第2章 昼下がりにはモネの庭で、ミモザサラダとチキンスープ
2-1 二年後の午前四時
置時計の秒針が、枕元で時を刻む。午前三時五十分。私は、クッション張りの出窓から起き上がった。
忍び足でアトリエを歩き、桃色のカーディガンを肩に
夜風はほんのりと甘い匂いがして、例年よりも暖かい。白いガーデンテーブルと椅子のそばには、季節が一回りして見慣れた樹木が、枝葉を
きっと、ここにいると思っていた。月光が落とす花の影を踏んで、木の下にたどり着いた私を、相手は朗らかに迎えてくれた。
「こんばんは。澪」
「こんばんは。彗」
「起きてくると思ってたよ」
二年前よりも背が伸びた彗は、大人びた顔で微笑むと、私にマグカップを差し出した。私は長い髪を耳にかけると、
「ホットチョコレート。澪が、以前に紅茶を
「私も、何か用意したらよかった」
「じゃあ、明日も二人で起きようか?」
「朝、起きられなくなるよ。一限、講義が入ってるのに」
ささやかな言の葉と、ホットチョコレートの湯気を
再会の日から二年たった今も、私たちは二人でミモザを見上げている。それが少しだけ不思議で、くすぐったい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます