第15話 ウルとの戦い

 メルロイとムートの連続剣をウルは多少の傷を負いながらもよく捌いていた。

 しかし、余裕はあっても劣勢は劣勢。一人との間合いをとっても、もう一人が間合いを詰めてくる。

「あんた、名前は?」

「メルロイだ」

「オレはムートだ」

「知っている」

 二人はそんな口をきく余裕まで出てきた。

 ウルは得意の魔法を唱えようとするも、今のままでは詠唱の時間が取れない。

「仕方ありませんねぇ」

 ウルは飛び上がった。

「ウル!」

 メルロイは叫んだ。

「メルロイ、そしてバーサクスプーン。確かにこの姿では失礼だったかもしれませんね。ならば、もう少し本気を出してあげましょうか」

 ウルは力を込める。すると、ウルの体は筋肉で盛り上がり、漆黒のローブを破ってもまだ体が大きくなっていく。背中には二本の大きな黒いツノが生え、青かった肌も、生にくのような色に変化した。エクスアーマーほどの大きさに巨大化したウルは地面に降り立ち、ムートとメルロイを見下ろしながら言った。

「じゃあ、第二ラウンドといきますか」

 ムートとメルロイは各々の剣をかまえ直す。

「図体ばっかデカくなったって意味ねえんだよ!」

 ムートはウルに向かって駆ける。メルロイもそれに続く。

 しかし一番先に、ウルを攻撃したのはヒナの初級炎魔法「ファイアアロー」だった。

「まだ小虫が……」

 と言ったところでウルはヒナに気づいた。

「ほう、探していた聖石の所持者ですか。ここで叩き潰しておけば、陛下もお喜びになるでしょう」

 ウルは、ムートとメルロイの攻撃を手で払う。

「うるさいカトンボめ、先に始末してあげましょう」

 ウルはターゲットをメルロイにし、連続で拳を放つ!

 メルロイは双剣でなんとか防御する。しかし、ウルの猛攻は止まらなかった。

 ムートからの攻撃を無視し続けながらの、ウルの攻撃を、そのうちメルロイは防御しきれなくなる。

「グッ!」

 ウルは双剣をへし折り、そのままメルロイの腹部へ拳を埋める。メルロイはヒナのいる辺りまで吹っ飛んだ。

「メルロイさん!」

「大丈夫だ」

 メルロイはそう言いつつ立ちあがろうとするも、ダメージのあまり立ち上がれない。

 ヒナは回復魔法の詠唱を始める。

「バーサクスプーンだけでは勝ち目は薄い」

 メルロイは口にたまった血をベッと吐き出し、魔法の詠唱を始める。

 一方でムートは、ウルの攻撃をなんとかかわし続ける。

「ほらほら、防御ばかりでは、そのうち攻撃に当たって死んでしまうかもしれませんよ」

 とは言っても、ウルは凄まじい勢いでムートに迫る。

 気を抜いた瞬間、ムートの小さい体ははウルの攻撃を連続で食らうことになるだろう。それはムートの死を意味する。

「その程度では、陛下の足元にも及びませんねえ」

「テメエ!」

 ムートはウルの攻撃をかいくぐり、なんとか一撃を食らわせた。

「ほほう、さすがにバーサクスプーンと言われた男。中々やりますね……だが、ここまでです」

 ウルは力をためる。何かしてくる!

ムートはこのスキにウルから間合いをとり、剣をかまえ直し、自らも力をためる。

「クアアアアアア!」

 ウルの肩の筋肉が盛り上がっていく。そして、ウルはムートに向かって突進した。

「食らえバーサクスプーン! ひき肉にしてやる!」

 ムートは剣に、全身に魔力を込める。

「アマレ、オレに力を貸してくれ!」

 剣を輝かせたムートは突進してくるウルに突進していく。そして両者は激突した。

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