funny
episode.0.3
僕にはカルトに伝えていない秘密が一つある。
最初に出会った時、ポケットには二枚紙が折りたたまれて入っていたのだ。
僕はカルトに気が付かれないようにしながらカルトが読んだ文章と似ている方だけを読み、もう一枚はそのままポケットに入れたままにしておいた。
カルトが車の中で寝ているのを確認し車の外へと出る。
ポケットから紙を取り出して読み始める。
『カルト、記憶、取り戻す時、容赦なく、殺せ』
紙にはそう書かれていた。
「カルトが記憶を取り戻した時……」
僕とカルトは一体……
思い出したくても何一つ思い出せない。
なのに、右掌が不思議と疼いている。
喰いたい、喰いたい、喰いたい
その言葉が呪いのように僕の頭に繰り返されている。
「僕は、人間なのか?」
「何だよ? 起きちまったの?」
カルトの声に僕はとっさに紙をポケットに入れる。
「腹減って何か食ってたんだろ? 俺も腹減って起きちまったよ」
「そんなところかな」
「そうだ! 寝てたときに夢でいい事思いついたんだが! 決め台詞つくらねぇか!」
「決め台詞?」
「そうそう! 俺達! デビルハンター! ってさかっこよくバーンッてな! 正義の味方ぽくていいだろ?」
「デビルハンター? なにかダサいな。死徒絶対許さん部隊の方が僕の好みだけど」
「いーや! デビルハンターだ!」
「どっちでもいいけどさ」
「よーし! 決定な!」
純真無垢なカルトの笑顔。
この人を僕はいつか殺さないといけなくなるのか。
「何だよクソ真面目な顔して?」
「君みたいに単純だと人生楽しいんだろうなって」
「当たり前だろ? 楽しくなきゃ生きてる意味ないだろうが?」
「君が羨ましいよ」
「マジか! 尊敬していいぞ!」
「尊敬はしてない」
「尊敬してないのかよ! 先に言えよ!」
今は、先の事を考えるのはよそう。
カルトと話している間だけは右掌からの声が聴こえなくなる。
「まぁ、君みたいに自信満々なのが隣りにいると安心感は……あるかもね」
「グー……グー……」
立ったまま寝てる……
「やっぱりただの馬鹿かもしれない……」
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