第14話 ヒモスとの再会

「おいおい、せっかくの再会だ。ほどほど穏便にしないのか?」

「殺す! 殺してやる!」

 ムートは何度も何度もヒモスに斬りかかる。しかしヒモスはそれを腰についていた小型のナイフでさばききっている。

 そしてヒモスはムートの腹部を蹴り飛ばした。

 ムートは家の壁を突き破り、外の木を何本かへし折って止まった。

「く、クソが!」

「何を怒っているんだよ、バーサクスプーンのムートさんよ」

「お前が、アマレを殺したからだ!」

「アマレ?」

 ヒモスは少し考え、「ああ」と思い出した様子だった。

「アマレか、懐かしいな。三人で冒険したもんなぁ。アマレは元気か? ああ、死んだか、オレが殺したもんなあ」

「貴様! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」

 ムートは再びヒモスに斬りかかる。上段からの気合の一撃! ヒモスはオーラをまとった魔剣を引き抜き防御する。

 ムートの剣とヒモスの魔剣は火花を散らす。ヒモスは再びムートを蹴り飛ばし、間合いを作る。 

 しかしムートは爆ぜたような勢いで、再びヒモスへと突進していく。

「殺す! 殺す! 殺す!」

 閃光のような速さで、ムートはヒモスへぶつかる。ヒナにはムートがどこにいるのか? それすらも知覚できない速度だった。

 しかし、ヒモスはそのムートを楽々はたき落とし、立ち上がろうとするムートの頭に足を乗せ、踏みつけた。

 もがくムートにヒモスは語りかける。

「騒ぐなよ、バーサクスプーン。聖剣を使ってこの程度なんだろ? 諦めろって。お前にオレは殺せねえ」

 足でムートを踏みにじる。その後ヒモスは後ろに声をかける。

「ウル。後始末しとけ」

するとヒモスの後方から、黒いローブの魔族ウルが現れ、恭しくお辞儀をする。

「仰せのままに」

 ヒモスは一段と深くムートを地面に埋め込み、ウルに場所を明け渡す。

 ウルは手を振り上げる。そして魔力を集中し漆黒の剣を形成、それをムートへと振り下ろした。

「しいいいねええええ!」

 激しい金属音。ウルの剣を斬り払ったのは双剣を携えたエルフだった。

「メルロイ! 貴様、倒したはず!」

「そなたにやられる私ではない」

 ムートはガバリと起き上がり、魔法を詠唱しているヒモスに斬りかかる。

「ヒモス!」

 ムートは剣を振る。しかし手応えはなかった。ムートが斬る前にヒモスは既にその場から消えていた。ヒモスが唱えていたのは転移魔法だったのだ。

 ムートはその勢いのまま地面を転がる。そして体を起こし、拳で地面を殴った。

「くそ、ようやく追いついたと思ったのに! 手がかりが……って、あるじゃないか」

 ムートはニヤリ笑い、後方で戦っているメルロイと魔族を見る。勝負は全くの互角。ふとしたことで、勝負の行方が変わってくるかもしれない。

 ムートはウルに斬りかかった。ウルはムートの剣を受け止める。

「ぬぅっく、き、貴様!」

「ヒモスのこと話してもらうぞ!」

 互角の戦いに亀裂が入り、ウルは劣勢となった。しかし、ウルからは余裕が消えなかった。

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