゃりしたスライムの透明な液体が飛び散って、その中心に半透明の紫色の石、魔石が落ちていた。
「魔石ゲット」
「やったね、サフィアちゃん」
「おお、コレクションに加えよう」
どうやらたまに遊びに来てはスライム狩りをしているらしい。
私が向こうの日向の草原で、薬草を採っている間に楽しそうなことをしている。
さてタンポポも収穫できた。
それからそのあともスライムが5匹くらいいたので、退治した。
おうちに帰ってきて、タンポポを干す。
「リクウミウシを解体します」
「ほーい」
お腹側に包丁を入れて内臓を出す。
お腹の中には緑色のものが詰まっていた。草や薬草を好んで食べる。
内臓を取り出したら、あとは固い口を取って、ぶつ切りにすればオーケーだ。
あと魔石も取れる。ウミウシの魔石は緑色だった。
「さて、はんぶんこね」
「うん」
半分をサフィアちゃん家にあげる。
これで今日の夕ご飯は、ウミウシのお肉が入った麦粥になると思う。
お母さんが予定通り、麦粥を作ってくれて、それにウミウシも入れてある。
コリコリとした食感で食べごたえもあった。
「うん、おいしいぃ」
「そうね。このウミウシ、うま味があっておいしいわ」
今日もご飯はそこそこ美味しい。
ウミウシは捌くのが面倒でなければ、とってもいいんだけど。
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