第12話 エクスアーマーとの戦い
道中二十人の盗賊を屠ったムートは、なんとか自前のアイテムを取り戻していった。
「よし、剣も取り戻した」
「後はライトニングブレイブね」
「ああ」
そしてムートはヒナとともに盗賊のアジトの入り口までやって来た。外に出る前に、様子を伺う。
「ザルトが三機と、ライトニングブレイブか」
「面倒なことになったわね」
「まあな」
敵戦力の確認が済んだ後、ムートは自らの剣をグッと握りしめ、ゆっくりとした歩調で盗賊の前に出て行った。
「テメエ! どうやって出てきた!」
当然ながらいきなり見つかった。
「出してくれって頼んだんだよ。ほどほど穏便にな」
数人の盗賊がムートに襲いかかる。
しかし避けるでもかわすでもなく、盗賊たちはムートに斬り捨てられていった。
「読めてんだよ」
「行け! いくらんなんでもザルト三機には勝てるはずがない!」
三機のザルトがムートを襲う! ムートは脚部に脚部に魔力を集中させ、目にも止まらぬ速さで動く。
「なんだこの速さは! ぐわっ!」
と、ムートはザルトのメインカメラを貫く。
「ヤロウ!」
ともう一機のザルトがムートをハンドアックスで薙ぎ払おうとする。しかし壊したのはメインカメラの壊れたザルトの胸部装甲だった。
「危ねえ!」
「どこいきやがった!」
「このヤロウ! 謝りやがれ!」
と、仲間割れが始まったところで最後のザルトをムートは相手にしていた。
「テメエ……普通のガキがここまで戦えるわけがねえ! 何者だ!」
「オレか? オレはプルス族のムートだ。ただの剣士だよ」
「ムート? まさかあのバーサクスプーンのムートだとでもいうのか?」
「ヤベエのを敵に回しちまったぜ」
怯える盗賊に対し、ヒナは「バーサクスプーン?」と小首を傾げる。
「ヒナさん」
「神父さん。みんなも」
「彼バーサクスプーンだったんですね」
「バーサクスプーンってなんですか?」
神父は少し考え、ヒナに話す。
「ムートさんは昔ちょっとした大きな敵と戦って勝ったんです。その戦い方がちょっと激しかったんです」
「温和な種族なのに?」
「温和な種族だからです」
ヒナはその一言で納得する。
「それでみんなからバーサクスプーンと呼ばれるようになったのね」
「はい」
ヒナはライトニングブレイブと戦っているムートを見る。
ムートは戦鬼のように戦っていた。そしてライトニングブレイブにとりつき、ハッチを開けた。
ハッチが開くと、そこには朝日を背に立ち目だけうす青く輝いているムートを見上げる盗賊の頭がいた。
頭は舌打ちし、腰のナイフを取り出そうと手をかける。
「動くな。シートを汚したくない。降りろ」
ムートは剣でひっかけ、頭を地面に放り出した。ムートを恐れた盗賊どもは、我先にと逃げ出していった。
ムートはライトニングブレイブから降り、魔法の筒へとライトニングブレイブを戻した。
「ムート」
「ヒナか」
「あなた、ライトニングブレイブに乗らない方が強いんじゃない?」
ムートは笑いながら「アマレにも言われたよ」と剣をしまう。
「ムートさん」
神父たちはもムートの前に出てくる。
「おお、無事だったか」
「はい、あー、言いにくいんですが。ヒナさんを預かるわけにいかなくなりました」
ムートは「はあ?」と、一瞬驚くが、すぐに理解した。
「教会の再建をしないといけませんし、人数も増えましたから」
蚊の鳴くような声でヒナはムートを呼ぶ。
「一緒に来るか?」
「ええ」
たんぽぽのような素朴な笑顔を浮かべる。
「ところで神父さんよ」
「はい」
「黒い鎧を着た魔剣士を見たことないか? オーラを発してる剣を持ってるんだが……」
神父は一瞬考える。
「ハラーソの町の北に森があるんですが、そこに住むエルフなら知ってるかもしれませんね」
神父はそこに「私は存じませんが」と、付け加える。
「北の森だな? とりあえずそこを目指そう」
「そうね」
そしてムートとヒナは、旅を続けることになったのだった。
「二人の旅に幸多きことを」
神父は祈りをあげたあと、子どもたちや捕まっていた人たちとともに盗賊のアジトを後にしたのだった。
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