8 猫モモと王家一家

 日曜日のお昼。

 今日は週に一回の王家一家が集まって昼食を食べる日です。


 上から長男、次男、長女の三人は王立学園に通っています。

 普段はそこの学食でご飯を食べています。

 朝と夜は個室でそれぞれがご飯を頂いているようです。


 私はその日曜日の昼食におよばれすることになりました。ペットの猫として。

 みんなが揃っている食堂に王様に続いて私も入室しました。


「知っていると思うが、これがペットの猫のモモだ。みんな、よろしくたのむ」

「にゃーん」


 私がつとめてかわいらしく猫の真似をすると、みんな笑顔を浮かべます。


「ああ、君がモモか。メイドが言っていたよ」

「モモちゃん、よろしく頼む」


 長男と次男です。


「モモちゃん、よろしくお願いしますね。エステルがお世話になっているそうで」

「モモちゃんね。かわいい」


 こちらが長女と次女です。

 続けてエステル様も軽く挨拶をしてくれます。


 そしてエステル様が私にガバッと抱き着いてきます。


「えへへ、いい匂い」

「にゃんにゃぁ」


 ぐりぐりと顔をこすりつけてきます。


「ほう、どれどれ」


 みんな興味を示したのか、鼻をクンクンさせていました。

 そしてみんなで順番に抱き着いて抱擁を交わしました。

 今のところ、好感度はかなり高いようです。


「エステルが最近元気なのは、モモのおかげなのだ。桃娘の血と助言が大いに役に立った」


 王様が説明してくれます。

 みんな関心があるようで、うなずいていました。


 挨拶が終わり、ご飯が始まります。


 末席についた私の前には、皮をむいてカットされた新鮮な桃があります。

 私はその桃をむしゃむしゃ食べます。


 この桃。季節を問わず入手するために、取引先の大商店にある高価な時間停止機能がついた迷宮産のマジックバッグが使われているそうです。

 普通の人間が作ったマジックバッグは時間停止機能がありません。

 他にはアイテムボックスのスキルにも時間停止機能があるのは知られています。

 しかし特定の人に持たせておくと、その人が死んでしまうと取り出せなくなってしまいます。

 セキュリティー上は個人よりはマジックバッグのほうが好まれるのだそうです。


 とまあ、そういうことで桃の管理には大金が掛かっています。

 王家の人たちにもデザートとして桃のパイが出されました。

 私はもっぱら生の桃専門家です。


「うふふ、妹が増えたみたいでうれしいわ」

「にゃんにゃん」


 二女のお姉様、マリエール様が私をなでてくれます。


「本当にピンクの髪なのね。珍しいわ。染めていないんでしょう?」

「にゃう」

「天然で綺麗なロングの髪はお手入れも大変ですわね」

「はい、そうですね」


 王家一家の前ではしゃべっていいはずなので、肯定しておきます。


 髪の毛はメイドさんに手入れをお任せしているものの、やはり大変には違いありません。

 これも村でずっと大切にされてきた賜物です。

 金貨のためだったとはいえ、やっぱり綺麗な髪は美少女の誇りでとてもうれしいです。


 マリエール様に立ったまま後ろから抱きしめられて、お話をします。


 マリエール様もほのかにいい匂いがして、私はドキドキしてしまいました。

 それに女の子の体は柔らかくて、暖かくて、その温もりがとてもきもちいいのです。

 ずっと抱かれていたかったです。


「そろそろ私にも貸してね」

「いいですよ、ソシエラお姉様」


 マリエール様から解放されて、今度は長女のソシエラ様に抱かれます。


「ふふ、本当にいい匂い。桃の匂いするわね」

「えへへ」


 ソシエラ様もやはり女の子なので、抱き心地は最高でした。

 女の子に抱きしめられると、とても気持ちがよくて、安心できます。

 癖になってしまいそうです。


 普段のエステル様も悪くはないのですが、まだ肉付きの薄い小さな女の子なので、感触は全然違います。


 ギュッと丁度よい力加減でソシエラ様に抱きしめられます。

 匂いも嗅がれて、鼻を押し付けてくるのですが、全然嫌ではありません。

 むしろ少しくすぐったくて、なんだかイケないことをしているみたいです。


 温かい陽だまり、太陽神というか、とても優しい感情に満たされます。


 みんなの間では、私のことや学園のことについて会話をしていました。

 学園のことは分からないので口ははさみません。

 でも何かしら有用な情報があるかもしれないので、一応としてフンフンと聞いておきます。

 いつ何が役に立つか分からないのです。


 持ち得る情報が重要だということは前世で痛いほど知っています。


 ネット検索などという手がない以上、実地で集めるほかありません。


「まぁ、猫ちゃん、こっちへおいで」


 こう言って私を問答無用で抱きしめたのは王妃様でした。

 ぐぬぬ、苦しい。


 王妃様は体は痩せているのですが、そのお胸が大きくてその谷間に顔が埋まってしまいました。

 う、うう、柔らかくてぽよんぽよんしていますが、そのお肉に押しつぶされそうになっています。

 息が、苦しい。空気を頑張って吸い込みます。

 お胸の攻撃力はかなり高く、私は大変でした。


 とても私を受け入れてくれていることは分かりました。

 でも王妃様のお胸には要注意とします。


 こうして王家一家とのお食事会は、順番に抱きしめてもらい、和気あいあいとした雰囲気で終えることができました。

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